受動喫煙対策強化へ、健康増進法改正の動き (2018/7/11 企業法務ナビ)
はじめに
参院厚生労働委員会は理事懇談会で受動喫煙対策強化を目的とする健康増進法改正案について12日に採決することを決定しました。東京五輪が開催される2020年4月までに段階的に施行される予定です。今回は健康増進法改正案について外観していきます。
法改正の背景
他人のたばこの煙にさらされる、いわゆる受動喫煙は特に幼年者や病者に対し健康への悪影響が強いと言われております。日本は「たばこの規制に関する世界保険機関枠組条約」にも参加しており、また世界保健機関(WHO)や国際オリンピック委員会(IOC)は「たばこのないオリンピック」開催を推進しているとのことです。これを受け来る2020年の東京五輪開催までに受動喫煙対策を強化すべく健康増進法の改正案が審議されております。
改正の概要
厚労省の発表によりますと、今回の改正案の概要は次の通りです。(1)学校、病院、児童福祉施設等、行政機関、旅客運送自動車・航空機については敷地内は禁煙(ただし屋外に喫煙場所設置可)、(2)上記以外で多数の者が利用する施設、旅客運送船舶・鉄道、飲食店は原則屋内が禁煙で喫煙室内でのみ喫煙可となります。(2)については店舗や経営規模の大きさによって一定の経過措置が設けられる予定です。これは経営規模が小さい既存事業者の事業活動を保護する目的です。
既存の小規模事業者
飲食店経営事業者のうち、既存の小規模経営者の場合は店舗内に喫煙室を設置しなくても20歳未満立ち入り禁止にすることで、別途法で定める日まで経営が可能となります。ここに言う「経営規模」が小さい事業者とは、資本金5000万円以下でありかつ客席面積が100平方メートル以下である事業者を言います。なおこれに該当する場合でも大規模事業者が発行済株式総数の50%以上を保有している場合は除外されます。
法的義務と罰則
本改正案では全ての者に対して喫煙禁止場所での喫煙および紛らわしい標識の掲示、標識の汚損等が禁止されます。そして施設の管理権原者に対しては喫煙禁止場所での喫煙器具、設備等の設置および喫煙室内への20歳未満の者を立ち入らせることが禁止されます。違反した場合にはまず行政指導がなされ、勧告・命令を経て改善が見られない場合には罰則が適用されることとなっております。
コメント
今回の改正健康増進法は今後2年に渡って段階的に施行されることが予定されております。学校、病院、児童福祉施設、行政機関については2019年夏ころ、それ以外の施設に関しては2020年4月1日の施行となる予定です。今回の改正によって経過措置の対象となる中小企業や個人経営店舗は全国で55%程度となると推計されております。
資本金5000万円以上の場合は店舗を全面禁煙とするか専用喫煙室の設置が必要となってきます。経過措置を受けられる小規模経営者も最終的には同様の措置が必要となると予想されます。店舗運営をしている場合、またはそれを予定している場合は本改正と関連法の動向に注意して、受動喫煙対策を準備しておくことが重要と言えるでしょう。
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