東京地裁が差止命令、マンション管理規約と民泊について (2018/8/14 企業法務ナビ)
はじめに
東京都港区のマンションで管理規約に違反して民泊営業を続けていたとして、管理組合が民泊営業の差し止めを求めていた訴訟で東京地裁は差し止めを認める判決を出していたことがわかりました。民泊新法にともない規約を改正し、民泊を禁止した後も営業を続けていたとのことです。今回はマンション管理規約と民泊の関係について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、問題となった東京都港区のマンションの一室を神奈川県鎌倉市の男性が2015年に購入し、民泊仲介最大手のエアビーアンドビーに掲載して民泊営業を行っていたとのことです。1泊約1万3000円で掲載され、外国人旅行客などが滞在しておりました。夜間にバルコニーで会話、ゴミの分別がされずに捨てられていたなど他の住民から苦情が相次ぎ、管理組合は管理規約を改正して民泊を禁止した上で男性に民泊の中止を申し入れた後も民泊は継続されていたとされます。組合側は昨年6月に提訴しておりました。
民泊新法と民泊
従来民泊は旅館業法にいうところの「簡易宿泊営業」に該当し、旅館業法に基づいて許可を得る必要がありました。しかし今年6月15日に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)により民泊業が明確に定義され、事前登録によって営業を行うことが可能となりました。これまでグレーだった民泊営業が法的にクリアーなものとなったと言えます。
マンションと区分所有法
マンションのように一つの建物の中に構造上区分され独立した部屋がある建物を「区分建物」と言います。このような区分建物はその構造上、区分所有法によって特別の規定がなされております。個人が所有している部屋を「専有部分」、それ以外を「共用部分」と呼び(2条3号、4号)、共用部分は区分所有者全員の共有となり(11条1項)、建物の敷地は専有部分と一体となり、分離して別々に売買したりできないなどの制限を受けたりします(22条1項)。
マンション管理規約と民泊
マンションなどの区分建物では、建物や敷地などの管理に関して管理規約を定めることができます(30条1項)。この管理規約の設定、変更、廃止に関しては区分所有者の議決権の4分の3以上の賛成による決議が必要となり、この割合は変更することができません(31条1項)。一般的には国土交通省が作成し発表しているマンション標準管理規約という雛形をそのまま採用しているマンションが多数を占めていると言えます。
民泊新法に伴って昨年8月29日に民泊を許容する内容のものと禁止する内容のものに改正されましたが、それ以前の標準管理規約では原則として禁止となっております。区分所有者は共同の利益に反する行為が禁止され(6条)、そのような行為の差し止めや予防措置、建物の使用禁止などを求めることができ(57条、58条)、場合によっては訴訟による引き渡し請求、いわゆる追い出しが可能となります(60条)。
コメント
本件で東京地裁は被告男性が行っている民泊行為をマンション管理規約に違反するものと認定し、「募集を停止した」と言ったあとも実際には営業を続けていたことから今後も継続する恐れが高いとして差し止めを認めました。また管理規約に規定されていた違約金として弁護士費用97万円についても支払いを命じました。
現在管理規約を置いているマンションのほとんどは民泊を禁止していると言われております。特に高級マンションではプールやスパなどの共用部分があり、見ず知らずの民泊利用者がそれらを利用していたら他の所有者にとって不快であり資産価値を損なうといった点が理由とされます。
民泊新法が施行され、新たに民泊事業の展開を考えている企業が増えておりますが、マンションの場合は法律とは別にそれぞれ管理規約が存在します。管理規約で禁止されている場合は訴訟に発展する場合もあるという点に留意して準備を進めることが重要と言えるでしょう。
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