大塚家具、財務担当取締役が退任、役員の任期について (2018/5/9 企業法務ナビ)
はじめに
大塚家具は7日、財務担当取締役であった杉谷氏が4月30日付で退任していた旨発表しました。理由は健康上の理由とされております。同氏は今年3月の定時株主総会で再任されたばかりでした。今回は定時株主総会に備え、役員等の任期について概観していきます。
取締役の任期
取締役の任期は原則2年です。正確には選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時までとなります(会社法332条1項)。通常は定時株主総会で選任され、2年後の定時株主総会が終わるまでとなります。指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社の場合は1年です(332条3項)。ただし監査等委員である取締役はその役割から独立性と身分保障を強化するため2年となります。
この任期は監査等委員を除いて定款か株主総会決議によって短縮することができます(同1項但書)。逆に任期を伸長できるのは非公開会社の場合のみです(同2項)。その際は10年まで伸ばすことができます。
会計参与の任期
会計参与の任期も基本的に取締役と同様です。原則的には選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する株主総会終結時までです(334条、332条1項)。指名委員会等設置会社の場合は1年となります(同3項)。やはり取締役と同様に定款、株主総会決議によって短縮することができ、非公開会社の場合は10年を限度として伸長することができます(同1項但書)。
監査役の任期
監査役の任期は4年となっております(336条1項)。監査役は取締役や会計参与の業務を監査するという役割上、その地位をある程度強化する必要があるためです。そしてこの任期は定款や株主総会決議によっても短縮することはできません。非公開会社の場合は取締役や会計参与と同様に10年を限度として伸長することができます(336条2項)。
会計監査人の任期
会計監査人の任期は1年です(338条1項)。これには例外はなく定款や株主総会決議によって短縮したり伸長したりといったことはできません。そのかわりに会計監査人にはみなし再任規定があり、定時株主総会で再任をしないなどの別段の決議がなかった場合は自動的に再任されたものとみなされます(338条2項)。
権利義務役員制度
取締役などの役員が任期満了や自ら辞任する場合、法律や定款で定められた員数を欠く状態となる場合には新たに補充されるまで、なお役員としての権利義務を引き続き有することになります(346条1項)。一般に権利義務取締役などと呼ばれます。この権利義務取締役の地位は会社との委任関係によるものではなく法律上強制的に発生するものであるから、この権利義務役員の地位自体を辞任したり解任するといったことはできません。この制度は代表取締役、監査役、会計参与、清算人、執行役などにも適用がありますが会計監査人にだけは適用されません。
補欠・増員規定
役員が欠けた時に備えて補欠を選任しておくことができます。通常この補欠役員の任期は選任時から起算されますが、そうなると他の役員と退任時期がずれることになります。そこで定款によって他の役員とともに退任する旨を定めておくことができます。これは補欠ではなく増員として選任した場合にも同様の規定を置くことができます。これは実質役員の任期の短縮に当たりますが、監査役、監査等委員にも補欠規定だけは適用され、増員規定は適用されません(332条5項)。
コメント
大塚家具は監査等委員会設置会社であり今年3月の定時株主総会終結時の役員構成は取締役が8名、そのうち社外取締役が4名であり退任した杉谷氏は監査等委員ではない取締役となっておりました。監査等委員会設置会社の場合、取締役会設置が必須となり、監査等委員会を構成する取締役の過半数は社外取締役でなくてはなりません。取締役会は最低3名、社外取締役は最低2名必要となります。大塚家具の場合は杉谷氏が退任してもこの員数を欠くことにはならないことから権利義務取締役とはならずそのまま退任することができます。
以上のように会社法では役員等の任期や退任に関してかなり細かな規定を置いております。定時株主総会では必ず役員の選任、退任、重任などが行われます。任期計算に間違いは無いか、権利義務とならないか等に注意を払って定時総会を乗り切ることが重要と言えるでしょう。
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