人手不足社会到来へのひとつのアプローチ (2019/2/4 クオリティ埼玉)
世の中、人手不足といわれ始めて久しい。まだまだ消費者の節約志向が強い中、特に物流業界の人件費上昇、宅配費用の値上げ等はこの人手不足に起因している要素が多かろう。こうした社会環境の中、オフィスビル・商業施設等を手掛けている大手不動産会社の三菱地所より以下のニュースリリースが発表された。
三菱地所/物流施設・オフィスビル等にAI清掃ロボット「Whiz」を日本初導入
三菱地所は1月11日、ソフトバンクロボティクスが人型ロボット「Pepperペッパー」に続いて開発したAI搭載のバキューム清掃ロボット「Whiz」(ウィズ)を、日本で初めて導入すると発表した。4月より、グループが所有又は運営管理する全国の物流施設・オフィスビル・商業施設・空港・ホテル・マンション等に約100台を順次展開し、人手不足に対応した新しい管理スタイルの追求を行っていくとしている。導入に先立ち、本社の所在する大手町パークビルにおいて、1月17日~23日の1週間、「Whiz」による清掃の実証実験を行い、利用場所の形状や床材の違いによる清掃性能や清掃効率の差異等を確認し、省人化の効果や導入に向けた最適な利用箇所等の検証を行う。
三菱地所では、これまで様々なロボットの実証実験を通して、実導入に向けた課題を認識してきた。「Whiz」は、清掃効率・自律走行機能・費用面等を含め、同社が認識していた課題解決にも寄与すると考えられる他、従来専ら人手に頼っていた床面の清掃作業の主要部分をロボットに任せることで、人手不足に直面しているビルメンテナンス業界の働き方改革に繋がる可能性も期待できることから、今回本導入に至ったもの。
■製品概要
製品名:Whiz(ウィズ)
本体サイズ:幅約474mm×全長約455mm×全高約653mm
重量:約32kg(バッテリーを含む)
清掃能力:約500平方メートル/時間
連続稼働時間:約3時間(ノーマルモード)、約2時間(パワーモード)
走行速度:最高2.5km/h
充電時間:約5時間
◇
三菱地所は大手町・丸の内に多数の商業ビルを抱えており、その企業での導入の意味は少なからぬものがある。特にビルメンテナンスの大型床面の清掃分野については効率・コスト面について比較優位であろうと思われる。2016年よりアメリカにおいては既に大手スーパーや空港などでの導入実績がある。現時点において能力的に、人が行っている掃除等の業務をそのままロボットが行うことは無理であり、その能力に合わせて業務の平準化を図る事が前提となるようだ。
金融分野でのキャッシュレス化の波、自動車の自動運転やドローンでの宅配等々怒涛のように押し寄せる社会構造変革の流れは加速の一途を辿る。一方、技術革新の派手な側面だけでなく、中長期に渡る雇用環境等に与える様々な影響も含めて社会的コンセンサス、理解も併せて丁寧に深めていく必要があると考える。
小松 隆
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