官民の連携で「サイクリストの聖地」に!広島県尾道市の「稼げるまちづくり」とは (2017/9/15 nezas)
継続的な地域活性化には、国内だけでなく海外の観光客の誘致が必要不可欠です。しかしこれを実現するのは簡単なことではなく、国や県、市という自治体と民間企業が連携することが重要です。
このようなハードルを乗り越えてユニークな取組みを発信し、外国人観光客を年々増やし続けているのが、広島県にある尾道市です。2017年6月26日に開催された日経地方創生フォーラム「官民連携と地域連携で実現する地方創生」では、尾道市長の平谷祐宏氏がその経緯と背景にある思いを語りました。
「稼げるまち」を目指す尾道市の取組み
尾道市ではこれまで、「稼ぐ力」と「地域の価値向上」をテーマにまちづくりを行ってきました。近年は尾道市と今治市、そして上島町という2市1町が中心になり、これらの地域をつなぐ瀬戸内しまなみ海道(以下、しまなみ海道)にサイクリングロードという新たな価値を付加する取組みを実施しています。
1999年に完成したしまなみ海道は、当初一般の道路として通行や物流などに使用されていました。今回の取組みは6つの島が橋でつながっているというこの海道の特徴に注目して、関係自治体や国の支援を得ながら進めてきたものです。
もっとも大切なのは、さまざまな自治体がともに一つのものを作り上げていくということです。なかでも民間事業者の力を借りられるかということは重要な要素です。その点しまなみ海道のプロジェクトでは、海道から見える景観に魅力を感じた台湾の自転車メーカー「GIANT」や、世界最大の自転車部品メーカーである「シマノ」の協力を得ることができました。
この美しい景観を世界に発信するためにヘリコプターを使った大がかりな撮影を行ったことで、しまなみ海道はサイクリストの聖地としてさらに加速していくことになりました。
一方で、尾道水道は昔から良好な港町としても機能しています。この地帯には肥料の倉庫がありましたが、あまり使われないまま放置されていました。市ではこれを有効活用するために、総額約12億円の資金をかけ、民間事業者の力を借りて自転車を持って入れるサイクリスト専用ホテルやショップなどの複合施設に改装しました。
2017年で完成してから3年が経ちますが、レジカウンターだけで23万人の方が訪れ、実際には50万人以上が訪問しています。このうち約3割が海外からで、海外発信の効果も徐々にあらわれてきているとのことです。
美しい景観や古くからの街並みを海外に発信
これまでもサイクリング大会を実施し、オーストラリアや台湾など、海外からも多数の参加者がありました。富士山をバックにサイクリングできるということが、海外の参加者からみた魅力の一つになっているようです。
2018年には「世界の尾道」のアピール戦略の一環として、尾道市側からもスタートする国際サイクリング大会を予定しています。大会に向けてJR西日本の全額負担で尾道駅の建て替えを行い、宿泊施設やサイクリスト向けショップの設置や、建物もアトリエワンというユニットに設計監修を担当してもらい、魅力的な外観を目指しています。これを契機として、尾道市での宿泊や消費を促し「稼げる町」実現の足がかりにしたいと考えています。
また地域の価値を向上させるために、民間企業やNPO法人「尾道空き家再生プロジェクト」などの協力を得て、古くからの商店街をリノベーションして簡易宿泊施設(ゲストハウス)をつくる取組みも展開しています。年間5,000人ほどが利用していて、このうち約10%は海外からのお客さまです。
このほか尾道市にある島の一つである百島では、廃校になった学校の跡地を現代アートの力で復活させる「ART BASE MOMOSHIMA」という取組みも行っています。
過去10年で外国人観光客が10倍に増加
尾道市は、このような取組みが評価され、2013年度に文化芸術創造都市部門で文化庁長官表彰を受けました。これが2015年からの2年連続の日本遺産認定につながり、2007年に約2万人だった外国人観光客が2017年までに約10倍に増えたのです。
2020年度には尾道市役所が親水(海に近いこと)をメリットとして、尾道水道の魅力を最大限に生かした建物が完成する予定です。単に行政の建物というだけでなく、市民や観光客が訪れたいと思うような建物づくりを目指しています。安定・安心をキーワードに「稼げる市役所」を目指し、今後も新しい街づくりに取り組んでいくようです。
国と地方自治体、そして民間事業者がいい形で連携して成果を生み出している尾道市の取組みは、これからの地方創生のモデルケースになるのではないでしょうか。
提供:nezas
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