人生100年時代のスマートな学び直し術 (2018/9/21 瓦版)
社会人はただ学ぶだけでは続かない/身につかない
人生100年時代をキーワードに学び直し(リカレント教育)への注目が高まりつつある。内閣府の調査では学び直しへの興味は36%と控えめだが、潜在ニーズは高いとみられる。そこで、学び直しにブレーキをかける敷居の高さを突破する、学びを増幅する社会人のスマートな学習法を探ってみる。
学び直しに興味がある人は4割弱
内閣府が行った最新の調査(2018年7月)によると、学び直しに興味がある人は36.3%。この内、すでに学んでいる/学んだことがある人が19.3%で、そうでない人とほぼ半々となっている。学習したことがなく、今後も学習したいと思わない人が58.1%と考えると少数派ということになるが、学習したことがない理由のトップが「忙しくて時間がない」(33.4%)という点では、必ずしも興味がないワケではないといえるだろう。
クラウドソーシングで稼ぎながら学ぶ
理由の3位には「きっかけがつかめない」(15.8%)がランクインしている。これについていえば、おススメの取っ掛かりがある。クラウドソーシングへの登録だ。デザインやライティング、プログラミングが主流だが、いまやどんなものでもニーズがある。まずは自分の得意なジャンルに登録し、仕事として受けて、実力を把握。そこから磨き上げると、すでに身につけた能力ならそれがどれだけの市場価値があるのか、さらに何が不足しているのかなどが分かり、ブラッシュアップが加速する。おまけに報酬までもらえるのだから一挙両得だ。
デジタルスキルを学んで“独立”
学習と実益を兼ね、主婦が殺到しているのはWEB系の専門学校だ。デジハリでは主婦ママコースの人気が上昇し、決して安くはない受講料ながら多くの受講生が集まっている。その理由は明白。デザインやプログラミングのスキルなら、在宅での受注が可能で子育てしながらでも自由に仕事に取り組めるからだ。興味深いのは、その多くがスキルを身につけて就職というコースでなく、フルーランスの道を選択するという点。限りなく自由を求める表れだが、一方でそれだけ仕事もあるということでもある。自由に働くために学ぶ。これなら学び直しにもおのずと力が入るだろう。
資格を取得してバイトして知識をブラッシュアップ
社会人の学びといえば資格取得が一般的だ。フォーサイトでは合格した受講生に指導フォローの仕事をあっせん。受講生の合格後の知識定着サポートと併せ、講師不足対策としている。「1年ほど前から資格合格者に受講生フォローの質問や相談に乗ってもらっています。在宅でできるお仕事なので空いた時間に対応してもらっています」と同社。会社員はもちろん、独立した人や主婦、フリーランスなどが活躍しているそうだ。
実際に主婦から同社で資格を取得し、フォローを手伝っている女性は「子供がいるので在宅は都合がいいですし、受講生への回答は自分が通ってきた道。いい加減なことはできないので質問のニュアンスをしっかりくみ取って、回答するよう心掛けています。吸収した知識のアウトプットになり、結果的に学んだことのブラッシュアップにもとても役立っています」とニンマリ。同社では今後、個別指導を強化していく方針で、その延長線上にはOB/OGの講師としての採用も視野に入れており、資格取得だけに終わらず実益にも結び付けられる“学び場”として、頭に入れておいてもいいかもしれない。
ネット大学で在宅学習
先の内閣府の調査では社会人として学ぶ場合、どこで開講すればやりやすいかについての項目がある。その1位は図書館や公民館、2位が僅差でインターネットとなっている。場所の制約がないネット学習が社会人に都合がいいのは明白だが、そうなればネット大学が最適だ。八洲学園大学は、日本で初めてネット大学として学位や国家資格を実現した通信制大学。就職サポートも行っており、学ぶに留まらないところが頼もしい。その延長線上には学んだ智を共有しあい、教え合う空間としてネット上で開放する構想もある。つまり、学び、さらに教える側にも回るサイクルの構築が同大では計画されているということだ。社会人が箔をつけるにはうってつけの環境も着々と整備されており、真剣に学びを検討している人にはおススメだ。
専門知識を磨いて大学講師になり拍付け
より高度に仕事に活かしたいという人は、文科省が2019年度から開始予定の実務家教員養成スクールが狙い目だろう。実務家教員は、企業や自治体などで働く人がその実務経験を生かした教員で、隆盛産業の発展の一翼を担う人材として政府もその育成に予算を計上している。対象分野はAIや経営管理、女性の復職支援などで、その道で一定のスキルを持っているなら、チャレンジすることで肩書に拍が付くと同時に日本経済の発展にも貢献でき、大きなやりがいがあるはずだ。
リカレント教育は、社会人などが学び直しをし、キャリアの再構築に役立てるもの。定年制が崩壊し、人生100年時代が叫ばれるようになったいまを、地に足をつけて歩くための“武装”といっていいだろう。すでに上流では教育課程に変革の波が訪れているが、企業や国によるサポートからの自立が一層求められる中で、そうした流れが下流にも到達しつつあるともいえる。その意味ではいままさに、学びの意味や目的が大きく変質するターニングポイントに日本が差し掛かっているということかもしれない。
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