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最高裁でレオパレス敗訴確定、受信料問題まとめ (2018/8/31 企業法務ナビ

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はじめに

テレビが予め備え付けられた賃貸住宅「レオパレス21」の受信料について、入居者に支払い義務があるかが争われていた訴訟で最高裁は29日、上告を棄却し入居者敗訴が確定しました。入居者側の支払い義務を認めた初の最高裁判決となります。今回は一連の受信料訴訟について見直します。

液晶テレビ

事案の概要

報道などによりますと、福岡県在住の男性が仕事の都合で短期間、兵庫県内のレオパレスの物件に会社名義で入居したところ、NHKの集金人が訪れ受信契約を締結させられたとのことです。男性は受信料の支払い義務はないとして、支払い済みの受信料1カ月分である1310円の返還を求め提訴しました。一審東京地裁は受信料支払い義務を負うのは入居者ではなくレオパレスであるとして男性勝訴。二審では一転敗訴となっておりました。

放送法の規定

放送法64条によりますと、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備…を設置した者については、この限りではない。」(1項)としています。また2項では「協会は、あらかじめ、総務大臣の認可を受けた基準によるものでなければ、…契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない。」としています。これらの規定の解釈を巡ってこれまで多くの訴訟が展開されてきました。以下見ていきます。

受信料訴訟の争点

これまでの受信料訴訟で主に問題となってきたのは、「受信設備を設置した者」の解釈、受信契約の成立時期と受信料債権の発生時期、受信料債権の消滅時効の起算点、放送法64条自体の合憲性です。テレビ設置者に該当するのは建物の所有者か利用者か、契約はいつ成立し、いつから受信料を支払わなければならないか、受信料債権は5年で時効消滅しますがいつから起算されるか、そしてテレビ設置により強制的に契約が締結されることが契約の自由(憲法13条)、財産権(29条)などに反しないかということです。

これまでの判例

2017年12月6日の最高裁判決ではまず放送法64条の合憲性について、スポンサーや政府に左右されず政治的に中立な放送を確保することを目的としており、国民の知る権利を充足しているとして合憲としました。そして受信契約の成立時期は訴訟でNHK勝訴が確定した時点で契約が成立し、テレビ設置時にさかのぼって支払い義務が発生するとしました。また時効については契約成立が確定するまで権利行使ができないことから、時効も成立しないとしました。そして今年2018年2月9日の最高裁判決で、ホテル(東横イン)の部屋のテレビに関してはホテル側が「受信設備を設置した者」に当たるとしました。

コメント

本件で最高裁はレオパレスの賃貸住宅に設置されたテレビに関して、受信料支払い義務を負うのはレオパレスではなく入居者であるとしました。「受信設備を設置した者」は物理的に設置した者だけでなく、テレビを占有・管理している者も含まれるとした東京高裁判決を最高裁が支持したこととなります。東横インの事例とは結論が異なるように見えますが、1日~数日しか滞在しないホテル利用者と一定期間安定して滞在する賃貸物件利用者の利用形態の違いを考慮したものではないかと思われます。

これによりほぼ放送法を巡る争点についての判断は出揃った形になります。一定期間の居住を想定した施設では入居者側に、それ以外の一時的な利用の場合は施設の所有者に支払い義務が発生すると考えられます。テレビを設置する場合、また既に設置している場合は以上の判例の考え方を参考に受信料支払い義務について検討しておくことが重要と言えるでしょう。

提供:企業法務ナビ

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