【新しい働き方はどのように生まれた?・海外編】第12回:職場の励まし言葉は「働き過ぎないで!」  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップ    >   記事    >   【新しい働き方はどのように生まれた?・海外編】第12回:職場の励まし言葉は「働き過ぎないで!」

【新しい働き方はどのように生まれた?・海外編】第12回:職場の励まし言葉は「働き過ぎないで!」 (2017/12/1 nomad journal

日本では、職場に限らず学校でも社会でも人を励ますときの言葉はたいてい「頑張って」ですが、オーストラリアの職場では、「Don’t work too hard(働き過ぎないで)」という言葉が良く使われます。

この一言だけでも働き方に対する考え方が日本とはずいぶん違っているのがわかると思います。今回は、オーストラリア人の働き方の考え方について書いてみたいと思います。

働くママ

なぜ「働き過ぎないで!」なのか?

今の職場に就職してから、仕事で少し残業などしていると、先に帰る人からいつも言われた言葉が「働き過ぎないで」でした。その度に「働き過ぎない??私はここに働くためにやってきていて、この仕事は今日中に終わらせなければいけないのに、なぜそんなことを言うんだろう?」と一人思ったものでした。

なぜかすっきりしないものを残す言葉でした。最初は何と答えてよいかわからなかったので、笑ってごまかしましたが、オーストラリア人は、その言葉を言われると「はい、そうしませんよ」と返事していました。

実際日本にも似たような言い方はありますね。「無理しないで」がそうかもしれません。でも言われた方は「無理しないよ」と答えながらどこかで無理しちゃうんですよね。ところがオーストラリアでは本当に無理しないのです。本当に働き過ぎないのです。

このことがわかったのは、就職してからしばらくしてからでしたが、残業する度に「また残業?もう家に帰った方がいいよ」とか「そんなに働くべきじゃないよ」とか、とにかくうるさく言われました。でもその言葉の響きのなかに、思いやってくれるような暖かさがあったんですね。つまり働き過ぎることへの罪悪視、もっと言えば「無理してまで働くべきではない」という意味合いがありました。

年次有給休暇はしっかり取る

例えば、オーストラリアの年次有給休暇は日本と同じで年に20日間ですが、日本では法律で決められている年休なのに同じ職場の人に迷惑がかかるからと言って取らないことが多いと思います。

けれどもオーストラリアでは、取らなければずっと蓄積されていくので、結局は取らざるをえないか、もしくは辞めるときに対価の額を払ってもらうかのどちらかになります。普通の人は年内でほとんど使い切ります。年休を取るのは、旅行や休暇に行くときが一番多いですが、その他にも妻や夫の誕生日だとか、子供の学校のコンサートだとか家族のために取ることがほとんどです。

一つの職場で人が抜けると、他の人がサポートするようにしているので、それほど支障をきたしません。ただ、仕事のテンポが日本と比べるとずっとゆっくりなのでできることなのかもしれません。確かに、日本では仕事の量とスピードが桁違いですね。そのような状態で誰かが抜けたら支障をきたすのは当たり前かも知れません。でも、でもですよ、そんなにがんばって働かなくてはいけない必要性って何なのでしょうか。

無駄の多い日本式働き方

長時間働くことに関して、駒崎弘樹氏はその著書「働き方改革」の中で次のように言っています。

「こんなにがんばって長時間労働をしているのに、日本の時間当たりの生産性は主要先進7か国中なんと最下位である。のんびりしてそうなイタリアや華やかに遊んでそうなフランスなんかより下なのである。うかばれない。これが例え女性が働いて労働人口減少が緩やかになったとしても諸外国には勝てなくなるだろう理由だ。むかしはそれでも、長い時間一生懸命働いて安いものを大量に作ればそれなりに発展していける時代であったが、中国やその他の振興国の勃興により、そうした工業経済では完全にお株を奪われた。日本がこれから生き残るには質の高い付加価値とイノベーションによって生き残るしかない。残念なことに長く働くことと知的生産性は関係がないのだ。」

長時間労働とも結びつくことですが、日系企業で長年働いてきて感じることは、日本人の働き方の中には無駄が多いということです。会議の多さ、作成する報告書や書類の多さ、挨拶の多さ、無意味に現場にアテンドすることの多さと、ほとんどが形式に縛られたものです。

ひいては飲み会や会食など就業時間外での付き合いも多く、いったいいつになったら自分や自分の家族のための時間が持てるのだろうと悲しい気持ちになってしまいます。

和洋折衷で理想の働き方実現!

ただ、日本人の仕事への真剣さの中で素晴らしいと思うものがあります。それは後工程を含む「顧客」への徹底したサービス精神です。これだけは、日本が世界に誇れるものではないかと思います。少なくともオーストラリアでは、日本で経験するような素晴らしいサービスに出会うことはあまりありません。不愛想な受付嬢(ただし男性の受付係は愛想がいい)、「フォローします」と言っておきながら返ってこない返事、ホテルなどの予約抜け等枚挙にいとまがありません。

こうしたことも初めの頃は怒りの対象になっていたのですが、次第に慣れていき、自分としては日本の良い習慣を維持しながらも、オーストラリア文化の一部として受け止めるようになりました。

ただ、グローバル化が始まったころから、オーストラリア人の働き方も少しずつ変わり、サービス面もずいぶん改善されてきたように見えます。今思うことは、無駄な仕事を省き、オーストラリア人がしているように年休もしっかり取り、それでいて日本人の高いサービス精神を持って仕事に臨む、こんな働き方ができれば理想的だと思います。そして、それは決して実現不可能ではないはずです。

記事制作/setsukotruong

提供:nomad journal

関連記事
第11回:人口増加政策、増えた移民の就職事情
第1回:オーストラリアの始まり、原住民と流刑地
2017年働き方総括&2018年展望(前編)
働き方改革で注目、テレワークの必要性とガイドライン
ハイブリッドワーカーとは?新しい働き方の意味と特徴を解説