ワークコーポとっとり―全国モデル目指し工賃5万円へ (2017/9/29 日本財団)
工賃、今年度末には月5万円に
倉吉、米子にも順次、拠点整備
鳥取県の「ワークコーポとっとり」(鳥取市商栄町)で付加価値の高いグッズの最終的な包装や組み立てなどを受注し障害者の工賃向上を目指すアッセンブリー事業が今春スタートして半年、当初、月2万円弱だった工賃も4万円近くまで増え、今年度末には5万円前後までアップする見通しとなった。事業は日本財団と鳥取県が共同で取り組む「みんなが活躍できる社会づくり」プロジェクトの一環。今後、鳥取県中部の倉吉市、西部の米子市にも同様の拠点を設け、働く障害者が活躍する全国的なモデルの確立を目指す。
ワークコーポとっとりは、福祉事業所が単独で受けるのが難しい大量注文を共同で受注する作業所として2015年に開設され、当時の工賃は1人月1万4000円程度だった。
今春、鳥取県と日本財団、県の委託でワークコーポとっとりの運営に当たるNPO法人「県障害者就労事業振興センター」が民間会社「kakeru」(本社・福岡市)の協力で、キャラクターやアーティストなどエンターテイメント系の製品の最終組み立て(アッセンブリー)など高単価の業務の受注を増やし、工賃アップを目指すことになった。
日本財団の支援で、施設の衛生面や品質管理面が強化されたことが高品質の業務の大量受注につながり、9月初旬、ワークコーポとっとりを訪ねると、白衣に身を固めたマスク姿の30人ほどがテーブルごとに分かれ、職員3人の指導や助言を受けながらクッキーの包装作業などに取り組んでいた。
鳥取県福祉保険部ささえあい福祉局障がい福祉課の森山孝之係長によると、設立当初、数カ所だった参加事業所は15事業所近くまで増え、多くて10人程度だった障害者の参加も現在は30人を突破、さらに30人ほどの受け入れが可能という。ワークコーポとっとりは、就職に必要な能力の向上を目指す「就労継続支援事業」のうち雇用契約を結ばないB型事業が対象で、雇用契約はなく支払いも最低賃金を下回るため工賃と呼ばれている。
プロジェクトでは2020年までに月当たりの工賃7万5000円の実現を目指すほか、鳥取県内にある約120の福祉事業所が参加できるよう今後、中・西部地域にもワークコーポ型の拠点を整備する計画。B型事業で働く人は障害の程度が重く生活保護に頼る人も多いが、2020年の工賃目標が達成されれば月6~7万円の障害基礎年金を合わせ生活保護から脱却する道も開かれ、全国の目標にもなる。
ワークコーポとっとりのように、複数の福祉事業所の利用者が集まって部品の組み立てや梱包などを大規模に行う施設は全国に例がなく、その意味でも今回のプロジェクトの今後の発展が注目されている。
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