働き方改革は地方創生にもつながるのか… (2017/5/16 瓦版)
働き方改革はどこへ向かい、何をもたらすのか
働き方改革と地方創生はなぜ密接に感じるのか
働き方改革は、地方創生とセットにされることが少なくない。正確には、地方創生が働き方改革に便乗しているといった方がいいのかもしれない。政府の働き方改革でもテーマには入っていないが、なぜ、そうなるのか。その理由は、いうまでもなく、地方の人材不足が深刻だからだ。
働き方改革はこれまでの常識に捉われず、抜本的に業務への取り組み方を変革し、現状に見合った生産性を実現するためのアクションだ。企業は、そうした潮流に柔軟に対応し、個人は時間や場所に捉われることなく、各々のライフスタイルに合わせながら、自身のパフォーマンスを最適化することが理想形とされる。
ということは、地方の学校を卒業し、職を求めて首都圏に来た優秀人材でも、地元へUターンし、今まで通り働く選択肢が出てくるということだ。その方がより力を発揮できるのならば、ではあるが。実際、そうした働き方で、地元で親の面倒を見ながら首都圏に居たときと同様の待遇でリモートで仕事を続けているワーカーも増大している。
働き方改革は、ともすれば、効率化に目がいきがちだ。だが、単に作業の質を高めることだけがその目的ではない。発想の転換といえる常識からの解放が実現しなければ、改革どころか単なる業務改善レベルで終わりかねない。いい仕事にありつくには首都圏に行くしかないーー。こうした労働人材の流れの“常識”を破壊する役割も、働き方改革は当然、担っている。
地方が魅力的になれば、働き方改革とジャストフィットする
働き方改革の名のもと、首都圏の優秀層を、地方へ導くアクションが活発だ。時間と場所に捉われない働き方を実現するクラウドソーシング運営事業者も積極的に地方への人材流入を支援している。企業に属さず、より融通の利くフリーランスがまずは、地方への“移住”で成果を出せば、企業もより取り組みやすくなるだろう。
まだまだ試行錯誤段階で、地方への逆流人材は少数派だ。企業にとって、こうした動きに乗るための壁は決して低くない。ワーカーにとっても、現状のまま、地方へ移住するには大きな覚悟が必要となる。業務レベルの改革は必要性もあり、取り組みやすさもある。だが、現実に地方で働くとなると、住まいの問題や風土の違いなど、単なる物理的問題を超えた障害が多数ある。
そもそも、地方が衰退したのは、そこに魅力的な企業や仕事がなかったからだ。働き方改革により、働く側の意識が変わり、テクノロジーの進化で物理的障害をクリアできたとしても、根本の問題がクリアされなければ、ホンモノの地方創生は難しい。
首都圏より地方で働く方が魅力的。それくらいに状況が整備されなければ、常識となるまでの道のりは険しいだろう。クリアすべき壁は非常に高い。そもそも人材不足で手が回らないのが地方の現状だとすれば、しばらくは働き方改革に便乗するしかないが、さらに激化する人口減少の加速に耐えられるかは心許ないというほかない…。(続く)
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