大阪で違法ヤミ金業者摘発、ファクタリングとは (2017/9/1 企業法務ナビ)
はじめに
日経新聞電子版は30日、ファクタリング業者を装ったヤミ金融が横行しており、大阪府警は1月以降14人を貸金業法違反で逮捕していた旨報じました。近年中小企業を中心に需要が高まっているファクタリング業。今回はファクタリングとその規制について見ていきます。
事件の概要
報道などによりますと、昨年9月頃、関西の加工会社の社長は自社の売掛金の回収が進まず運転資金の資金繰りに窮しておりました。そんな折東京都内のファクタリング業者を名乗る者から勧誘を受け約320万円の売掛代金債権を譲渡したとのことです。しかしその業者は債権の代金は支払わずに同社に20万円を交付し、同社は後日利息を含め31万円を返済しました。また譲渡された売掛債権は業者の求めにより結局同社に戻ることになったとのことです。大阪府警はこの一連のやり取りをファクタリングに偽装した違法な貸し付け行為であるとして同グループのメンバーを貸金業法違反の疑いで逮捕していたとされます。
ファクタリングとは
ファクタリング(factoring)とは他人の売掛債権を買取り、その債権の回収を行う金融サービス業を言います。通常、企業が取引相手業者に商品を提供しても、その代金は即座に支払われず、1ヶ月程度遅れることになります。こういった債権を売掛債権などと呼びます。零細な中小企業ではこの1ヶ月間のタイムラグにより運転資金に窮することも稀ではありません。これまでは手形などで支払われた売掛債権を銀行などで手形割引を行ない資金繰りを行っておりました。昨今こういった売掛債権を買取り、自ら債権回収を行う業者が増加してまいりました。資金繰りに窮する多くの中小企業のニーズにも適合していると言われております。
法律等による規制
貸金業を営むためには内閣総理大臣または都道府県知事の登録を受けなければなりません(貸金業法3条1項)。そして貸金業とは「金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介」を行として行うものを言います(同2条1項柱書)。そしてそれらの金銭の貸付け行為には利息制限法や出資法が適用となります。登録を受けずに貸金業の運営、貸金業の表示や広告、貸付けの勧誘を行うことは禁止されており(11条1項、2項)、違反した場合には10年以下の懲役、3000万円以下の罰金またはこれらの併科という厳しい罰則が規定されております(47条2号)。それではファクタリング業はここに言う貸金業に該当するのでしょうか、判例から見ていきます。
判例の考え方
手形割引に関する事例で、手形割引は実質的に手形の満期までの利息を天引きした消費貸借契約に該当し、利息制限法を超える部分については手形金支払の義務はないと争われた訴訟で最高裁は「本件約束手形の授受はいわゆる・・・手形の売買たる実質を有し・・・売買代金の授受にあたるものであって・・・利息制限法の適用はない」としました(最判昭和48年4月12日)。つまり手形割引はあくまで手形債権の売買であり消費貸借ではないということです。この考え方からすれば売掛債権を買取るファクタリング業も貸金業ではないということになり、貸金業法や利息制限法などは適用されないと考えられております。金融庁もファクタリング業の法的性質については明らかにしておりません。つまり現段階ではファクタリング業に関しては法的規制は存在していないということになります。
コメント
本件で摘発された業者は売掛債権を買取る名目で20万円を交付し、31万円の返還後、売掛債権はまた譲渡し直しました。債権の売買に仮装した20万円の貸付けであったということになります。このような手口で債権自体は安く買い、手数料などを上乗せし高く売り戻すという手法を使って、実質法外な利息を取っている悪質な偽装ヤミ金業者が横行していると言われております。適法なファクタリング業は現代の中小企業の資金繰りのニーズに合っており、高い需要が見込まれているとされております。違法ヤミ金業者と適正なファクタリング業者を見分けるポイントは、適式な書面を作成・交付するか、銀行口座振込を使用するかなどが挙げられております。違法業者は書面を残すことを嫌い、また記録が残る口座振替を使わずに現金手渡しをすると言われております。ファクタリング業に関する法整備が進むまではこれらの点に留意して違法なヤミ金業者を利用しないよう注意することが重要と言えるでしょう。
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