中国進出・越境ECのプロが語る、中国越境EC・インバウンド成功の極意 ~シュリンクする日本市場とともに沈まないために今取り組むべきこと~ (2018/3/6 nomad journal)
日本市場での成長に限界を感じ、多くの企業が国境を越えて新たな顧客を獲得しようとしています。中でも、注目されているのが「爆買い」の国、中国。しかし、一時期の爆買いブームも去りインバウンド需要に陰りが見えている今、中国越境EC・インバウンドで成功している企業は非常に少ないのが現状です。
シュリンクする日本市場とともに沈まないために、どのように中国市場を攻略すればいいのでしょうか。中国進出・越境ECのプロである辻雄多郎氏に、中国越境EC・インバウンド成功の極意を伺いました。
なぜ今、中国越境EC・インバウンドなのか?
「爆買い」という言葉に象徴されるように、2014年頃に盛り上がったインバウンド需要。化粧品業界など、中国人観光客による爆買いの恩恵を受けた企業も多かったのではないでしょうか。しかし、最近では爆買いのブームも去り、インバウンド需要に陰りが見えています。観光庁の訪日外国人消費動向調査(2017年速報)によれば、2017年の中国人訪日客1人あたりの旅行消費総額は、前年比0.5%減の23万382円です。爆買い全盛期とも言える2015年に比べると20%近く減少しています。
とはいえ国内市場のパイが減少していく反面、中国市場自体は現在も成長し続けており、魅力的なターゲットであることは間違いありません。シュリンクする日本市場とともに沈まないためにも、中国越境EC・インバウンド需要を今勝ち取っておくことは企業にとって有効な戦略と言えるでしょう。
しかし、現在のところ中国越境EC・インバウンドで成功している企業は非常に限られています。さらに言えば、成功している一握りの企業も「たまたま」ある商品が当たったのであって、勝ちパターンを体得しているわけではありません。日本の商品だから売れるという時代は終わりました。例えば化粧品業界では、欧米や韓国のメーカーが中国市場でシェアを確立してきています。成功するためには、中国市場の正しい理解と積極的な仕掛けが必要です。
中国越境EC・インバウンドはこんな企業にお薦め
中国越境EC・インバウンドは、特に下記のような方々にお薦めです。
- 化粧品、コスメが基幹事業である
- ドラッグストアやバラエティーショップで一定の成果が出ているが、伸び悩みを感じている
- 爆買いブームの恩恵を受けたものの、ブームの終焉で在庫を抱えている
- 中国市場を次の成長戦略の重要なターゲットに置いているが、何から手をつけてよいかわからない
中国越境EC・インバウンドは魅力的ですが、日本で売れた商品や日本のやり方に固執すると失敗する可能性が高いのも事実。また、現地の代理店に言われるがまま投資をして、結果的に費用が高額になってしまったという話もよく聞きます。低コスト・低リスクで結果を出していくことが重要です。
中国進出・越境ECのプロが語る、中国越境EC・インバウンド成功の極意 ~意図的に爆買いを起こす~
中国越境EC・インバウンドで成功するためには、押さえるべきステップがあります。最初のステップとして、まずはインバウンドから始めることがポイントです。もちろん、数年前の爆買いブームの時とは違い、何もしなくても売れる状況ではありません。戦略的にマーケティングを行い意図的にインバウンド需要、つまり爆買いを起こすというわけです。
「ブランド力がないからインバウンドは無理」と最初から諦めている方も多いですが、そのような場合でも方法はあります。ひとつが「ローカル化」です。商品開発の段階から中国市場を見据えて、現地で受け入れられる商品を開発するのです。他にも爆買いを起こすコツはいろいろありますので、中国インバウンドに精通したプロの力を借りるのも有効でしょう。
もう少しお話しすると、インバウンドを飛ばして越境ECから始める場合は注意するべきことがいくつかあります。よくあるのが価格設定の失敗です。日本製だからといって2倍や3倍の価格で売れるわけではありません。また出店先によって投資額も大きく変わりますので、慎重に選定する必要があります。そういった意味でも、インバウンドでまずは実績を作ることをお薦めしています。インバウンドが成功すれば越境ECや現地でのオフライン展開など、その先の可能性は大きく広がります。中長期的に越境ECを成功させるためにも、まずはインバウンドで爆買いを起こすというところからトライしてみてはいかがでしょうか。
記事制作/谷口 梨花
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