浅草で伝統芸能アピール、人形浄瑠璃文楽で初めての「お練り」 (2016/10/28 日本財団)
浅草で古典芸能魅力アピール
にっぽんプロジェクト3度目公演
日本を代表する古典芸能の一つ「文楽」の世界で初めての「お練り」が10月14日、東京都内屈指の観光地・浅草で行われました。伝統の魅力をアピールする「にっぽん文楽プロジェクト」(日本財団主催)の3度目の公演が、浅草寺境内の野外特設会場で開催されるのに先立つ催しです。公演の出演者らが優美な文楽人形とともに浅草寺参道を練り歩き、大勢の観光客の注目を集めました。
人形浄瑠璃文楽は太夫・三味線・人形が一体となった総合芸術です。日本財団は2014年、文楽の普及を目指すプロジェクトを発足させ、屋外の開放的な空間で、飲みながら、食べながら、間近で文楽を見る、とのコンセプトのもと、第1回公演を15年3月、東京・六本木の六本木ヒルズで、第2回公演を同年10月、大阪・難波宮跡公園で、それぞれ開催しました。今回はその第3弾です。題して「にっぽん文楽 in 浅草観音」。
「お練り」は歌舞伎の世界ではよく知られていますが、文楽では本場・大阪でも例がなく初めての試みでした。隊列は「にっぽん文楽」と大きく染め抜かれた横断幕を先頭に、のぼり、江戸木やり、浅草寺僧侶の後に、人形遣いの吉田和生、吉田玉男、吉田玉翔、吉田玉路、吉田和馬、吉田玉延の皆さんが華やかな文楽人形を操りながら続き、太夫の豊竹睦太夫さん、三味線の豊澤富助さん、そしてプロジェクトを主催する笹川陽平・日本財団会長、中村雅之・プロジェクト総合プロデューサー(横浜能楽堂館長)、さらに浅草観光連盟と仲見世商店街の各役員の順で、雷門から仲見世商店街の間を通り、浅草寺本堂まで、たくさんの外国人もカメラを構える国際色豊かなにぎわいの中を、ゆっくり練り歩きました。
浅草寺本堂前の階段に到着したところで笹川会長が主催者を代表してあいさつし「世界には数多くの人形劇がありますが、3人で1体を演じるこれほど精密で、長い修練をしないとできない人形劇は世界にはありません。日本の宝です。しかし残念ながら私たち日本人はこの日本の宝をよく知りません。どうかこれからも直接劇場に足を運んで、日本文楽をぜひ応援をしてください」と訴えました。
続いて技芸員を代表して吉田和生さんが「まさか文楽でお練りをさせていただくとは思っていませんでした。非常に感動しております。この公演は第1部が『五条橋』、皆さまおなじみの牛若丸と弁慶のお話です。第2部は『壺坂観音霊験記 山の段』、お里・沢市の夫婦愛の物語で、壺坂観音さまのおかげでハッピーエンドに終わるお芝居です。その奈良の観音さまと浅草の観音さまのご利益をいただいて、本公演が成功裏に終わりますよう、われわれ一同も一生懸命頑張っていきますので、皆さんよろしくお願いします」とあいさつしました。
また中村総合プロデューサーは「文楽が生まれ育った大阪・道頓堀と並び、ここ浅草はまさに日本の興業の聖地です。そしてもう一つ、明治、大正、昭和と活躍した太夫、豊竹山城少掾(とよたけ やましろのしょうじょう、1878年~1967年)の生まれた浅草です。皆さん、文楽というと上方というイメージがありますが( 浅草に)ゆかりもあります。この地で文楽が開催できるのは非常に喜ばしいことです。野外の開放的な空間で、飲んだり食べたりしながら、気楽に見てください。文楽はもともと庶民の芸能です。まさに庶民の娯楽の地である浅草で、もう一度、その感覚を味わってください」と呼び掛けました。
この後、本堂で公演の成功祈願法要が営まれました。浅草寺本堂裏に特設された舞台は移動自由の組み立て式です。奈良・吉野から切り出されたヒノキをふんだんに使った本格的なもので、金の飾り金具が豪華さを演出。木綿のまん幕には伝統的な染めの技術で「にっぽん文楽」の紋が染め抜かれ、舞台屋根のはるか後方にはスカイツリーの上部がくっきり姿を見せていました。
幕が開けた15日昼の部には満席となる約350人が会場に詰め掛けました。秋晴れに恵まれ強い日差しのなか、多くの人がタオルや手拭い、ハンカチで頭や顔を覆いながら、弁慶と牛若丸の出会い、沢市とお里夫婦の愛情物語、この演目2題の人形の動きや太夫の情感に満ちた語り、そして屋外に響く太棹三味線の音色を、たっぷり堪能していました。幕間には技芸員から、太夫と三味線弾きの役割、屋外の公演なので例外的にマイクを使っている、ことなどの解説があり、併せて文楽人形との写真撮影会も行われ、長い列ができていました。
※講演は18日までの4日間、昼夜計8回行う予定でしたが、17日は雨天のため昼夜とも中止となりました。
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