「ブログから広がっていく夢と挑戦」フィンランド在住ブロガー兼グラフィックデザイナーあおいさん―【海外で暮らすフリーランスのリアル】第7回 (2018/8/1 nomad journal)
「遠い存在だ」「自分とはちがう」。そう思われがちな、海外フリーランスという働き方。でも本当に、海外フリーランスは特別なのでしょうか?海外フリーランサーが実際どんなふうに仕事をしてどんなふうに生活しているのか、月一度のインタビューを通してお伝えしていきます。
第7回目のインタビューに応じてくださったのは、フィンランドでブログや北欧ショップを運営をしている、あおいさんです。
お話をうかがった方:あおいさん
フィンランド在住ブロガー兼グラフィックデザイナー。夫との楽しく笑いの絶えない毎日を4コマ漫画で更新中。ブログではフィンランドの旅行・観光・情報も詳しくまとめているので、フィンランドに旅行・留学される方のお役に立てれば幸いです。 現在sopiva北欧ショップも運営中!
英語orデザイン?将来を決めた高校時代
中学生のころから英語とデザインに興味があったので、高校の進路を考えるとき、「どっちにしようかな」と悩んでいました。
そこで「美術系の仕事に就く夢があるなら学校で学ぶ経歴も大事」いうのを聞いたので、ビジュアルデザインを勉強できる高校に決めました。高校でデザインを勉強してみて、自分に向いていなかったら大学で英語を勉強すればいいかなぁって。
高校は個性的な人が多くて、すごく居心地がよかったです。「お弁当を食べる相手を探さなくていい学校」っていうのかな。個人を大事にする学校でした。
でも絵がうまい人ばっかりで自分に自信がもてなくて、大学でもデザインの勉強を続けるか迷いました。
そのときはわたしのなかで、留学=英語系の学部っていうイメージがあったんです。「留学したいなら英語系に行かないと!」って思ってて。
でも、英語系の学部じゃなくても、現地で専門的な勉強をするっていう留学の種類があることを知りました。
「デザインと英語の勉強を両方できるなら、デザインを専攻して留学に行こう」って思って、芸術系の大学に進学しました。専門はテキスタイルです。
フィンランドのトゥルクへ留学
留学するっていう目標があったので、1回生のときからボランティアで留学生をサポートしたり、通学中に単語を覚えたりして、独学で英語を勉強していました。
でもわたし姉妹が多く、みんなデザイン系の進路を選んでるんです。ただでさえ奨学金を借りているのに留学もなんて、お金が足りなくて。だから2回生が終わってからの1年間休学して、ひたすらバイトをしてお金を貯めました。
もともと北欧のフラットでカラフルなデザインが好きだったっていうのもあって、復学して3回生になった夏、フィンランドのトゥルクに留学しました。
志望した大学は、英語でデザインの勉強ができるうえ、世界的に有名なフランクフルトの見本市に、学生でも参加できる権利を持っていたんです。
留学は本来、9月から1月までの1セメスターと決まっています。でも留学生活がもう楽しくて楽しくて! 留学先と日本の大学に許可をもらって、滞在を2カ月伸ばしました。
その延長期間に現在の夫であるあれちゃんと付き合うようになったので、延長してなかったらいまの生活はなかったと思うと、ふしぎな感じです。
就活を終えるもまさかのプロポーズ
4回生になる春に帰国して、すぐに就活を始めました。でもそこで、秋田でインターンをしていたあれちゃんにプロポーズされたんです(漫画の続きはブログで https://suomi-isshoissho.com/please-come-to-finland-7048)。
就職したら、当分は長期休みを取れないからフィンランドには行けない。あれちゃんも、かんたんに日本に来られるわけじゃない。それで、「結婚したらフィンランドに来てくれる?」って聞かれて。
内定をいただいていたので、すごく悩みました。でも逆の立場だったら、自分はあれちゃんを日本に呼べないなって思ったんです。責任重大ですから。それでもあれちゃんは、自分を呼んでくれた。それなら信じられる。
あと、就活きっかけに、フィンランドに戻りたいと思っていたところもあるんです。高校、大学と自由な美術系の学校で、留学して、戻ってきたら黒髪でスーツの就活。それにどこか違和感を感じる自分がいたんですよね。
移住してフィンランド語の壁にぶつかる
卒業してからフィンランドへ行くまでの3カ月間は、クラウドソーシング経由でフリーとしてお仕事をいただいていました。
フィンランドに移住してからは、現地でデザイン系の仕事に就くつもりで、日本でいうハローワークのようなところへ行きました。
でも担当者に、「フィンランド語ができないと就職はむずかしい」って言われちゃったんです。 当たり前ですよね。移住になるといろんな義務もあるし、責任もあります。
正直「英語ができれば大丈夫」と思ってたんですけど、現地語ができないと、どうしようもない部分もあって。
それで、「やっぱり現地語ができなきゃダメなんやな」って思って、就職支援の語学学校の申し込みをしました。タダでフィンランド語の授業を受けられるうえ、生活費ももらえるんですよ!
国としては、「フィンランド語を勉強して働いてくれれば将来税金を収めてくれるから」という、投資の感覚みたいです。
ブログを生活の糧にすると決める
学校へ通う許可が降りる間、趣味として『スオミの旦那と一生一笑』というブログをはじめて、フィンランドの日常や国際結婚などについて発信し始めました。
そしてやっと学校の入学許可が下りてフィンランド語の学校に通うようになったのですが、少ししてから、ブログのアクセスがどんどん増えてきたんです。
フィンランドでは、就職支援のための語学学校に行きながらフリーで働くことはできません。
当時はまだフィンランドのブロガーは少なかったけど、これから増えていくかもしれない。夫婦で一緒に仕事をする夢もある。だから思い切って、学校を辞めて本気でブログをやることにしました。
とはいっても、最初は全然お金にはならなかったです。営業してもあんまりいいお返事をいただけなかったり……。
それでも国からの起業家支援を受けつつ彼にサポートをしてもらいながらコツコツ続けていったら、少しずつ収入を得られるようになりました。
ブログから広がっていく夢と挑戦
ブログのほかにも、たとえば夫婦でYouTubeの動画を作って旅を仕事にしたり、知人の紹介で学校でアートの授業をしたりもしました。わたし、美術の教員免許をもっているので。
あとは、日本にいたときからずっとお付き合いのある企業から、不定期にデザインのお仕事をいただいています。
昨年、日本へ北欧デザイン・雑貨・ビンテージの卸販売をしているスウェーデン在住の方から声をかけていただいて、今年3月から北欧グッズを日本に届けるSOPIVAというショップ運営を一緒にはじめました。
わたしの担当は、CIデザイン、ウェブショップの管理、グラフィック広告の作成、SNS担当で、夫はカメラマン、広告管理、マーケティングを担当しています。
いろいろ手を広げると中途半端になっちゃうので、とりあえず今はこの2つを一生懸命やっています。
フィンランドフリーランスの働き方
日本だと、「納期は短く早めに対応」「休日も働かないと」が絶対だと思っていました。でもフィンランド人は休みの日は思いっきり休むので、わたしもそうやって割り切るようになりましたね。
あと、日本だと「まずは会って名刺交換」って感じが多いと思うんです。会って信頼関係を作るのを重視するというか。
でもフィンランドだと、連絡のハードルが低いんですよ。数回のメールだけで会うこともないまま契約を交わすことも多いです。そんな感じだから、「とりあえずやってみよう」って気になります。
グラフィックの仕事のほうは、海外からだと注文できない印刷所があったり、アクセスできないサーバーがあったりするので、そういうときは海外在住だと多少困るときがありますね……。
毎日を積み重ねて、新鮮なフィンランドを伝えたい
北欧って、家具や雑貨のイメージが強いじゃないですか。でも、それだけじゃないんです。
たとえばフィンランドでは、仲間内で男女混浴サウナに行く人もいて、みんな裸でくつろいでいたり。かと思いきや、そのまま海の水で水浴びしたり、湖で泳いだり……。
そういう、新鮮なフィンランドも伝えていきたいです。
そうやってわたしたちのライフスタイルや夫婦のキャラクター性を発信していけば、自然といろいろなお話をいただけるようになります。
たとえば「北欧関係のイベントに来てほしい」とか「こういう記事を書いて欲しい」、さらに最近は「ヘルシンキでハネムーンのカメラマンをお願いしたい」とご連絡をいただいたりとか。
目の前にあることを毎日コツコツとがんばっていけば、結果や収入はあとからついてくると信じて活動を続けています。
いまはもう生活基盤がフィンランドにあるので、日本に戻る予定はありません。就職せず、このまま自分のキャリアを積んでみるつもりです。
でもあれちゃんが日本茶が大好きなので、「日本の田舎に数ヵ月暮らすのはいいかもね」って話してます。茶摘みしたりしたいな(笑)
日本では他の人の視線が気になったし、なんだか生き急いでいた気がします。でもフィンランドで、人生の喜びを取り戻しました。休んで、家族との時間を大事にして、食べて、寝て……。
そういう人間らしい生活を楽しみながら、これからもフィンランドの情報を発信していきたいと思います。
――ありがとうございました!
取材・記事制作/雨宮 紫苑
- 関連記事
- 「新卒から海外フリーランスの世界へ飛び込む」ドイツ在住wasabiさん―【海外で暮らすフリーランスのリアル】第1回
- 「海外で専門分野のある翻訳者でいられるきっかけとは?」フリー翻訳者Chikaさん―【海外で暮らすフリーランスのリアル】第2回
- 「欧州の有益な情報は日本へ、日本のいいアイデアは世界へ発信」欧州を飛び回るAkiさん―【海外で暮らすフリーランスのリアル】第3回
- 「ダンスさえあれば生きていける」カナダで夢を叶えた鈴木まど佳さん―【海外で暮らすフリーランスのリアル】第4回
- 「パン屋×フリーランスの兼業」ニュージーランドで自分を磨くマーディーさん―【海外で暮らすフリーランスのリアル】第5回