【大村市長 園田裕史 #5】収益を市民に還元 競艇場売上全国トップクラスを目指す (2018/10/25 HOLG.jp)
競艇の収益を市政運営に反映させる
加藤:過去のインタビューを拝見すると、もう少し競艇の収益が伸ばせそうだと拝見しました。そもそも、大村市としては競艇をどのような位置づけに置いているのでしょうか。
園田市長:公営競技という公的に認められた遊技場ですが、市の最大の目的は競艇で稼いだものを市の予算に繰り入れその財源を活用して、教育や福祉、各種インフラ整備など、市民に還元する。行政サービスの更なる向上を進めることが最大の使命です。
これまで競艇事業から一般会計への繰入金のあり方や使途を明確にすることができていませんでした。そこで、年内に新たな基金を創設する予定です。特に、将来ビジョンに関わる建設や新幹線などのインフラ整備を中心としたハード事業や、子育て支援を中心としたハード整備に関して使っていきます。その財源が競艇事業からの繰入であることを市民に徹底的にアピールすること。そのことで競艇事業への理解を更に広げたいと思います。
加藤:競艇があることによって生じるプラスとマイナスには、どのようなものが存在しますか?
園田市長:プラスは稼げることです。税収を上げるには人口増、地域経済の活性化、企業誘致、固定資産税というのが主軸ですが、ありがたいことに大村には稼ぐ方法が別にもう1個ある。
デメリットは俗にいうギャンブル場というイメージだったり、治安の問題、もっと言うとギャンブルから派生する依存症、または生活保護という負のスパイラルです。正直、競艇によって1件もそれが起きていないとは断言できません。ただそうなる人のパーセンテージは低いと考えていますし、対策も講じています。
実は大村の場合、全体の売上のうち、市民の方で購入されている割合は4%です。つまり96%は大村市外から外貨を稼いでいます。市民をはじめお客様に対する依存症対策等は、競艇場をはじめ役所のセーフティーネット、福祉部門などがしっかりフォローしていかないといけないと思っています。私自身がかつて精神科の病院にいて、依存症や精神病に関わってきましたので、そこはおろそかにしません。
ただ、「あの人は競艇場に毎日いて、生活保護のお金を使って問題だよね」といった話は聞こえてこないです。そのくらい競艇場に対するイメージは変わって来ているんです。施設の建て替えを行い、カフェやイベントホールもある。各種イベントでは、子供たちや若い人が来やすいようなものに大転換を図りました。
将来、競艇選手になりたいという夢があってもいい
園田市長:子供たちが競艇場にいていかがなものかと言われることもありますけど、例えば、自分の子供がJリーグの選手になりたいと言っても普通は反対しないですよね。サッカーだってTOTOくじがある。であれば、将来、子どもが競艇選手になる夢を持ってもいいじゃないですか。レジャースポーツ、マリンスポーツなどの様々な切り口で他のスポーツとも連携し、競艇に対するイメージを払拭していきたいです。
いま、ボートレース大村の中では、障害者が働く施設として若年層をターゲットにしたオシャレなレストランが運営されています。障害者就労支援施設として障害者が一生懸命に働き、仕事の喜びを感じて、あたりまえの報酬を得る、競艇場に来る若い人に障害者のことを理解してもらえる。そういった社会貢献事業も展開しています。
現在、競馬やオートレース、競輪等、様々な公営競技がある中で競艇については、非常に好調な発展を続けています。業界全体で1兆2000億円以上の売上があり、それらは、全国の各自治体における行政サービス向上につながる大きな力です。我々、全国の競艇事業施行者は、運命共同体という意識をもって、業界全体の発展に一丸となって取り組んでいくことが必要だと感じています。
全国トップクラスの売上を目指す
加藤:平成29年度には約570億の競艇事業の売上があります。もっと売上を伸ばせるポイントはありますか?
園田市長:競艇場は全国に24ヶ所ありますが、大村は売上で現状第7位なんです。上位6位との違いは、大村はナイターレースを開催していないこと。そこで、大村市も9月末からナイターレースに参入し、試算ベースでは240億円の売上増を見込んでいます。
トップクラスを目指せる位置にはいると思っていて、職員には「全国トップクラスを取りに行こう」と言っています。ナイターレースに転換することで、将来、収益増を果たせる可能性があると期待しています。
大村市は九州を中心に、全国13か所にサテライトの舟券発売所をオープンしています。そのサテライト発売所ももっと増やしたいと思いますし、インターネット販売でも売上増を見込めると思います。『アメトーーク』でも、大村のCMは面白いと取り上げられていましたが、様々な手法で全国のお客さんに舟券を買ってもらえるように大村ファンを増やしたいです。
実は、前市長時代に競艇事業は赤字に転落し、全国最下位にも陥って、市民から「ボート場なんて畳め!」って言われるところまで落ちたんです。
それを、当時の競艇企業局長が、強いリーダーシップと抜本的な経営改革に着手し、従事員のリストラからあらゆる改革を断行し、経営をV字回復させました。そして、今年からはナイターレースに変わります。
市長になってまちのために様々な施策を進めたいと思いますが、当然、財源をどう捻出するのか問われますよね。これからの時代、人口増や企業誘致は簡単に見込めるわけではない。自治体間競争の中で、新たな財源確保策を進めていくために、市長就任後すぐにナイターレースへの転換を指示し、職員一丸となって準備を進めようやく実現となります。ご理解ご協力をいただいた地域や議会、各種団体の皆さまには、本当に心から感謝しています。
IR関連法案を追い風にアジアの玄関口を目指す
加藤:少し話が変わりますが、IR関連法案について園田市長はどういうスタンスなのでしょうか。
園田市長:IR構想について私は大賛成です。長崎県と佐世保市がハウステンボスを中心にIR誘致に手を上げています。我々大村市は長崎空港を抱えていますし、今後のまちづくりの中で、アジアの玄関口としての長崎大村を目指していきたいんです。
市長就任直後から長崎県に対して要望を繰り返しているんですが、長崎空港をコンセッション方式の民営化により更に活性化させることで、長崎大村から世界と地域をつないでいきたいと考えています。国が目指す2030年訪日外国人数6000万人の目標達成のためには、アジアの玄関口である長崎大村の発展が不可欠だと思っていますし、その効果は長崎だけではなく九州全域へ波及するものだと確信しています。
その一方、依存などの課題もありますが、今回のIR関連法案はいわゆるヨーロッパ型で富裕層を対象としたリゾート施設やMICE機能を有するものだと言われています。依存症など市民生活を脅かすものにはならないと考えていますし、対応策も議論されています。ヨーロッパ型というのはハウステンボスと非常にマッチしていますし大歓迎です。
(第6話へ続く)
※本インタビューは全6話です
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