ビールで気分も地域も良くなるパブがポートランドにあった (2017/6/28 SOCIAL DESIGN NEWS)
世界を変えるために、ビールを飲む。そんなメッセージを掲げるのはポートランドにあるパブ「Oregon Public House」
商品を注文すると、その利益すべてを地域のNPO団体に寄付する前代未聞のパブだ。
資金もないコネもない中、創業者が考えたのはビール好きならたまらない「ある仕組み」だった。
ビールで世界を変えるキッカケ
創業者は元牧師のライアン。教会を中心としたコミュニティを作ろうと2009年にポートランドに移住した。そして、友人たちとガレージでビール片手にどんなことができるか話していたそう。
調べた結果、ポートランドにはすでにたくさんのNPO団体が存在していること、多くの団体は「資金集め」に苦労していること、地元のブルワリーが数多くあることが分かった。
そこで彼らが考えたのは、資金集めをサポートする「パブ」だった。
金なし、土地なし、コネもない状態から始まった
ライアンと友人たちはまず、このパブの計画を周囲の人たちに話してまわった。2010年になんとか建物の目処が立った時、地元の有力者サラに出会う。そこから地元の人が訪れ、協力してくれるようになった。
一方で資金は集まっておらず、悩みのタネであった。
そこで彼らは「Founders」という仕組みを開発。3段階に分けられ、$500で月に1杯、$1500で週に1杯、$2500で毎日1杯を無料で飲める権利(しかも一生涯!)を販売。加えて、出資者には、自分の名前が入ったオリジナルグラスと専用のIDカード、店内の壁に名前が刻まれる特典付き。
こうして資金を集ることに成功したのだ。
寄付先の自由に選択できる
店に来たお客はフードやドリンクの注文とともに、寄付先を自由に選ぶことができる。その利益はすべて、地元のNPO団体に寄付される。
寄付先は、虐待などから幼児を守る幼稚園「VOA’S FAMILY RELIEF NURSERY」、十分な食事が取れない人々へコミュニティガーデンを管理し、食料を提供する「OUTGROWING HUNGER」、本が買えないような貧困層の子供達に本を届ける「CHILDREN’S BOOK BANK」などがある。
現在(2017年6月3日)までの寄付総額は2013年のオープンから$136,627(約1500万ほど)になる。
彼らのビジョンは明確だ。「地域で食べ、恩返しのために飲み、そして世界を変える」もしかしたらこれが未来の飲食店の1つの姿なのかもしれない。
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ライター&キュレーター
小檜山 諒 フリーランスライター&キュレーター
世界中の面白いアイディアを集めたブログを運営中。「問いが変われば、答えも変わる」を信じて、アイディア発想など研究しています。ハッとさせられるようなアイディアが大好物。アイディアデザインコンサルタント。モットーは「LESS IS MORE」
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