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食物アレルギー、約6割が誤食により発症した経験あり (2016/11/8 日本財団)

食物アレルギー事例検討会 アンケート結果から判明

食物アレルギーにより、特定の食べ物が食べられない子どもたちの数が近年、増加傾向にあります。このため日本財団とNPO法人アトピッ子地球ネットワークは10月29日、東京・赤坂の同財団ビルで、アレルギーに特化した事例検討会を開きました。全国から患者団体や研究者、医療関係者ら約50人が参加、最新の事例を共有するとともに、対応策を討議しました。この中で、誤食経験についてのアンケート結果が発表されました。

食物アレルギーをめぐる最新事例の発表に聞き入る参加者

食物アレルギーをめぐる最新事例の発表に聞き入る参加者

文部科学省が2013年に実施した全国調査によると、45万人以上の子どもたちに食物アレルギーがあることが分かりました。この数は2004年の調査結果と比べ、約1.7倍になっています。一方、アレルギーを巡る医療や行政・学校の対応が地域によって異なるとの指摘も出ています。そこで、患者団体だけでなく、木村彰宏・神戸医療生協病院いたやどクリニック院長、伊藤節子・同志社女子大食物栄養科教授ら専門家を招いて課題解決の道筋を探ることになりました。

あいさつする赤城智美アトピッ子地球の子ネットワーク事務局長

あいさつする赤城智美アトピッ子地球の子ネットワーク事務局長

この日は11の事例報告が行われましたが、注目を集めたのはアトピッ子地球の子ネットワークが日本財団と協力して行った食物アレルギーの誤食経験に関するアンケート結果の発表でした。自分自身に食物アレルギーがある人と、子どもや親族に食物アレルギーのある人を対象に8月下旬にアンケートを実施したところ、318人から回答を得ました。このうち、アレルギー患者は281人で、回答者本人は約24%、子どもは約72%です。誤食の経験があるかどうかの質問に「誤食し発症したことがある」と答えた人は56.7%、「誤食したが、発症はしなかった」が10.1%、「経験がない」は20.5%でした。

誤食経験についてのアンケート結果

誤食経験についてのアンケート結果(クリックで拡大)

さらに、誤食の理由について聞いたところ、食品の容器が包装されている場合、一番多かったのは「勘違い」で40.7%、2番目は「表示なし」20.4%、3番目は「表示見落とし」16.7%でした。また、外食、給食などの場合は、「混入」が一番多く31.8%、2番目は「店員の確認ミス」25%、「本人の確認不足」13.6%、「配膳ミス」6.8%などの順でした。この調査結果についてアトピッ子地球の子ネットワークでは、「買い物をするたびに表示を確認することの大切さを改めて確認した。また、卵、乳成分がアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)となっている人は「和のものなら大丈夫」という体験があり、それが思い込みにつながっている可能性がある」と分析しています。

誤食の理由についてのアンケート結果

誤食の理由についてのアンケート結果(クリックで拡大)

このほか、NPO法人千葉アレルギーネットワークの桐谷利恵・副理事長は、千葉県医師会が行った乳幼児保育施設調査を基に(1)約9割の施設で食物アレルギーの子どもが在籍(2)4分の1の施設で食物アレルギーの症状が起きた、あるいは起きそうだった(3)緊急対応の研修を行った施設は5割に満たない、などと説明しました。これについて木村クリニック院長は「民間の幼稚園では食物アレルギーの子どもは入園を拒否されているという。重症児にはできれば来てほしくないというところがある」と語り、施設によって対応の違いがあると指摘しました。

コメントする木村クリニック院長

コメントする木村クリニック院長

また、NPO法人アレルギーっこパパの会の今村晋太郎さんは、小学校入学直後の娘(6つ)の給食での誤食事故について報告しました。その娘は卵がアレルゲンで、給食では除去することになっていましたが、誤って給食に出されてしまいました。幸い、発症はしなかったものの、翌日学校の先生から「学校側の連携ミスだった」と、謝罪の連絡が入りました。学校側は父兄との面談を申し入れてきましたが、今村さんは「その必要はない」と断りました。だが、今村さんはそれでよかったかどうか悩んだといいます。

事故の事例などを報告する患者団体代表

事故の事例などを報告する患者団体代表

日本財団とアトピッ子地球の子ネットワークの代表は30日、食物アレルギーの危機管理と「生活の質向上」のために患者支援プロジェクトを共同で実施することで合意しました。その柱は(1)誤食などの事故防止(2)学習する機会を提供するなどして知識を向上(3)事故の事例やアンケート結果を共有し、患者実態の社会化(4)アジアや世界の人たちと知識を共有し、国際的な連携を図る(5)緊急時のためにエピペン(アドレナリン事故注射薬)を普及(6)サマーキャンプなどを支援するボランティア養成、の6つ。森祐次・日本財団常務理事は「食物アレルギー問題は広域化、深刻化しており、社会運動として支援していきたい。今回まとまった支援プロジェクトを少なくても5年かけてやっていきたい」と述べました。財団は、1本につき10円の社会貢献ができる自動販売機「夢の貯金箱」の寄付金2億円のうち、今年度は5千万円をこのプロジェクトに投入する方針です。

ことば解説【食物アレルギー】
原因となる食物を摂取した後に起こる、生体にとって不利益な症状を指す。じんましんなどの皮膚症状が最も多いが、重症の場合は命に係わることもある。アレルギーの主要な原因として、乳幼児から幼児期にかけては鶏卵と牛乳が半数以上を占めるとされている。青年期になるにつれ甲殻類が原因の場合が増え、牛乳が減る。成人期以降では甲殻類、小麦、果物、魚介類などが原因となるとされる。食品衛生法では、「特定原材料」として指定された品目については表示が義務付けられ、その他の一定の品目について「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。

● NPO法人アトピッ子地球ネットワーク ウェブサイト
● 夢の貯金箱 ウェブサイト

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