チェルノブイリの教訓など共有「福島ダイアログ」7年で20回 (2018/2/16 日本財団)
チェルノブイリの教訓など共有
ICRP主導 貴重な経験・知識蓄積
国際放射線防護委員会(ICRP)が東日本大震災の被災地・福島で「ダイアログセミナー」をスタートして7年、20回目のダイアログが2月10、11の両日、南相馬市で開催された。この間、1986年のチェルノブイリ事故で被害を受けたノルウェーやベラルーシなどとも交流も進み、11日にはダイアログを主導してきたICRPのジャック・ロシャール副委員長に環境省、福島県から感謝状が贈られた。ダイアログにおける経験は今後の復興策、さらには万一新たな事故が起きた場合の貴重な教訓として引き継がれる。
ダイアログは東日本大震災が起きた2011年の11月、福島市でスタート、以後4年間に伊達市やいわき市などで計12回開催され、15年末からは日本財団も支援し今回、計20回目の節目を迎えた。南相馬での開催は14年5月の第8回に次いで2度目。NPO「福島のエートス」、福島県立医科大、広島大、ICRPで構成する「南相馬ダイアログ実行委員会」の主催で南相馬市、日本財団が後援した。
南相馬市は大震災で鹿島区や小高区が大津波に襲われ636人が死亡(その後507人が関連死)、約20キロ先の福島第一原発事故で行方不明者の捜索もできないまま避難を余儀なくされ、市内も警戒区域、緊急時避難準備区域などに4分された。震災時の人口は約7万1500人。一時、20%近くまで減少したが、昨年10月現在5万7,000人まで回復している。しかし2016年7月、ようやく避難指示が解除された小高区は現在も約2300人と震災時の18%にとどまっている。
ダイアログセミナー初日は小高区を中心に大震災前の写真なども参考にフィールド見学。被災状況や復旧工事の現況、原発事故に伴う除染廃棄物や災害廃棄物の仮置き場やソーラーパネルの設営地を見て回り、農業再開への取り組みなどを地元の人から聞いた。
2日目は「南相馬、小高のいま、未来を共有するための対話集会」と銘打って市内のホテルでダイアログを開催。ICRPのほか経済協力開発機構(OECD)・原子力機関(NEA)や地元の関係者ら約80人が参加し、「福島のエートス」の安東量子さんは「コミュニティを震災前に戻すのは難しい。しかし風景は戻したい。そうでなければ人は来ない」と語り、地元関係者からは「今までは目の前にあることをやっていればよかった。これからどうしたらいいか」、「除染作業が一段落し人がいなくなった」といった今後に対する不安や戸惑いも聞かれた。
たまたノルウェー放射線防護庁(NRPA)のアストリッド・リーランドさんは「チェルノブイリ事故による放射線量は福島より高いが、ガンなどの発生は見られない」と報告するとともに、除染廃棄物がうず高く積まれた仮置き場の今後について「放射能の問題はひとつ解決したと思うと新たな問題が出てくる」と最終的な解決の難しさを指摘した。
最後にロシャール副委員長は「ダイアログを始めた頃は住民も行政も何から手をつけたらいいのか分からない状態だった。今は必要な対策もとられまるで違う。しかし、この地を離れた人びとをどう引き戻すかなど新たな課題も生まれている」とするとともに、「将来、これまでとは違った形で皆さんと会えることを期待している」と述べ、今後のダイアログの在り方に含みを残した。
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