日本のジェンダー格差を広げる思い込みという名の“無意識の偏見” (2018/3/13 瓦版)
国際女性デーにマインドセット・チェンジをテーマにセミナー
日本はなぜ、いまだ女性活躍後進国なのか…。世界経済フォーラム「グローバル・ジェンダーギャップ報告書2017」では日本の男女格差は世界144か国中114位。世界に大きく後れを取っている。国際女性デー(3月8日)に都内で開催された「第2回HeForSheセミナー」。そこに登壇した人々のメッセージや知見には、自分らしく生き、働くヒントが凝縮され、集まった636人の聴衆の心を響かせた。
基調講演では、七大陸世界最高峰に日本人最年少で登頂した南谷真鈴氏がスピーチ。10代、女性という周囲のネガティブな反応を意に介することなく、自力でのスポンサー集めからトレーニングプラン立案など、次々と常識を覆しながら大偉業を達成した体験を語った。
「『絶対にやり遂げる!』。そうした情熱と行動力があればかなわない夢はないんです」。一つ一つの言葉に魂を込めるように語る南谷氏の講演に多くの聴衆は聞き入り、うなずいた。まさに、セミナー全体のテーマ「マインドセットは自分で決める~あなたはどんな生き方・働き方を選びますか~」にふさわしい内容で、イベントは幕を開けた。
以降は対談形式で3つのセッションが行われた。最初は「Gender & Age」を冠し、日本のおじさんへの偏見について、対談が繰り広げられた。自治体首長初の育休宣言を行った成澤廣修文京区長は、そのきっかけについて「44歳でようやく授かったこどもに精いっぱいの愛情を注ぎ、妻の育児をサポートをしてあげたかった」と明かした。そこへ、もともと問題意識をもっていた男性職員の育休に一石を投じる意味で、あえて「育休」という名目で休むことを発表したという。
女性の活躍を愛にあふれるリーダーシップでサポートするpeople first代表取締役の八木洋介氏は、30代半ばまでは、典型的な非協力的亭主だったことを告白。ところが、共働きで同じように時間を過ごすのに、なぜ妻は家事をし、自分はしないのか、とハタと気づき、以降は積極的に家事の手伝いをしていることを明かした。2人に共通するのは、純粋に心の声に従ったということだ。そうしたこには、世間体やバイアスがブレーキをかけがちだが、それが道理に合わないことは明白。ちょっとした気づきをいかに大切にするかが重要ということを教えてくる説得力にあふれるセッションだった。
続く対談では、未経験で漁業の世界に飛び込んだGHIBLI代表の坪内知佳氏、古い体質やしがらみの多い行政の中で、横断型組織「よんなな会」を結成した総務省の脇雅昭氏が登壇。いかにして古い慣習やルールを乗り越えたかを語った。坪内氏は、地元漁師の説得に2年もの歳月をかけたことを明かし、全く違うビジネスモデルで躍進するまでを振り返った。脇氏は、小さなことから取り組むことを訴え、変化にナーバスな「行政」をきしみなく動かしたプロセスを熱く語った。
3つ目の対談では、ドラッカー経営大学院准教授のジェレミー・ハンター氏、IMD北東アジア代表の高津尚志氏が登場。アカデミックな視点から、リーダーのマインドセット・チェンジやジェンダー論をレクチャーし、思い込みや偏見があることを自覚し、それに気づくことの重要性を説いた。
基調講演から3つの対談を通じ、共通していたのは誰にでも思い込みや偏見はあるということ。問題は、それを各自がどう自分の中で受け止め、クリアし、はねのけて行動につなげるか。古い体質やルール、社会の目…。例えそうした圧を感じても、その価値を決めるのはあくまでも自分自身。そうした強い意志があれば、生き方も働き方も自らの手で切り拓けるということだ。その意味で、日本のジェンダー格差が一向に上がらないのは、まだまだ自分を押し出しづらい空気が社会全体に充満し、自分を押し殺している人が少なくないということかもしれない。
「HeForShe」は、UN Womanによるジェンダー平等のための連帯ムーブメント。男性を含む世界中全ての人がジェンダー平等実現のために参加し、変革の主体となれるよう、体系的なアプローチとそのためのプラットフォームを提供。その活動を通じ、家庭・教育・企業・政治が変わることで人々の意識や行動が変わり、2020年にはジェンダー平等に関する議論の必要がなくなることを目指している。今回は、PwC Japan グループ、文京区、ユニリーバ・ジャパン、UN Woman日本事務所の共催で行われた。
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