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生活習慣病等のリスク低減のため、まず「毎日、10分」長く歩いてはどうか―健康長寿医療センター (2018/8/16 メディ・ウォッチ

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 日本人は、外国人に比べて「運動不足と生活習慣病との関連が強い」可能性があり、運動不足が解消されれば平均余命が0.91年延伸すると推測される。65歳以上の高齢者では、毎日40分程度の身体活動を行うことが推奨されており、例えば「1日、10分間、これまでよりも長く歩く」「ご近所づきあいを意識的に行う」ことから始めてはどうか―。

 東京都健康長寿医療センターが8月8日、研究トピックス「高齢期の健康づくりと身体活動」を公表し、このように呼びかけました。

運動不足は生活習慣病悪化に大きくな影響、男性では「ご近所づきあい」から始めよ

 国際学術誌「ランセット」の身体活動ワーキンググループの研究によれば、日本人では、外国人に比べて「運動不足が生活習慣病に影響する度合い」が1.6-1.7倍高い、つまり「運動不足と生活習慣病との関連が強い」可能性が示唆されています。さらに、運動不足の解消によって、日本人の平均余命は0.91年延伸するとの推計結果も示されています。

▽冠動脈性疾患に対する運動不足の影響は、日本人では10.0%(世界では5.8%なので、日本人で1.72倍高い)
▽2型糖尿病に対しては12.3%(同7.2%、日本人で1.71倍高い)
▽乳がん(女性のみ)に対しては16.1%(同10.1%、日本人で1.59倍高い)
▽大腸がんに対しては17.8%(同10.4%、日本人で1.71倍高い)
▽総死亡に対しては16.1%(同9.4%、日本人で1.71倍高い)

高齢期の健康づくりと身体活動(都健康長寿医療センター)

 この点、世界保健機関(WHO)では、65歳以上の高齢者では「週当たり150分の中強度有酸素性身体活動、または75分の高強度有酸素性身体活動、または両者の組み合わせ」を行うことなどを勧告しています。

 中強度の有酸素運動(安静時の3.0-5.9倍の強度)には、例えば「普通歩行」(安静時の3.0倍)や「かなりの早歩き」(同5.0倍)などが該当します。

 また高強度の有酸素運動(安静時の6.0倍以上の強度)には、例えば「ゆっくりとしたジョギング」(安静時の6.0倍)、「山登り」(同6.5倍)、「ランニング」(同8.3-9.8倍)、「水泳」(同10.0倍)などが該当します。

 運動の強度を示す「メッツ」という単位(安静時の何倍に該当するか)を用いると分かりやすく、中強度(安静時の3.0-5.9倍)に該当する身体活動としては、上記の運動のほか「カーペット拭き」(3.3メッツ、つまり安静時の3.3倍の強度)、「軽い荷物運び」(3.5メッツ)、「風呂掃除」(3.5メッツ)、「家具・家財道具の移動、運搬」(5.8メッツ)などの日常活動や、「ボウリング」(3.0メッツ)、「社交ダンス」(3.0メッツ)、「ラジオ体操」(4.0メッツ)、なども含まれます。

 また高強度(安静時の6.0倍以上)には、上記のランニングなどのほか、「スコップでの雪かき」(6.0メッツ)、「重い荷物の運搬」(8.0メッツ)、「荷物を上の階へ運ぶ」(8.3メッツ)などの日常活動、「テニス(シングルス)」(7.3メッツ)、「武道」(10.3メッツ)なども含まれます。

高齢期の健康づくりと身体活動(都健康長寿医療センター)

 一方、我が国では、厚生労働省が「健康づくりのための運動指針2006」「健康づくりのための身体活動基準2013」を策定しており、そこでは「65歳以上の高齢者では、『強度を問わず』毎日40分以上の身体活動を行う」(1週間当たり10メッツ・時)ことを推奨しています。

 「ストレッチ」(2.3メッツ)や「ヨガ」(2.5メッツ)、「植物への水やり」(2.5メッツ)などは、上記に比べると強度が弱いのですが、例えば、ヨガを1週間で合計4時間行うと「10メッツ・時」に相当する活動を行ったことになります。

健康づくりのための身体活動基準2013(概要)の抜粋

健康づくりのための身体活動基準2013(概要)の抜粋、65歳以上の高齢者では、強度を問わず、1週当たり10メッツ・時の身体活動を行うことが推奨されている

 こうした点を踏まえて、東京都健康長寿医療センターは、まず「1日、10分間、余分に歩く」ことや、「意識的に日々のご近所づきあいや、社会活動を行う」ことから始めてはどうかと提案しています。上記の「健康づくりのための身体活動指針」では、「+10(プラステン):今より10分多く体を動かそう」というメッセージも発出しています。

 毎日、余分に10分間の身体活動を増やすことで、▼生活習慣病の発症リスクが3.6%▼がんの発症リスクが3.2%▼ロコモティブシンドローム(骨や筋肉などが衰え、歩行や立ち座りなどの日常生活に支障が出ている状態)や認知症発症リスクが8.8%―低下するという研究結果もあります。

 また、これらは近隣住民にも良い効果を及ぼし、「ご近所づきあいが活発な男性の割合が地域で1%高くなるごとに、個人の1週間当たりの中強度身体活動量が約30分増える」という研究結果もあり、特に男性において「ご近所づきあい」への参加が重要と言えるでしょう。

提供:メディ・ウォッチ

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