ローマ教皇庁と日本財団がシンポジウム共催 (2016/6/6 日本財団)
ハンセン病差別撤廃に向け6月バチカンで
宗教を超えた国際会議に
ハンセン病患者・回復者の尊厳の尊重などをテーマにした国際シンポジウムが6月9、10両日、バチカン市国ローマ教皇庁で開催されることになりました。教皇庁の保健省に当たる保健従事者評議会と日本財団の共催で、教皇庁がハンセン病問題で日本の民間団体とシンポジウムを開くのは初めて。各国の回復者代表のほか、カソリック以外の宗教関係者の参加も予定されており、宗教を超えた国際会議となる見通しです。
ローマ教皇庁では毎年1月最終日曜日の「世界ハンセン病の日」に、患者・回復者に向けた励ましのメッセージを出しているほか、2009年には、日本財団の呼び掛けで世界に差別の撤廃を訴えるグローバル・アピールに、当時の教皇ベネディクト16世が賛同署名されています。
ところが2013年に就任した現教皇フランシスコ1世が、聖職者の過度の出世主義を批判する中で、「出世主義はハンセン病」と表現、WHO(世界保健機関)のハンセン病制圧大使を務める笹川陽平日本財団会長が「誤解を助長する」と“遺憾の意”を伝え、その後、書簡を送って国際会議の共催を提案。教皇庁がこれを受け入れる形でシンポジウムの開催が決まりました。
これによると、シンポジウムのテーマは「ハンセン患者・回復者の尊厳の尊重と総合的なケア」。ハンセン病の減少、患者とその家族への支援、回復者の社会復帰をテーマに2日間にわたって教皇庁会議場で行われ、約10カ国の回復者代表のほか、ユダヤ、イスラム、ヒンドゥー、仏教などの宗教関係者ら約200人が参加、ハンセン病に対する偏見・差別の撤廃を求めるメッセージを世界に向けて発表する予定です。
また、「国立ハンセン病資料館」(東京都東村山市)と「重監房資料館」(群馬県・草津町)の管理運営を日本財団が厚生労働省から受託することになりました。ハンセン病資料館は1993年、ハンセン病患者・回復者が「高松宮記念ハンセン病資料館」として設立、2005年から2年間かけリニューアル工事が行われ、2007年に国立ハンセン病資料館として再開館しました。
「重監房」はハンセン病患者を対象にした懲罰用の建物で、1938年、草津町の国立療養所栗生楽泉園の敷地内に建てられ、1947年までに93人のハンセン病患者を“収監”、23人が亡くなったとされています。2014年、資料館として開館し、ともにハンセン病に対する正しい知識の普及と患者・回復者の名誉回復を目指しています。
現在、入場者はハンセン病資料館が年間約3万人、重監房資料館が8千人。4月1日から管理運営を行う日本財団では歴史的資料の記録・保存のほか、入館者の増加にも取り組みたい、としています。
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