歪な外国人活用の仕組み是正に動く組織も (2018/9/13 瓦版)
【集中連載】歪な外国人労働者受け入れが招く、日本の末路Vol.8
外国人雇用協議会が目指す“開国”のカタチ
正門なき開国。骨太の方針の中でも重要項目として触れられている「外国人材の受け入れ」だが、ナーバスなまでに「移民政策とは異なる」と何度も念押しされている。なんとも中途半端感のぬぐえない“開国”に異議を唱え、質の高い外国人流入を支援する組織も生まれている。外国人雇用協議会だ。
その設立趣旨は以下の通り。
“我が国の就労人口に占める外国人の比率は、主要国と比して低く、しかも、その多くは、技能実習生、留学生(アルバイト)が占めています。我が国の外国人受入れ政策は、建前は、専門的・技術的な外国人を受け入れ、単純労働者は受け入れないとされるが、実態はむしろ逆転ともいえる状態が生じています。
日本経済が今後、世界各国との競争の中で成長を続けていくためには、こうした現状から脱却し、より多くの質の高い外国人材を活用していくことが欠かせません。
そのため、1)政府の政策・制度の改善を実現していくとともに、2)企業側での受入れ環境の整備、3)日本のビジネス社会で適応できる人材育成といった課題にも対応していく必要があります。
一般社団法人外国人雇用協議会は、これらに対応し、日本の言語・文化・ビジネス習慣に通じた質の高い外国人が、日本のビジネス社会で最大限に活躍できる環境を整えるため、設立しました”
政府が打ち出した外国人労働者受け入れの方向性に異議を唱え、外国人就労の現状を憂いつつ、日本での就労を希望する外国人の側に立った内容といえるだろう。
会長の堺屋太一氏を筆頭にそうそうたるメンバーが名を連ねる同協議会は、具体的には(1)政策・制度の改善、(2)企業側の受け入れ環境の整備、(3)日本のビジネス社会に適応できる外国人材の育成などでその目的遂行を目指す。
(3)についてはすでに「外国人就労適性試験」を開発。2018年9月に第一回目の試験を開催している。同試験は、社会規範やビジネス慣習と来客対応などの共通基礎試験に加え、ホテル・旅館、小売り・アパレル、介護・福祉・保育、農業など業種別職務遂行力試験が行われ、外国人材のレベルを測る一定の尺度となる。
独自に教育を実施する企業も増えつつあるが、日本語力以外の具体的指標の設定は簡単でない。同試験がそのひとつとして認知されていけば、外国人労働者の質の底上げにもつながっていくだろう。さらに企業にとってもより戦略的な外国人材採用が可能になり、最初の一歩を踏み出しやすくなるかもしれない。
外国人の流入が加速する中、「移民」という言葉が封印され、単に労力として外国人に“勝手口”を開放しているようにしかみえない日本。そのことがグローバル視点では大きなマイナスとなっていることに危機感は感じられない。外国人労働者にとって、日本はあくまでも数多ある異国の一つ。その点を忘れてはいずれ外国人にそっぽを向かれ、少子化日本は静かに衰退に向かう。現状をみる限り、そんなシナリオしかみえてこない…。(続く)
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