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外国人人材活用でつまづく企業にありがちなアンコンシャス・バイアスとは (2018/3/12 瓦版

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外国人材の正社員活用を阻む、見えない“壁”

外国人労働者の増加に伴い、特にその流動が活発なサービス業。そうした中でも両者の間に少なからず軋轢は生じている。これが正社員採用となると、ますますそのミゾは深まりそうだが、実態はどうなっているのか。

外国人労働者

最新の外国人労働者の数は127万8670人。その内、正社員として働く外国人は14%となっている。サービス業の現場で目にする、外国人労働者の数のイメージからすると随分と少ない印象だ。ガッチリと組織への融合が求められる雇用形態だけに、そこには高い壁があるかもしれない。

ASEAN出身人材を専門とするNODE(株)が、ASEAN出身留学生323人に行った調査によると、日本で就職活動にあたって不安なことで、最も多かった回答は「日本語レベル」(65.2%)。それに伴い、「面接」(41%)も高い割合となった。当然といえるような結果だが、これを踏まえて受け入れ企業の側に目を向けると、外国人材の正社員採用の難しさの一端が垣間見える。

外国人材の日本語力について、外国人の採用実績がある企業(N=210)では60%が「日本語力がある」と回答した一方で、採用実績のない企業(N=90)では、「ありそう」の回答が35%だった。採用経験の有無が、外国人材への“偏見”を生み出しているという残念な結果といえるだろう。

さらに定着率ついては、採用実績のある企業では62%が「高い」と回答したのに対し、採用実績のない企業では「高そう」が40%で、「低そう」の60%を大きく下回った。採用実績がない企業が、外国人というだけでネガティブなイメージを抱いているとすれば、グローバルとは程遠く、採用という局面でも大きく世界に後れを取っていることをにじませる結果といえる。

ベトナム出身でIT企業への内定を獲得したある留学生は、日本語での履歴書を10社の選考のために100枚以上書き直すなど、苦労の末に難関を乗り越えた。その上で、こんなことを明かす。「日本の就職活動ではどこの面接でも聞かれることが同じ。機械的で本当に自分自身をみてもらっているのかという疑問がありました」。外国人材に限らず、日本企業の採用力の弱さがにじみ出る率直な感想といえるだろう。

外国人材の活用の成否で大きく差がつく戦力

一方で、外国人採用成功企業の声として、ASEAN人材を採用した代表のこんな声もある。「日本人じゃできないことを平然とやってのける。ミャンマーからの新規引き合いに対し、メールと電話だけで売上げを上げ、前金で払ってもらえるくらいの信頼関係も構築できる。これは外国籍じゃないとなしえない」と率直にその喜びを明かす。

通り一遍の質問で人材の本質をみようとしない企業と人間として外国人材をみる企業。たったそれだけの違いで、自社に価値をもたらす「人財」獲得の成否が分かれるーーまさに企業がその体質としてグローバルの素養があるかどうかが、とりわけ採用という局面では問われることを示す2事例といえるだろう。

語学力や“偏見”がボトルネックとなり、グローバル人材の獲得に及び腰な日本企業。だが、人口減少による国内市場のシュリンクは確実で、もはやグローバル化は待ったなし。外国人正社員の採用がそのカギを握ることは明白だ。実際、海外工場のマネージャー候補、海外営業拠点のマネージャー候補、日本本社と海外子会社およびお取引先をつなぐブリッジ人材などは、海外展開の“キーマン”として、その採用ニーズは高まっている。

綿密な採用戦略としっかりとしたグローバル視点。少なくともその2つがあれば、ポテンシャルの高い外国人人材を確保するのは可能だ。そのためには、採用を検討する外国人を「人財」として、どこを評価し、何をやらせるために採用するのか。それを明示することが大前提だ。ダイバーシティの風潮だから、とりあえず外国人を採用しておこう。その程度の意識なら、就職先としての企業、ひいては日本の価値が下がるだけで、本当に必要なときには優秀な人材を確保できない、という悲惨な末路に陥りかねない…。

提供:瓦版

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