ソーシャル・イノベーションの創出環境―日本は45カ国中23位、1位は米国 (2016/10/18 日本財団)
ソーシャル・イノベーションの創出環境
エコノミストIUと日本財団調査
社会課題の新しい解決策として注目される「ソーシャル・イノベーション」の創出環境を世界45カ国で比較した結果、1位は米国、日本は23位―。英国・「エコノミスト」の調査部門であるエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が日本財団の協賛でまとめた調査でこんな結果が出ました。報告書は日本について「国民の所得水準を考えれば結果は予想を下回る」とした上で、「リスクを避ける社会的風潮が起業活動の足かせになっている」などと指摘しています。
調査の表題は「既存の枠組みを超えた新たなソリューションの模索」。OECD(経済協力開発機構)加盟の34カ国やG20の20カ国、アフリカの途上国を中心に45カ国を選び、EIUが作成した(1)政策的・制度的フレームワーク(2)資金調達環境(3)起業活動(4)社会(ボランティア文化や報道の自由など)の4項目について、各国の公開データやソーシャル・イノベーター、専門家らの協力を得て評価。その上で各項目が全体に占める割合を44~15%に配分して100点満点に換算、その合計点で総合評価を行っています。
今年5、6月にEIUが基本データを収集、9月28日から3日間、日本財団が開催した「ソーシャルイノベーションフォーラム2016」の分科会で結果が発表されました。
総合ランキングでは79点を獲得した米国がトップ、2位英国、3位カナダ。6位のニュージーランドを除き上位10カ国のうち9カ国を欧米諸国が占めています。いずれも国民一人当たりの所得水準や安定した民主主義体制が高い評価につながっており、特に米国はイノベーション環境を下支えする活発な起業活動と透明性が高い法制度、英国はソーシャル・イノベーションに向けた制度的フレームワークと政策的支援の存在が高得点につながっています。
東アジアの3カ国は韓国が12位、日本が23位、中国が40位。韓国は政府が社会的企業の促進に向けた国家戦略を打ち出している点が評価され、日本に関してはソーシャル・インパクト・ボンドや休眠口座の活用について多少の議論が見られるものの、取り組みのほとんどが民間資金でまかなわれている現状や労働市場の流動性の低さ、企業や研究機関の縦割り構造がマイナス評価につながっているようです。
各評価項目の内訳を見ても、政治的・制度的フレームワークが45カ国中21位の49点、資金調達環境が16位の54点、起業活動が43位の44点、社会が38位の40点といずれも低い数字になっています。日本に対する評価結果
中国に関してはボランティア活動や市民の政治参加率、報道の自由など市民社会の成熟度を占うカテゴリーの得点が低いほか、「中国政府が国際NGOに対する不信感をあらわにしていることも市民社会の成熟を阻む一要因となっている」と指摘されています。このほか国民一人当たりの所得水準が4000米ドル未満の低所得国の中では、ポータルサイトを通じてアフリカで初めて教育や医療、衛生など社会的問題に関する政府情報を公開したケニア、資金調達環境や市民社会の成熟度が高く評価されたインドが、それぞれ総合ランキングで27位、34位につけています。
調査は最後に「ソーシャル・イノベーションは既に多くの新興国・先進国で前向きな変化を実現する手段として活用されており、活動に参加する企業家や投資家は今後も確実に増える」と指摘しています。
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