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2015年の入院医療、在院日数短縮しながら単価を上げる方向にシフト―厚労省・社会医療統計 (2016/6/16 メディ・ウォッチ

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 2015年6月審査分の医科入院1件当たり請求点数は5万237.8点で、前年に比べて0.9%増加したが、同月の医科入院外1件当たり請求点数は1309.6点で、前年に比べて1.2%減少した。また入院の内訳を見ると、入院料等は前年に比べて3.1%増加しているものの、手術(前年比3.3%減)や麻酔(同5.5%減)、放射線治療(同5.6%減)、検査(同5.3%減)、画像診断(同5.4%減)などの請求点数が減少している―。

 このような状況が、15日に厚生労働省が発表した2015年の「社会医療診療行為別統計」の結果から明らかになりました。

 また、一般(0-74歳)では「手術やDPCの割合が多い」のに対し、後期高齢者(75歳以上)では「入院料等の割合が多い」という具合に、年齢によって請求内容が異なっています。

入院レセ、入院料やDPCといったシェアの大きな部分が増加

 社会医療診療行為別統計(社会医療統計)は、毎年6月審査分のレセプトをもとに、医療行為や傷病の状況を調べるもので、厚労省のナショナルデータベース(NDB)に蓄積されている全レセプトを集計対象にしています。従前は抽出調査でしたが、今回から全レセプトを対象とするとともに名称の変更(従前は社会医療診療行為別調査)が行われています。

 まず、医科の入院について見てみると、1件当たりの請求点数は5万237.8点で、前年に比べて429.8点・0.9%増加しています。

 内訳を見ると、▽入院料等(前年比3.1%増)▽DPC(同2.1%増)▽初・再診(同1.9%増)▽注射(同1.7%増)▽在宅医療(同1.2%増)―では増加していますが、▽放射線治療(同5.6%減)▽麻酔(同5.5%減)▽画像診断(同5.4%減)▽検査(同5.3%減)▽手術(前年比3.3%減)―などでは減少が見られます。

 入院医療費において大きなシェアを占める「入院料等」(38.1%のシェア)や「DPC」(29.6%)の増加が、全体の請求点数増に結びついています。

図1

入院レセの内訳を見ると、入院料等やDPCなど、大きなシェアを占める診療報酬項目がある

 次に、入院の1日当たり請求点数を見ると、2015年は3190.6点で、前年に比べて7.3点・0.2%の微増となっています。

 内訳を見ると、1件当たり点数と同様に、入院料等(同2.5%増)やDPC(同1.5%増)などは増加していますが、病理診断(同6.7%減)や放射線治療(同6.2%減)、麻酔(同6.1%減)、画像診断(同6.0%減)で減少が目立ちます。

 なお、1日当たり日数は15.75日で、前年に比べて0.1日短縮しています。在院日数が減少する一方で、1日当たり単価を上げることで、1件当たり点数が増加している格好です。

入院外の1件当たり請求点数、1件当たり日数の短縮により減少

 医科入院外に目を移してみましょう。

 1件当たり点数は1309.6点で、前年に比べて15.5点・1.2%減少しました。内訳を見ると、全般的に減少しており、特に▽麻酔(同5,5%減)▽病理診断(同3.6%減)▽医学管理等(同2.6%減)▽投薬(同2.4%減)―などで減少幅が少し大きくなっています。一方、在宅医療では前年に比べて3.9%の増加となっています。

 一方、1日当たり点数は827.4点で、前年に比べて比13.6点・1.7%の増加とりました。全体として前年に比べて請求点数は増加しており、特に在宅医療(同6.8%増)や注射(同3.2%増)、リハビリテーション(同3.0%)の伸びが大きくなっています。

 また1件当たり日数は、1.58日で、前年に比べて0.05日短縮しています。

 1日当たり点数が増加(高密度化)する一方で、1件当たり日数が短縮したことが、1件当たり点数の減少を招いていると言えます。なお入院外では、入院と異なり「大きなシェアを占める」項目がありません。

図2

外来レセは、入院レセと異なり、大きなシェアを占める診療報酬項目はない

特定機能病院、入院・入院外ともに請求点数が他に比べて大幅に伸びる

 次に病院の入院点数(医科)を見ると、1件当たり点数は5万2148.7点(前年比0.9%増)、1日当たり点数は3233.6点(同と0.1%増)なっています。

 病院の種類別に見ると、特定機能病院が最も高く、1件当たり6万9833.6点(同2.1%増)・1日当たり6293.4点(同1.3%増)です。次いで一般病院の1件当たり5万3319.7点(同0.6%増)・1日当たり4436点(同0.3%減)となりました。また療養病床を有する病院では、1件当たり5万426点(同1.1%増)・1日当たり2360.4点(同0.5%増)、精神科病院では、1件当たり3万7455.2点(同0.7%増)・1日当たり1311.6点(同0.8%増)となっています。

 また、病院の入院外点数(医科)は、全体では、1件当たり2095.4点(同0.8%増)、1日当たり1362.9点(同3.6%増)点です。種類別に見ると、特定機能病院は1件当たり3007.6点(同5.1%増)・1日当たり2218.8点(同7.6%増)、一般病院は1件当たり2148点(同0.8%増)・1日当たり1448.7点(同3.4%増)などとなっています。

 入院・入院外のいずれでも、特定機能病院における請求点数の伸びが大きくなっていることが分かります。

DPCレセの手術点数、DPC以外レセに比べて1件当たり5倍、1日当たり8.8倍

 さらに、DPCとDPC以外で比較してみると、DPCの1件当たり点数は6万226.7点(同0.8%増)ですが、DPC以外は4万3255.3点(1.0%増)で、前年調査に比べて、ほんのわずか差が縮小しました。

 1日当たり点数は、DPCでは5523.7点(同0.3%減)、DPC以外では2261点(同0.7%増)となりました。

 手術点数に着目すると、DPCでは、DPC以外に比べて、1件当たりで5.0倍(同4.8倍)、1日当たりでは8.8倍(同8.5倍)となっており、より多くの急性期病院がDPCに参加していることが改めて確認できます。

図3

DPCとDPC以外と比べると、特に手術点数に大きな差があることが分かる。DPCでは手術をより多く実施しており、急性期度合いが高いことがレセからも明確になっている

 なお、DPCの1件あたり日数は10.90日で、前年に比べて0.12日伸びています。一方、DPC以外は19.13日(同0.07日増)で、この点からもDPCの急性期度合いが高いことがわかります。

後期高齢者、1日当たり単価は小さいが、入院期間や受診頻度が高いために高医療費

 次に0-74歳の一般医療と、75歳以上の後期高齢者医療を比較してみます。

 1件当たり点数は、一般の入院が4万8271.4点(同0.5%増)、入院外が1180.9点(同1.3%減)なのに対して、後期の入院は5万2368.5点(同1.1%増)、入院外は1685.1点(同1.3%減)となっています。

 1日当たり点数は、一般の入院が3643.4点(同0.4%増)、入院外が794.4点(同1.2%増)ですが、後期の入院は2838.1点(同0.4%増)、入院外は904.3点(同2.6%増)という状況です。

 さらに1件当たり日数を見ると、一般は入院13.25日・外来1.49日なのに対し、後期は入院18.45日・外来1.86日と、後期高齢者で長くなっています。

 ここから、入院については「後期高齢者は1日当たりの医療費は少ないが、入院期間が長い」、入院外については「後期高齢者は1回当たり医療費が高く、受診頻度も高い」ために1件当たりの点数が後期高齢者で高くなっていることが分かります。

 なお、入院の請求点数の内訳を、一般と後期で比較すると、後期では「手術やDPCの割合が小さい」「入院料等の割合が大きい」ことが分かり、疾病構造や医療内容が一般と後期で相当程度異なっている状況も明確になっています。

図4

一般(0-74歳)と後期高齢者(75歳以上)を比べると、入院・外来ともに違いがあることが分かる。こうした点に着目した医療費適正化が必要である

 最後に後発医薬品の使用状況を見ると、薬剤点数に占める後発品の点数割合は、▽総数13.9%(同1.4ポイント増)▽入院10.6%(同1.3ポイント増)▽院内処方(入院外・投薬)13.9%(同1.7ポイント増)▽院外処方14.0%(同1.3ポイント増)―となっています。

提供:メディ・ウォッチ

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