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[用語解説]ウグイス嬢、カラス

選挙カーの声、女性はウグイス嬢、男性は? (2016/7/7 政治山)

 選挙カーから聞こえる候補者の名前を連呼する声。その多くが女性の声です。そして、耳を澄まして聴いてみると、アナウンサーのように張りのある声や美しい滑舌で、「プロ」のように聞こえます。

 選挙事務所によっては、学生ボランティアや女性秘書がウグイス嬢を務めることもありますが、多くの事務所ではプロを雇い、日当を最大1万5000円支払います。運動員への報酬は公選法で禁じられていますが、車上等運動員や事務員、労務者に対しては一定の条件で支給を認めています。

声のプロ同士、車内では見えない火花も

 ウグイス嬢はアナウンサーやバスガイドの経験者が多く、ふだんは人材派遣会社や芸能事務所などに登録し報道機関や野球場、競技場、披露宴会場などでアナウンサーや司会者として、声を商売道具にしています。印象に残る発声も、鍛え上げた“職人芸”と言えます。

 しかし、プロとはいえ30分も大声を出していれば喉が枯れてきます。そこで選挙事務所では複数のウグイス嬢を雇うことが多く、選挙カーで乗り合わせると、プロ同士の見えない火花が飛び散ることも。

マイク

ウグイス嬢の男性版は「カラス」

 ウグイス嬢に対して、男性の車上運動員は「カラス」「カラスボーイ」などと呼ばれます。こちらは事務所スタッフや応援に駆け付けた弁士(議員や政治活動家)が、ウグイス嬢に代わって声を張ります。

 選挙カーに乗り込んだ運動員は、基本的には窓を開けて手を振り続けていなければなりません。夏は暑さと日焼け、冬は寒さとの闘いでもあり、選挙カーで1時間も周回していると想像以上に体力が失われます。

 小休止の際にはドラッグストアやコンビニエンスストアなどでトローチや飲み物、冷却グッズまたは健康グッズなどを買って各々体力の回復に努めますが、選挙戦も終盤になってくると、疲労が蓄積されてストレスも溜まっていきます。

アナウンス力以上に求められるチームワーク

 アナウンスの際に「いつも同じフレーズを使う」「イントネーションを間違えている」「歩行者が手を振っているのに気づかなかった」など細々と指摘されて、鬱のようになってしまい、辞めてしまう人もいます。

 プロ同士の対決の場と考えているウグイス嬢もいるようですが、譲り合いの精神がないと、2週間以上にわたる国政選挙での長い戦いを一致団結して乗り切るのは難しく、「声の良さ」以上にチームワークが重要な要素になります。

 また、候補者自らスタッフに三下り半を突き付けられることもあります。以前、選挙カーで女子大生に対してわいせつな行為に及んでいたとして有罪判決を受け辞職した知事もいました。

 手を振る笑顔の奥に、沈んだ表情のスタッフがいないかどうか。声には出せないドラマが、それぞれの選挙カーにはあります。

<著者> 上村 吉弘(うえむら よしひろ)
株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー 編集・ライター
1972年生まれ。読売新聞記者、国会議員公設秘書の経験を活かし、永田町の実態を伝えるとともに、政治への関心を高める活動を行っている。
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