2016年には手術やDPCの点数が増加、急性期に手厚い改定であったか―厚労省・社会医療統計 (2017/7/26 メディ・ウォッチ)
2016年6月審査分の医科レセプトを集計・分析すると、入院で手術やDPCの点数が1件当たり・1日当たりともに伸びており、2016年度の前回診療報酬は急性期病院において収入増をもたらしている―。
このような状況が、25日に厚生労働省が発表した2016年の「社会医療診療行為別統計」の結果から明らかになりました。もっとも急性期病院では医薬品や医療材料の使用量も多く、収入増が「経営好転」には直結していないようです。
入院レセ、手術やDPC、初・再診などの点数が大きく増加
社会医療診療行為別統計(社会医療統計)は、毎年6月審査分のレセプトをもとに、医療行為や傷病の状況を調べるもので、厚労省のナショナルデータベース(NDB)に蓄積されている全レセプトを集計対象にしています。従前は抽出調査でしたが、2015年から全レセプトを対象とするとともに名称(従前は社会医療診療行為別調査)が変更されました。
まず、医科の入院について見てみると、1件当たりの請求点数は5万965.6点で、前年に比べて727.8点・1.4%増加しています。
内訳を見ると、▼初・再診(前年比17.1%増)▼医学管理等(同8.4%増)▼手術(同6.1%増)▼精神科専門療法(同5.5%増)▼DPC(同5.5%増)―などでは増加していますが、▼注射(同16.0%減)▼画像診断(同9.1%減)▼投薬(同9.0%減)▼検査(同7.0%減)▼入院料等(同2.3%減)―などでは減少しています。
手術やDPCの増加が全体の請求点数増に結びついており、2016年度の前回診療報酬改定によって、より「急性期度の高い病院」において診療報酬収入が増加していることが伺えます。
次に、入院の1日当たり請求点数を見ると、2015年は3276.8点で、前年に比べて86.2点・2.7%の増加となりました。
内訳を見ると、1件当たり点数と同様に、▼初・再診(同18.6%増)▼医学管理等(同9.7%増)▼手術(同7.4%増)▼精神科専門療法(同6.8%増)▼DPC(同6.8%増)―などの増加、▼注射(同15.0%減)▼画像診断(同8.0%減)▼投薬(同7.8%減)―などの減少が目立ちます。
1日当たり日数は15.55日で、前年に比べて0.2日短縮しました。在院日数を短縮させる一方で、1日当たり単価を上げ、1件当たり点数の増加に結びつけています。
入院外、放射線治療や手術、リハビリの点数が増加
次に医科入院外を見てみると、1件当たり点数は1319.8点で、前年に比べて10.2点・0.8%の微増となりました。内訳を見ると、▼放射線治療(同14.1%増)▼注射(同7.8%増)▼手術(同5.1%増)▼リハビリテーション(同4.4%増)―など増加項目が目立ちます。減少しているのは、▼麻酔(同3.3%減)▼投薬(同2.4%減)▼初・再診(同1.7%減)▼処置(同1.0%減)―です。また2016年度改定で大きな体系見直しが行われた在宅医療は前年に比べて0.6%の微増となりました。
また1日当たり点数は844.6点で、前年に比べて17.2点・2.1%の増加となっています。全体として前年に比べて請求点数は増加しており、とくに▼放射線治療(同15.5%増)▼注射(同9.2%増)▼手術(同6.5%増)▼リハビリテーション(同5.8%増)▼病理診断(同5.4%増)―の増加が目立ちます。
また1件当たり日数は、1.56日で、前年に比べて0.02減とほぼ横ばいの状況です。
特定機能病院、入院・入院外ともに請求点数が大幅に増加
次に病院の入院点数(医科)を見てみましょう。病院全体の1件当たり点数は5万2825.8点(同1.3%増)、1日当たり点数は3319.1点(同2.6%増)となりました。
病院の種類別に見ると、やはり特定機能病院が最も高く、1件当たり7万934.6点(同1.6%増)・1日当たり6602.8点(同4.9%増)です。次いで一般病院の1件当たり5万4199.5点(同1.7%増)・1日当たり4581.7点(同3.3%減)となりました。また療養病床を有する病院では、1件当たり5万642.6点(同0.4%増)・1日当たり2386.8点(同1.1%増)、精神科病院では、1件当たり3万7837.2点(同1.0%増)・1日当たり1328.3点(同1.3%増)という状況で、「2016年度は急性期病院に手厚い改定が行われた」ことが伺えます。
また、病院の入院外点数(医科)は、全体では、1件当たり2182.6点(同4.2%増)、1日当たり1425.0点(同4.6%増)と大きく伸びています。種類別に見ると、特定機能病院は1件当たり3243.0点(同7.8%増)・1日当たり2378.4点2218.8点(同7.2%増)、一般病院は1件当たり2258.4点同5.1%増)・1日当たり1526.1点(同5.3%増)などという状況です。
DPC病院の手術点数、DPC以外に比べて1件当たり6倍、1日当たり10倍
さらに、DPCとDPC以外で比較してみると、DPCの1件当たり点数は6万940.1点(同1.2%増)ですが、DPC以外は4万3389.9点(同0.3%増)で、前年調査に比べて格差が拡大した格好です。
1日当たり点数は、DPCでは5641.1点(同2.1%増)、DPC以外では2264.4点(同0.2%増)となりました。
手術点数に着目すると、DPCでは、DPC以外に比べて、1件当たりで6.2倍(同5.0倍)、1日当たりでは9.8倍(同8.8倍)となっており、前年以上に、急性期病院の多くがDPCに参加していることを確認できます。
なお、DPCの1件あたり日数は10.80日で、前年に比べて0.1日短縮していますが、DPC以外は19.16日(同0.03日増)で、ここからもDPCの急性期度合いが高いことがわかります。
後期高齢者、一般に比べて請求点数の伸びは小さい
また0-74歳の一般医療と、75歳以上の後期高齢者医療を比較してみましょう。1件当たり点数は、一般の入院が4万9069.9点(同1.7%増)、入院外が1196.0点(同1.3%増)ですが、後期の入院は5万2974.9点(同1.2%増)、入院外は1669.4点(同0.9%減)となりました。
1日当たり点数は、一般の入院が3765.4点(同3.3%増)、入院外が813.1点(同2.4%増)ですが、後期の入院は2906.5点2838.1点(同2.4%増)、入院外は916.5点(同1.3%増)という状況です。
一般のほうが後期高齢者に比べて請求点数の伸びが大きく、「高齢者医療費の適正化」に向けた取り組みが現れてきているようにも見えます。
さらに1件当たり日数を見ると、一般は入院13.03日(同0.22日減)・外来1.47日(同0.02日減)なのに対し、後期は入院18.23日(同0.22日減)・外来1.82日(同0.04日減)と、後期高齢者で長くなっています。
ここから、入院については「後期高齢者は1日当たりの医療費は少ないが、入院期間が長い」ために医療費が高くなる、入院外については「後期高齢者は1回当たり医療費が高く、受診頻度も高い」ために医療費が高くなっている、ことが伺えます。高齢者医療費の増加が国家財政や医療保険者の財政を圧迫していると指摘されて久しく、「後期高齢者の入院期間短縮や、外来受診の適正化」などがさらに求められてきそうです。
なお、入院の請求点数の内訳を、一般と後期で比較すると、後期では「手術やDPCの割合が小さい」「入院料等の割合が大きい」ことが分かります。改めて疾病構造や医療内容が一般と後期で相当程度異なっている状況が確認できます。
最後に後発医薬品の使用状況を見ると、薬剤点数に占める後発品の点数割合は▼総数14.5%(同0.6ポイント増)▼入院10.7%(同0.1ポイント増)▼院内処方(入院外・投薬)13.5%(同0.4ポイント減)▼院外処方14.9%(同0.9ポイント増)―となっています。
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