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このまま会社員を続けるのか、もっと他にいい“場所”があるのか… (2018/7/3 瓦版

関連ワード : 労働・雇用 

さまざまな立場の“会社員”が示す多様な可能性

このまま会社員を続けるのか、もっと他にいい“場所”があるのか…

正社員神話崩壊が叫ばれて久しい。正社員は年功序列で終身雇用。なにより定額で報酬がもらえる…。こうした「安定」が、企業そのものの寿命短縮で根本から危うくなっている。それでも会社員がいいのか。あるいは、急増中のフリーランスがこれからの時代にはフィットしているのか…。会社員にとって、そのままいまの椅子に座り続けることが本当に賢明なのかは、解を見出しづらい永遠の課題といえるかもしれない。

せめて先駆者の事例があれば、少しはモヤモヤも晴れる――。まさにそんな要望に応えるイベントが先ごろ都内で行われた。渋谷を未来をつくる実験区とし、昨年から行われているプロジェクト「東京渋谷ヒャクバンチ」のイベントの一環として行われた。その名も「サラリーマン解放宣言~人生100年時代の働き方」だ。

登壇したのはパナソニック執行役員の小川理子氏、NTT西日本ビジネスデザイン部の新田一樹氏、amadana株式会社の伏見大祐氏。実はこの3人、それぞれジャズピアニストとして2足のわらじを履く、ベンチャー企業へ出向中、転職し4枚の名刺をもってマルチに活躍、と会社員として特異な経歴を歩んでいる。普通に会社員をしている人には、将来の自分をシミュレイトするにふさわしい “サンプル”なのだ。

事例1:女性役員とジャズピアニストの2足のわらじ

例えば小川氏。そのキャリアは、パナソニック史上2人目の女性役員でありながら世界的評価を受けるジャズピアニストと華々しいが、決して順風満帆に会社員人生を歩んできたわけではない。入社1年目から希望の仕事につき、日々刺激を受け、充実の毎日だったという小川氏。だが、30歳で突然プロジェクトが消滅。会社員にありがちな展開で一転、行先が遮断される。ポジティブな小川氏の頭にもさすがに退職の2文字が頭をチラついたという。

会社員としての歩みを振り返る小川氏(左)と新田氏

会社員としての歩みを振り返る小川氏(左)と新田氏

転機は上司の一言だった。「ジャスを一緒にやらないか」。迷いながらも、その一言でジャズに没頭し、自分の方向性を見出す。もちろん、ジャズをやりながらも仕事は全力で取り組んだ。それでも「中途半端だ」という外野の声もあったというが、かえって奮起。世界的なジャズイベントで高評価を得るまでになった。

「いろいろなことがありましたが、常に目の前のことに全力で取り組んでいました。私の場合、仕事は仕事、ライフはライフと区別していましたけど、苦に感じることはなかったですね。2足のわらじなのでいかに時間をつくるかは簡単ではありませんでしたけど」と小川氏は振り返る。常に前向きな小川氏だから可能だった、と考えるのは安直だ。誰にでも得意分野がある。仕事をしながらそれも磨き上げる。決して簡単ではないが、やるかやらないかはあくまでも本人次第だからだ。

事例2:レンタル移籍で大企業からベンチャー企業へ出向

新田氏の場合は、会社員が決断を迷う転職を特殊な方法でクリアした事例だ。それはレンタル移籍。ローンディールが展開する同サービスを活用し、新田氏はトリプル・ダブリュー・ジャパンに出向した。大企業からベンチャーへの“移籍”。転職なら安定を捨てることになりかねないが、期限付き。当時の新田氏にとって、渡りに船だったこともあり、会社から制度が発表されるとすぐに手を上げ、移籍を志願した。

「その当時、すごく不安がありました。自分のスキルが外で通用するのかどうか、ということに。同年齢の人がすごく活躍していたりもしましたし。ずっとモヤモヤしていたのですが、制度が発表されたので迷わず手を上げました」と新田氏。希望にあふれての出向だったが、大企業とベンチャーの“文化”の違いに新田氏は打ち砕かれる。出向先の代表には「想像以上に使えない」と痛烈なダメ出しを受けた。だが、在籍も1年が経過し、ギャップを克服。いまやすっかりベンチャースピリットあふれる社員に変貌を遂げている。

素朴な疑問はある。期限つきながら、毎日多くの刺激があるという出向先へ気持ちは傾いていないのか…。「正直残りたい思いはあります。でも、この仕組みの中で私だけができることは、会社へ戻り、この経験をフィードバックして活かすこと。まずはそれをやらなければいけない」と新田氏は率直に心境を明かす。<もしも転職していたら>は、会社員なら一度は夢想するかもしれないが、新田氏の事例は、その疑似体験としてふさわしい“サンプル”といえるだろう。

事例3:所属企業を辞め、転職してパラレルに活躍

4枚の名刺を持ち会社んの傍らマルチに活躍する伏見氏

4枚の名刺を持ち会社んの傍らマルチに活躍する伏見氏

実際に転職した事例になるのが伏見氏だ。アシックスから現職へ転職した伏見氏は「もしもレンタル制度があったら転職していなかったかも…」と言いつつ、「転職後は全て自分主導になりましたね」と転職によって視野が広がり、自分の持つ可能性がより引き出されていることを実感していると胸を張る。軟式野球チームの運営やワークショップデザイナーとして活動するなど、パラレルな活躍ぶりがまさにそれを象徴している。

会社員として1企業でキャリアを全うする、転職する。小川氏と伏見氏の事例は、会社員が岐路に立った時、選択する行先の大半を占めるものといえるだろう。いずれも成功事例のようだが、そのプロセスでは挫折や苦悩ももちろん味わっている。一方、新田氏の事例は、その折衷案ともいえるが、それにしても3人に共通することがある。それは、現状から一歩前へ踏み出し、チャレンジしていることだ。

挑戦は誰でもできる。いまの会社にいてもできる。できないとすれば、それは会社のせいではなく、原因は自分の中にあるはずだ。その意味では、いま会社員として悶々としているなら、まずは自分の心を解き放つ。人生100年時代をどう捉えるかは人それぞれだが、長い人生を悔いなく満喫するなら、なによりもそれが重要なスタンスといえるのかもしれない。

提供:瓦版

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