リスクを分散する“辞めない転職”という新たなオプション (2018/10/30 瓦版)
転職新時代到来 Vol.3 ~完熟社会の働き方の先にある人材流動化の行方~
転職当たり前時代の“新たなオプション”の可能性
転職が当たり前の時代となった一方で、“辞めない転職”という新オプションにも注目が集まり始めている。企業に所属したままで、他社にも所属する、いわゆるパラレルキャリアだ。人材不足を背景に企業側の受け入れ条件譲歩などにより、優秀人材を中心に浸透しつつある。終身雇用制崩壊後の自己防衛にもなる新しい企業選びのオプション。その可能性を探る。
編集業などを仕事にする水野綾子氏は、東京を拠点に、熱海でのまちづくりにも関わっている。仕事の比重は基本対等で、働き方としてはいわゆる複業となる。複数企業をまたにかけることに加え、2つの拠点を行き来する水野氏。その理由はハッキリしている。
「今の時代は一つの会社に“依存”することがリスクになる。複業はそのリスクヘッジになる。さらに異なるコミュニティで働くことは人生のリスクヘッジにもなる。地方は、働く場所として個が活躍するにふさわしいやりがいある仕事があふれている」と水野氏は力説する。
複数の企業で働くことがリスクヘッジになることは分かる。だがなぜ、地方で働くことが人生のリスクヘッジになるのか。水野氏が補足する。「熱海は課題だらけで30年後の日本ともいわれている。それを解決することは日本の課題を一足先に解決する実績づくりになる。加えて、人手不足が深刻な分、自分のスキルを活かせる余白もそれだけあるということ」。
二拠点ワークの大きなメリット
複数の仕事掛け持ちし、日本の課題を一足先に解決する。2重の意味で自己防衛になると水野氏は力説する。通常、同業他社への転職では業界が低迷していればリスクはスライドされる。スキル面でも他業種で使えないものなら、業種全体が低迷した時、一転して路頭に迷いかねない。だからこそ、首都圏プラスαの二拠点ワークには大きなメリットがあると水野氏は助言する。
もっとも、地方との掛け持ちは物理的にどうしても難しいという人もいるだろう。その場合、同一エリア内での複業ももちろんありだ。首都圏でも“複業採用”を導入する企業は増加している。辞めずに転職することは、企業寿命短縮の影響を軽減するのに有効なのは言うまでもないからだ。加えて、必要とされる場所が多いことを実感する環境は、ビジネスパーソンとしての自信を高めてくれる。
いまや半数以上が転職を検討する時代。かつてに比べればその存在は極めて身近になったが、そのリスクが減ったわけではない。だからこそ、転職にはこれまで以上にスマートさが求められる。一社ずつ企業を渡り歩く転職ももちろん否定はしない。とはいえ、一社に依存しながらの転職は常にリスクと背中合わせでもある。
幸いなことに転職がより身近になるのと並行し、その選択肢も増えている。企業や職業でなく自分を軸に転職を考えても、ふさわしい居場所を見つけやすくなっている。二拠点ワークは、そのひとつの象徴的アクションとして大いに参考にできるかもしれない。(続く)
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