JPHDが社外取締役選任、「社外性要件」について (2018/10/30 企業法務ナビ)
はじめに
保育所大手JPホールディングスは24日、臨時株主総会で社外取締役3名と監査役5名を選任しました。これにより新体制での経営立て直しがスタートするとのことです。今回は以前にも取り上げた会社法上の社外取締役ついて、社外性を中心に見直していきたいと思います。
事案の概要
報道などによりますと、旧経営陣で対立が生じていたJPHDでは、今年の6月の定時総会から新体制が発足し、今月24日の臨時株主総会で社外取締役3名と監査役5名の選任議案が上げられておりました。
社外取締役の候補はJOHDの創業者で元社長の山口洋氏と株式の共同保有者であった王厚龍氏らで可決選任されたとのことです。これによりガバナンスの強化を図り新体制での経営の立て直しが本格的にスタートするとしています。
社外取締役とは
社外取締役とは会社の経営陣とは独立した第三者的な取締役を入れることにより、外部の目による経営陣への監督機能を強化しガバナンスを充実させることを目的とする制度です。
バブル崩壊後に頻発した企業不祥事を受け、社外取締役の導入が海外投資家を中心に求められておりました。近年その重要性は高まり、会社法上でも一定の場合では設置を要し、また東証への上場規程でも求められるようになりました。
会社法上必要とされる場合
会社法上社外取締役が必要とされるのは特別取締役による議決の定めをする場合(373条1項2号)、監査等委員会設置会社の場合(331条6項)、そして指名委員会等設置会社の場合(400条3項)となっております。特別取締役による議決の定めをする場合は取締役のうち1名以上が社外取締役であることが求められますが、特別取締役に社外取締役が入っている必要はありません。
監査等委員会設置会社の場合は取締役は3人以上で過半数が社外取締役、指名委員会等設置会社の場合は各委員の過半数が社外取締役であることを要します。
社外性の要件
社外取締役の要件は平成26年改正で強化されております(2条15号ハ~ホ)。具体的には以下の1~5に該当することが必要です。具体的に見ていきます。
- 現在および過去10年間、その会社と子会社の業務執行取締役等でないこと。業務執行取締役等とは代表取締役、取締役会により一定の業務について決定委任がされている取締役、代表取締役に一部の業務執行を委任されている取締役、執行役、支配人、支配人が該当します。
- 現在および過去10年間、上記業務執行取締役等でない取締役や監査役、会計参与であった場合、それらの職に就任した時の前10年間の間に業務執行取締役等でなかったこと。
- その会社の株式を50%以上保有している親会社等でないこと、また親会社の取締役、執行役、支配人、使用人でないこと。業務執行取締役等に限定されていないことから、親会社の社外取締役も含まれます。つまり親会社と子会社で社外取締役を兼任することはできません。
- 兄弟会社の業務執行取締役等でないこと。こちらは業務執行取締役等となっていることから、親会社を同じくする兄弟会社の両方で社外取締役を兼任することは可能です。
- その会社の取締役、執行役、支配人、重要な使用人の配偶者、または2親等以内の親族でないこと。つまり会社経営陣の近しい親族は不可ということになります。
コメント
本件で新たに社外取締役に選任された王氏は過去にJPHDの株式を保有していました。しかし現在50%以上を保有しているわけではないことから社外性要件を満たすことになります。今回3名の社外取締役が選任されガバナンスの強化が期待されます。社外取締役は会社法で必要とされる場合や東証の上場規程で要求される場合以外にもコーポレートガバナンス・コードで上場会社は2名以上の社外取締役の設置が推奨されております。
社外性要件は以上のように厳格化され、社外取締役を確保することは会社にとってかなりの負担になることは予想されますが、外部の目を入れることによるガバナンス体制の強化は会社イメージや投資家の評価にも影響があると言えます。要件を今一度整理して理解しておくことが重要と言えるでしょう。
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