AIは働き方改革の“準主役”で“触媒”なり (2017/5/3 瓦版)
働き方改革はどこへ向かい、何をもたらすのか
人工知能がもたらす働き方改革への影響とは
働き方改革の流れの中で、注目度が高まったのが人工知能、AIだ。難しいとされた囲碁で人間に勝利したことで俄然、その脅威がクローズアップされ、人間の知能を超越するのは時間の問題、つまり、人間に取って代わり、仕事を奪う脅威というインパクトを与えた。
テクノロジーの進化は、これまでにも仕事を人間からシフトさせ、労働現場を一変させてきた。自販機はもちろん、自動改札、工業用ロボット…。それまで人がやっていた仕事を無尽蔵のスタミナと単調作業も厭わない“タフネスさ”で平然とこなしてきた。
AIは、こうした作業よりはるか上をいく作業もこなす。実際に、翻訳や経理、自動運転も実用化がカウントダウンに入るなど、人工知能による人の仕事の“侵略”はジワジワと進んでいる。チカラ作業やルーティンワークはともかく、知能労働まで脅かされるとなると、AIが人間から仕事を奪う脅威か、といった議論が盛んに行われるのも無理はないのかもしれない…。
だが、現実には、仕事を奪うというのは、“性悪説”に過ぎる。使うのはあくまでも人間。人口が減少フェーズにあるいま、人工知能で代替できるところはする。不要なところはしない。資本主義の原理が入り込むにしても、労働の現場で過剰なまでにAIが活用される倫理観は、人間にはないハズだ。
そうだとすれば、これまで同様、AIは社会を豊かにするために活用されることになる。自動翻訳で通訳が不要になっても、文学的な翻訳にはやはり人間が必要になる。自動運転が実現しても、乗客の気分を良くする気の利くドライバーの需要は失われないだろう。苦痛を伴ったり、退屈な業務のAIへのシフトは加速するかもしれないが、同時に人間の創造力が必要とされる仕事は増大する。
AI=仕事を奪う脅威論はナンセンス
その意味で、AIが仕事を奪う脅威と考えることがナンセンスであることは明白だ。むしろ、人の内面的な部分での働き方改革を促進する歓迎すべき進化、と捉えるのが自然といえるだろう。
フィンテックやエドテック、HRテックなど、テック化によるインパクトはすさまじい。だが、仕事を奪われるわけではない。あくまでも社会を便利にし、人がやるには苦痛な業務を代替したり、物理的困難をクリアにしてくれるに過ぎない。
ただし、ヒトもAIに負けじと進化する努力を続ける必要はある。便利さに胡坐をかいていては、衰退あるのみだ。AIのおかげで生まれる時間をいかに活用するかが、そのカギを握るだろう。そう考えると、AIは脅威ではなく、人が働くことの意味を変え得るパワーを持つ、ソフト面での変革の起爆剤と考えるのがスマートなのかもしれない。(続く)
- 関連記事
- 働き方改革の難関、イクメンと介護
- 女性の起業 背中を押す、100万円を助成
- 性別にとらわれない、多様な生き方が可能な社会へ
- AIが変える業務のかたち
- 正社員になることがマイノリティになる日も近い…