「これも学習マンガだ!」-楽しさや分かりやすさを学びのきっかけに (2016/11/1 日本財団)
新たに50作品を発表
里中満智子さんら出席
日本のマンガの持つ「楽しさ」や「分かりやすさ」に着目し、学びのきっかけになる学習マンガの選定を推進している日本財団は10月25日、東京都千代田区外神田の「アーツ千代田3331」で新たな50作品を選定・発表しました。マンガ家の里中満智子さんら有識者10人で構成する選書委員会が選定したもので、昨年発表した100作品に加え、合計150作品となりました。この日は里中選書委員長らが出席し、トークショーやディスカッションが行われました。
最初に山内康裕・マンガナイト代表(選書委員)が「これも学習マンガだ!」の選定をはじめたきっかけや、昨年10月に100作品を選んだ経緯などを説明しました。山内さんは「エンタテイメントマンガの中にも学習マンガがある」と述べ、教育と娯楽を結びつけた「エデュケイメント」を推進する考えを示しました。また、日本財団職員の栗田萌希は昨年発表した学習マンガ第1弾が公式サイトで40万ビュー(2週間)を記録するなど、大きな反響があったことから第2弾の選定をしたと述べました。
続いて里中選書委員長があいさつし、「作品選定は楽しいと思われているが、今回も50作品に絞るのが大変だった。今流行している作品だけでなく、流行に押されて消えていった作品の中にも、日本人の心を育てた良い作品がたくさんある。マンガは読者がいないと死んでしまうので、ご協力をお願いします」と呼びかけました。さらに、記者から選定の苦労を聞かれ「最初、1人1作品に限定しようと思ったができなかった。作者の代表作が入っていないとの声もあるが、作品のジャンルなどを考慮して選びました」と説明していました。この後、今回選定された50作品が発表されました。選定した選書委員は、里中委員長を筆頭に、菊池健マンナビ編集長、佐渡島庸平コルク代表取締役社長、中村伊知哉・慶応大大学院教授、藤本由香里・明治大国際日本学部教授ら10人。50作品をジャンル別にみると、芸術では一色まことの「ピアノの森」など7作品、職業では美内すずえの「ガラスの仮面」など7作品、生活では矢口高雄の「釣りキチ三平」など5作品、科学・学習では藤子・F・不二雄の「モジャ公」など5作品などとなっています。
いったん休憩後、第2部に移り、まず里中委員長が「私とマンガと学び」と題してトークショーを行いました。里中さんは団塊の世代で、そのころマンガを読んでいると大人たちから「マンガなんか読んでいないで本を読みなさい」とよく言われたという。ところが、大人たちが推奨する本の中には「えっ」と思うようなものもあった。それより手塚治虫のマンガを読んで相手を理解しようという気持ちが芽生えたと述べ、「マンガに育ててもらった」と“マンガの力”を強調していました。
引き続き、「これが俺の学習マンガだ!」と題するトークディスカッションが行われました。山内マンガナイト代表を進行役に、編集者・ジャーナリストの江口晋太朗さん、工藤啓・育て上げネット理事長、吉田倫子・日本図書館協会認定司書が参加、好きなマンガを3作品ずつ取り上げ、その理由を説明しました。
その後、「どうすればもっと学べるマンガを手に取りやすい状況を作れるか」を巡って討論しました。吉田さんは司書の経験から「図書館にはマンガは悪書という文化、土壌がある。マンガを置いてある図書館は少ない上、一般の本と違う棚に置いてあるところが多い。一般の本と混在する棚ができれば変わってくる」と述べました。江口さんもこの意見に賛成し、「マンガも一般の本と一緒に勧めてくれる大人が増えてほしい。この選書キャンペーンがそのきっかけになればいい」と語りました。質疑の中でも、「本屋ではマンガはジャンル別に分かれていない上、ビニール掛けしてあり、マンガを読む障害になっている」との指摘がありました。
日本財団では、自分にとって学びとなったマンガ作品をランキングにして投稿してもらい、「みんなの学習マンガ総合ランキング」をつくるウェブ企画を10月25日から始めました。来年1月12日まで実施し、12月中旬にランキングの中間発表、来年1月下旬に最終発表します。また、希望者には学習マンガの公式ハンドブック、チラシ、ポスターを無料で送付します。ご希望の方はgakushumanga@ps.nipponfoundation.or.jpまで。
●これも学習マンガだ! ウェブサイト
●これが俺の学習マンガだ! ウェブサイト
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