九州北部豪雨で得た経験踏まえ、重機運用合同研修会を開催 (2018/4/13 日本財団)
九州北部豪雨で得た経験踏まえて
大規模災害時の支援活動に備える
大規模災害時の支援活動に備えた「重機運用合同研修会」が3月15日~30日にかけ、九州北部豪雨で甚大な被害を受けた福岡県朝倉市の杷木寒水(そうず)地区で実施された。地震災害や大規模水害などの災害現場や復旧・復興期には重機を使った救援活動が欠かせない。今回の研修は日本財団と福岡市が2017年4月に取り交わした「防災・減災に関する連携協定」の一環で、九州北部豪雨の災害派遣から得た経験や反省を踏まえ、いざという時に被災地で重機の強みを有効に発揮できるよう操作・走行技術の向上を目指した。
九州北部地方では2017年7月5日から6日までの総降水量が多いところで500ミリを超え、24時間降水量の値が朝倉市や大分県日田市などで観測史上1位を更新するなど記録的な大雨となった。内閣府によると18年2月22日現在、福岡、大分両県で死者40人、行方不明者2人の人的被害のほか、多くの家屋の全半壊や床上浸水など極めて大きな被害をもたらした。
寒水地区の主婦塚本和枝さん(61)によると、自宅近くを流れる寒水川は5年ほど前にもあふれたことがあった。しかし今回はそれと比較にならないほどの勢いだった。このため危険を察知し、まだ何とか車が走れるうちに、家にいた娘さんと孫2人の4人で、かろうじて避難したという。同地区では今もって一人の行方が分かっていない。塚本さん一家を含め大半の住民は現在、みなし仮設住宅で暮らしているという。
九州北部豪雨の災害発生を受け、日本財団は直ちに杷木地区に拠点を設置。直後の7月8日から約4カ月にわたり被災地支援に当たった。その重機チーム「DRT JAPAN」の活動は、各方面から大きな評価を得た。日本財団重機チームと福岡市消防局重機隊が一緒に活動する現場もあった。
一方で互いの支援目的や支援内容の理解不足から多少の食い違いもあり、その反省も含めて今回、連携協定の共同事業として将来の大規模災害を見据えた官民合同の研修会を開催した。福岡、熊本両市の正規の消防重機隊に加え、地元の甘木朝倉消防本部、福岡県粕屋南部消防組合消防本部、熊本県山鹿市消防本部、佐賀県唐津市消防本部、大分県日田玖珠広域消防組合消防本部、鹿児島県霧島市消防局の各消防ボランティア重機隊員ら総勢40数人が参加。日本財団側が3トン未満クラスの小型重機4台を用意し、重機の扱いに詳しい三重、大分、熊本、長崎4県の民間ボランティアと日本財団が講師を務めた。
無残な姿となった被災家屋が周辺に残る研修現場では、重機を使った平地・不整地・斜面の走行、段差登り・段差降り、方向転換、履帯脱輪時の片輪移動、旋回動作に加え、土砂や岩、流木の除去など、基本となる訓練が次々に展開され、重機のメインテナンス、不測の事態への対応などの指導も併せて行われた。
東日本大震災の経験を踏まえ総務省消防庁は、消防機関が実施する検索救助活動をより迅速で効果的に実施するため全国の19消防本部に重機と重機搬送車を配備し、九州・沖縄ではこのうち福岡市、熊本市、薩摩川内市、那覇市の4消防本部が、配備された重機と重機搬送車を保有している。
研修会に参加した福岡市消防局消防重機隊の坂口智浩さんと谷山修平さんは「ここまでの訓練は自分たちだけではできない。いい勉強になった。今後チームで技術を磨いていこうと思う。自分たちのところに配置された重機は、たぶん重機の中では小さいクラスだが、目指すところは人命救助です」と力強く話した。
研修で重機の扱いを指導した講師の山紀建設(三重県志摩市)社長・山本俊太さんは「重機の運用にはこれが正解ということはない。引き出しの数をとにかく増やし、この現場にはこの引き出し、この現場にはこの引き出し、と、常に正解がどれか考えながら対応してほしい。技術を上げ、どんどん作業の幅を広げてくれれば、重機を有効に活用できると思う」と消防職員にエールを送った。
チームみふね(熊本)のメンバーで講師を務めた長崎県諫早市の今田拓郎さんは「重機はとにかくいろいろなことができるが、いろいろな事故も起きる。転倒もしやすい。危険性を十分認識して、自分がどこまでできるか、その力を踏まえた上で作業をしてほしい」とあらためて注意を促した。
日本財団災害支援チームの黒澤司は「災害現場では人の命を救うのが最優先、人の大切なものを捜すのが最優先だ。被災住民の心の負担を取り除くのも、われわれの活動目的だ」と述べ「仲間の命を守るために重機はものすごく有効で、早い」と訴えた。
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