「堂島ロール」が勝訴、商標権侵害について (2018/4/20 企業法務ナビ)
はじめに
関西の人気ロールケーキ「堂島ロール」の商標権を侵害したとして「堂島プレミアム」にロゴマークの使用差止と損害賠償を求めていた訴訟で17日、大阪地裁は請求を認める判決をだしていたことがわかりました。ロゴや商品とその価格の類似が認められたとのこと。今回は商標権侵害について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、洋菓子などの製造販売を行う「モンシェール」(大阪市)は2007年に「堂島ロール」を商標登録しロールケーキの販売を展開しておりました。堂島ロールは卵風味の生地で生クリームを包んだロールケーキで1日1万本以上売れる人気商品とのことです。
一方の「堂島プレミアム」(大阪市)は2012年に設立され「プレミアムロール」の名称で同様のロールケーキを販売しておりました。なお商標登録については堂島ロールとの誤認のおそれから却下されているとのことです。モンシェール側は堂島プレミアム側にロゴマークの差止と1億円の損害賠償を求め提訴しておりました。
商標と商標権
商標とは「人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」で「業として」「使用するもの」とされております(商標法2条1項)。商品やサービスに付される目印と言えます。
商標権は登録により発生し、登録の日から10年間存続します(19条1項)。この期間は更新することができます(同2項)。商標権者は自己の商標権を侵害され、または侵害されるおそれがある場合にはその差止や損害の賠償を求めることができます(36条)。その際賠償額について推定規定も置かれ、類似商品の販売数に侵害が無ければ得ていた利益を乗じた額を損害額とすることができます(38条)。
商標権侵害とその判断
商標権の侵害とは、指定商品または指定役務に類似する商品であって、その商品や包装に登録商標に類似する商標を付して使用するといった場合を言います(37条)。そして商標の類似性については、取引において対比されるそれぞれの商標が商品に使用された際、商品の出所混同を生じる程紛らわしい場合を言うとされております(最判昭和43年2月27日)。
そしてその類否は基本的には商標の外観、呼称、観念の3つの要素を判断します。そして商品・役務が類似であることを前提に平均的な需要者を基準として取引の実情も考慮して判断していくことになります。
商標類否の裁判例
商標の類似性が認められた裁判例としては「橘正宗」と「橘焼酎」、「制糖」と「日糖協 制糖茶」、「SCIENCE DIET」と「SUNACE DIET」、「夢二」と「竹久夢二」などが挙げられます。また微妙な例として「大森林」と「大林森」があります。これはいずれも養毛剤ですが、一審二審は通常養毛剤を購入する男性はマークや商品名をよく確認するため混同しないとして否定しました。
一方最高裁はいずれも「ふさふさと生い茂る樹木のイメージ」であり本人だけでなく家族が購入することも有りうるとして取引の実情を考慮し類似性を認めました(最判平成4年9月22日)。
コメント
本件で「堂島ロール」はロールケーキでその指定商品・役務は「洋菓子及びパン」となっております。堂島プレミアムが販売する「堂島プレミアムロール」も同じロールケーキで商品・役務は同一と言えます。大阪地裁は堂島プレミアムロールのロゴは堂島ロールの高品質版という印象を消費者に与え、混同を生じさせるものであり、消費者が混同することをもくろんでいたことさえうかがえるとして差止と販売利益分3426万円の支払いを命じました。商品・役務も同一で価格も同等であることから平均的な消費者は混同すると判断されたものと考えられます。
このように商標の類似性は外観や呼称だけでなく取引の実情なども踏まえてかなり微妙な判断を要するものです。しかし基本的には消費者の立場から見て混同し得るかどうかにつきると言えます。自社製品のロゴや外観が他社製品と似ている場合には以上のことを踏まえて類似していると判断されるか否かを慎重に見極めることが重要と言えるでしょう。
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