渋谷区と東大先端研、「異才発掘プロジェクト」初の自治体連携  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップ >  ソーシャルイノベーション >  渋谷区と東大先端研、「異才発掘プロジェクト」初の自治体連携

渋谷区と東大先端研、「異才発掘プロジェクト」初の自治体連携 (2017/9/14 日本財団)

特別な才能に着目した新教育システム構築へ
渋谷区と東大先端研、周知イベント開催

特別な才能に着目した新たな教育システムの構築に、東京都渋谷区と東京大学先端科学技術研究センター(東大先端研)が連携して取り組む。両者が9月1日、渋谷区内で記者会見して詳細を明らかにした。日本財団と東大先端研は2014年12月から「異才発掘プロジェクト ROCKET」を展開しており、地方自治体との連携は今回が初めて。会見の後、事業の開始をアピールするイベントが同じ会場で開かれ、約120人が来場した。

イベント全景

イベント全景

渋谷区教育委員会によると、新教育プログラムの対象となるのは(1)特別支援教室拠点校の巡回指導教員による指導を受ける児童(2)情緒障害等通級指導学級に在籍する生徒(3)長期欠席児童・生徒-のいずれかを満たした渋谷区の小学3年から中学3年のうち、本人と保護者が参加を希望し、教育プログラム実施日に保護者などの送迎が可能な児童・生徒。教育プログラムは区内の小中学校や東大先端研で9月以降8回実施する予定。

長谷部健・渋谷区長(左)と中邑賢龍・東大先端研教授の対談の様子

長谷部健・渋谷区長(左)と中邑賢龍・東大先端研教授の対談の様子

渋谷ヒカリエで行われた公開イベントはトークセッションとセミナーの2部構成で催された。最初に長谷部健・渋谷区長とROCKETディレクターの中邑賢龍・東大先端研教授が「ユニークな子どもに対する多様な学び方の価値をデザインする-渋谷区と東大先端研が描く未来の教育-」と題して対談。

長谷部区長は、20年前にできた渋谷区基本構想を昨年作り直した、と映像を交えて紹介し、区内人口の変動、情報技術の発達、2020年オリンピック・パラリンピックの到来など、時代に即していない部分が相当出てきたことを策定の理由に挙げた。基本構想の中で渋谷区が今後目指す未来像として打ち出した声明「ちがいを 力に 変える街。渋谷区」について長谷部区長は「ダイバーシティーとかインクルージョンとか、多分に多様性ということを意識したものになっている。性別、年齢、出身地、趣味、嗜好、いろいろなものが人それぞれ違う。そこを理解した上で、推進していこうと考えている」と述べ、こうした価値観が連携事業の背景になっていることを説明した。

記者会見の様子。立ち上がって説明するのは、渋谷区教育委員会の鴨志田暁弘・教育振興部長

記者会見の様子。立ち上がって説明するのは、渋谷区教育委員会の鴨志田暁弘・教育振興部長

これに先立つ記者会見で、渋谷区教育委員会の鴨志田暁弘・教育振興部長は、渋谷区基本構想を教育関係に具現化した渋谷区教育大綱は、子どもたちが人種や性別、年齢、障害の有無に関わらず、自己が実現できる教育、子どもたちの持てる力や個性を花開かせる教育、をうたっていると紹介し、今回の新規事業について「渋谷区だけでは蓄積がないので、従来からROCKETの事業を展開している東大先端研の知見を得て、渋谷区の子どもたちに多様な教育機会を与え、特異な才能を持った子どもたちの能力を伸ばす教育ができるよう、適切な教育プログラムをつくっていきたいと」話した。

今回の連携プログラムを紹介するスクリーン画面

今回の連携プログラムを紹介するスクリーン画面

続いて中邑教授が、異才を発掘し、継続的なサポートを提供することで、将来をリードする人材の養成を目指しているROCKETプロジェクトの狙いや具体的な活動について来場者に情報を提供した。中邑教授は「今の公教育になじまない、飛び抜けた子どもたちを集めて教育をしていこうと始めて、いろいろなノウハウを蓄積してきた。それを地域に返していきたいと一緒に事業ができるところを探していたところ、身近なところに渋谷区さんがいた。『ちがいを 力に 変える街。渋谷区』。このスローガンは本当に素晴らしい。違いを力に変えていかなければいけない、というところが、われわれの考えともぴったり一致し、一緒に新しい教育を考えてみようということに至った」と経緯を紹介した。

中邑教授はさらに「気付いたのは、高知能の子どもの中に字が書けない子が、かなり高頻度で存在すること。非常に大きな課題だと思っている。いわゆる学習はできるが学習の手段でつまずいている。その支援も渋谷区と併せて行っていけるのではないか、と思っている。幸いにも渋谷区はICT機器(タブレット端末)を区立小中学生全員に配布されたと聞く。そうしたICT機器の活用の中にも、ROCKETプロジェクトがうまく組み込まれ、相乗効果を生んでいくのではないかと期待している」と述べた。

ROCKETプロジェクトを紹介する福本理恵・東大先端研特任研究員(右)と中邑教授

ROCKETプロジェクトを紹介する福本理恵・東大先端研特任研究員(右)と中邑教授

公開イベントの後半には、福本理恵・東大先端研特任研究員がROCKETプロジェクトの取り組み内容を、平林ルミ・同特任助教は「学びを保障するテクノロジーの活用について」と題してその経験を、それぞれ中邑教授と一緒に披露した。

●異才発掘プロジェクト ROCKET(日本財団公式ウェブサイト)

Sponsored by 日本財団

関連記事
特別対談-前編-不登校の特権を生かして、自由に学ぶ
特別対談-後編-渋谷区版も開始へ、学校以外にも選べる道を
行政の責任として、すべての子どもに家庭的環境を―泉房穂 明石市長に聞く
お母さんの心が壊れる前に―インタビュー特集
ソーシャルイノベーション関連記事一覧
日本財団ロゴ
日本財団は、1962年の設立以来、福祉、教育、国際貢献、海洋・船舶等の分野で、人々のよりよい暮らしを支える活動を推進してきました。
市民、企業、NPO、政府、国際機関、世界中のあらゆるネットワークに働きかけ、社会を変えるソーシャルイノベーションの輪をひろげ、「みんなが、みんなを支える社会」をつくることを日本財団は目指し、活動しています。