増えるシニア層アルバイト 人材不足の救世主となるか? (2017/5/19 JIJICO)
一億総活躍社会へ!?
今、コンビニエンスストアのアルバイトなどで、シニア層の活躍が目立ってきています。少し前までは、アルバイトと言えば高校生や大学生などの若者の働き方でした。
一方、現役をリタイアしたシニア層の仕事と言えば、シルバー人材センターなどから紹介を受けて簡単な仕事を短期間行うというイメージがあり、実際、両者は住み分けられていた感があります。しかし、最近ではシニア専門のアルバイト情報サイトが登場するなど、高齢者のアルバイトは社会的に認知されつつあるようです。
人口減少社会へ突入した日本では、安倍内閣主導のもと「一億総活躍社会の実現」が目指されており、女性だけではなくシニア層の活躍も期待されていることから、歓迎すべき傾向だと言えるかもしれません。
シニア層アルバイトのメリット
今、労働市場は人手不足に陥っています。これは、正規労働だけでなくアルバイトを含めた非正規労働でも起きている現象です。
企業が人材を確保することが難しい時代になっているのです。企業としては、働く意欲があるシニア世代をアルバイトとして雇用することで、不足する人材を確保することができます。また、シニア層がこれまでの仕事を経て培った経験を、アルバイトの仕事に活かしてもらえることもメリットと言えるでしょう。
一方、アルバイトするシニア層にも、もちろん利点があります。
今、老後の生活の頼みの綱である年金は、現役世代の減少など様々な理由で少しずつ減額されています。夫婦二人で標準的な生活を維持するためには月額約27万円が必要だと言われていますが、平成27年に厚生労働省が発表した年金受給額モデルでは月額約22万円となっており、年金だけでは足りない計算になります(これはあくまでもモデル受給額ですので、現役時代の働き方によっては、もっと生活費が不足する方もおられます)。アルバイトをして収入を得ることで、現状の生活水準を維持することができます。
また、アルバイトをすることで社会参加意識が生まれ、孤立や引きこもりを回避することもできます。さらに、働くことで必然的に頭や身体を使うことになり、健康の維持や運動機能低下を緩やかにすることもできるでしょう。今、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間である「健康寿命」は女性が74歳、男性が71歳と言われており、リタイア後も元気な高齢者は増えています。
今後もシニア層アルバイトは増えていくものと考えられます。
シニア層アルバイトの注意すべきこと
シニア層アルバイトにはメリットが多いですが、注意すべき点もあります。雇用する企業側においては、労務管理をきちんと行って健康に配慮すること、若者より判断力や運動機能が低下していることを踏まえて任せるべき仕事を判断すること、労働災害が起こらないように職場環境を整えたりすることなどが大切です。もちろん、高齢者に関する労働社会保険関係の法令をよく理解し順守することも必要です。
働く側であるシニア層も、現役時代の地位は役に立たないといった意識を持つこと、自身の健康管理を十分に行うことなど、アルバイトをするにあたって注意すべきことはたくさんあります。
戦後日本の復興を支えてきた世代が、今度はこれまでの「老人」の概念を覆すときがきました。高齢者や若者といった区別なく、働きたい人が働ける柔軟な社会になっていけるか。急激に高齢化が進む日本に世界から注目が集まっています。これからの動向に注目していきましょう。
- 著者プロフィール
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大竹 光明/社会保険労務士
大竹社会保険労務士事務所
平成12年、関西大学社会学部卒業。平成18年に大阪市城東区にて独立開業(平成20年に大阪市中央区に移転)。顧問契約している企業は、大阪を中心に製造業、建設、卸売り、飲食店など多彩で、社員数一名の中小企業から数万人の社員を抱える東証1部上場企業まで幅広い。労働・社会保険の手続き代行、リスク管理型就業規則作成、人事・賃金制度構築支援、労務管理コンサルティングなどを手がける。現在、大阪産業創造館「あきない・えーど」において経営サポーターを務める。
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