認知度アップで「里親になりたい」倍増へ―1万人調査 (2018/2/6 日本財団)
日本財団が1万人意識調査
「里親になりたい」倍増へ
児童福祉法の改正(2016年)で、子どもを家庭で育てることが原則になり、里親のリクルートが急務になっている。このため日本財団は里親に関する1万人意識調査を行い、1月30日、調査報告会を開いた。この中で、里親制度の認知度が高まれば里親になりたい人が倍増するとの調査結果が明らかにされた。
わが国では、生みの親と暮らすことができず、社会的養護を必要とする子どもの8割に当たる3万人以上が乳児院や児童養護施設で生活している。子どもたちが家庭で健やかに暮らせるよう、里親支援を実施している日本財団は、里親になりたい人を増やす手がかりを得る目的で今回の調査を実施した。
調査報告会は東京・赤坂の日本財団ビルで行われ、メディア関係者ら約20人が出席した。調査結果は、同財団の高橋恵理子チームリーダーが報告した。調査は昨年11月24日から28日まで、全国の20代から60代の男女1万人を対象にインターネットで実施した。この中から里親の条件に合致した30~60代の1,500人を選び、詳しい調査を行った。里親の条件は(1)2人以上の大人が同居している(婚姻状況は不問)(2)本人、家族とも生活保護を受けておらず、要介護者ではなく、犯罪歴もない(3)里親経験がない、の3つ。1,500人の内訳は里親の意向がある人が700人、ない人が800人。男女は半々ずつ。
調査結果によると、里親の認知度を聞いたところ、「名前を聞いたことがある程度」(4割)、「内容をある程度知っている」(3割)という状況で、「よく知っている」は1割程度だった。
続いて、里親への意向を聞くと、「意向がある」と答えた人は6.3%にとどまり、残りの9割以上の人が「思わない」「どちらともいえない」と答えた。
また、里親の「意向あり」と答えた人にその理由を聞くと、「家庭を必要とする子どもを助けたい」と答えた人が7割と圧倒的に多かった。性別・年代別では「女性30・40代」で「子育てをしたい」「実子がいない」が多く、「男女60代」では「実子の子育てが終わった」「時間・経済的に余裕がある」などが多かった。
さらに、里親制度について知っているかどうか聞いたところ、「養育費・里親手当を知っている」は1.9%、「結婚していなくても大人が2人以上住んでいればできる」は2.7%と、ほとんど知られていないことが分かった。
また、里親について何から知ったかを聞くと、テレビ番組が67.3%と圧倒的に多かった。さらに、里親の意向を持ったきっかけとしても、テレビ番組が6割弱あった。また、新聞は「男女60代」の高齢層に多かった。
一方、調査の中で、日本で里親を必要としている子どもがたくさんいることや、里親へのサポートの内容、子どもたちのイメージなどの情報をインプットした後、再び里親の意向があるかどうか尋ねた。その結果、「里親の意向あり」と答えた人は6.3%から12.1%へ5.8ポイントもアップした。
「意向あり」が増えたのは、「子育てで忙しく、時間やお金があまりない」という30~40代の女性に多かった。その場合、ハードルになっていたのは「実子の子育てが終わっておらず、実子との関係が気になっている」と、「預かった子どもが大きくなるまで自分が健康でいられるかわからない」という理由を挙げた人が多かった。
以上の調査結果から、潜在的な里親家庭候補は全国に約100万世帯あると推計している。今後、里親の意向がない人を「意向あり」にするには(1)日本における里親不足の現状(2)施設でなく、家庭環境で子どもが育つ重要性(3)実際の子どもの背景・プロフィール(4)里親になれる条件(5)経済的サポートの制度、などを伝えることが重要と結論付けている。
この調査結果について木ノ内博道・千葉県里親家庭支援センター理事長は「このデータから里親を増やせるという結果が出され、心強く感じた。行政はこれまで里親の開拓を余り熱心にやってこなかったが、本腰を入れれば効果が上がることが分かった。こうしたデータを元に行政は今後、里親候補に響くような施策を行って欲しい」と述べた。
●日本財団ハッピーゆりかご プロジェクト ウェブサイト
●日本財団ハッピーゆりかごプロジェクト~子どもたちにあたたかい家庭を~(日本財団公式ウェブサイト)
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