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カワウソ10匹密輸容疑で拘束、ワシントン条約について (2017/11/8 企業法務ナビ

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はじめに

先月31日、タイ警察は生きたカワウソ10匹を許可なく国外に持ち出そうとした疑いで日本の女子大生を拘束しました。違法であるとの認識はなかったとのことです。一定の動植物について輸出入が制限される場合があります。今回はワシントン条約等による規制について見ていきます。

カワウソ

事案の概要

報道などによりますと、日本人の女子大生(21)はタイの首都バンコクの空港から出国する際、カワウソ10匹を密輸しようとしたとしてタイ警察当局に拘束されました。

同女性はタイ国内の市場で1匹1000バーツ、日本円で約3000円で10匹購入したとのことです。その際店員は日本に持ち帰っても問題がない旨述べていたとし、国外持ち出しが違法であるとの認識はなかったとしています。ドンムアン空港で成田に向かう際にチェックインカウンターでスーツケース内に生き物がいることがわかり発覚し、拘束されました。

ワシントン条約による規制

ワシントン条約とは「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」の通称で、野生動植物を絶滅の可能性に応じて分類し、批准国に取引規制を課すものです。1972年にストックホルムで開催された「国連人間環境会議」で野生動植物の保護を図る条約の採択が勧告されたことを受け、1973年にワシントンで採択され、日本は1980年に批准しました。

同条約では絶滅のおそれのある動植物の種が附属書ⅠからⅢまでに分類され、それぞれに国際取引における規制を設けております。それを受け日本では輸出貿易管理令と輸入貿易管理令が制定され、経済産業省と農林水産省の所管とされております。

規制の分類

(1)附属書I
ワシントン条約で絶滅のおそれのある種で取引による影響を受けている、または受けるおそれがあるとして附属書Ⅰに分類されているものとして、オランウータン、スローロリス、ゴリラ、アジアアロワナ、ジャイアントパンダ、木香、ガビアルモドキ、ウミガメなどが定められております。この分類では学術研究(大学での研究や動物園での展示等)を目的とした取引以外は不可となり、輸出国・輸入国双方の許可書が必要となります。

(2)附属書II
現在は必ずしも絶滅のおそれはないが、取引を規制しなければ絶滅のおそれがあるとして附属書Ⅱに分類されているものとして、クマ、タカ、オウム、ライオン、ピラルク、サンゴ、サボテン、ラン、トウダイグサなどが挙げられております。これらは商業目的の取引も可能となりますが、輸出国政府の発行する輸出許可書等が必要となります。

(3)附属書III
世界的に見れば絶滅のおそれは少ないが、その地域内では絶滅のおそれがあり、他の締約国・地域の協力を要するものが附属書Ⅲに分類されます。セイウチ(カナダ)、ワニガメ(米国)、タイリクイタチ(インド)、サンゴ(中国)などが挙げられております。これらも商業目的での取引は可能ですが、輸出国政府の発行する輸出許可書か原産地証明書等が必要となります。

日本における承認等

上記の分類で日本政府の許可が必要となる場合は経済産業大臣の承認が必要となります(外為法48条3項、52条、輸出貿易管理令2条、輸入貿易管理令4条1項3号)。これらの規制に違反して輸出入を行った場合は5年以下の懲役、1000万円以下の罰金またはこれらの併科となります(外為法69条の7第1項4号、5号)。

コメント

本件で女性がタイから持ち出そうとしていたカワウソにはいくつか種類があり、どの種類のカワウソだったのかは明らかではありませんが、たとえばビロードカワウソであれば附属書II類に分類され、ユーラシアカワウソであれば附属書I類に分類されることになります。いずれの場合もタイ国政府の承認・許可が必要となります。

ワシントン条約の規制対象となる動植物は生体そのものだけでなく、剥製や一部、粉末等に加工したものやDNAといったものであっても対象となります。それ故にそれらが原材料として使用されている物であっても許可等が必要となってきます。

カワウソのように一般的には規制されていることがあまり知られていない動植物だけでなく、ゾウやクマといった動物でもその体の一部が使用されている物を輸出入する際にも規制されることになります。特に注意が必要なものとして象牙やワニ革が挙げられます。象牙の場合は日本では「種の保存法」という法律でも規制されております。またワニ革も養殖ワニではない野生のワニのものであれば規制の対象となります。

これらの製品等を輸出入する際には経産省に問い合わせるなど規制対象であるかどうかを慎重に確かめることが重要と言えるでしょう

提供:企業法務ナビ

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