日本が失ったものを取り戻す100年を―「玄米」と「メリハリ」で健康をつくる  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

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日本が失ったものを取り戻す100年を―「玄米」と「メリハリ」で健康をつくる (2017/4/10 70seeds

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肥満や病気など、現代人はさまざまな健康問題を抱えています。その原因は日々の食生活にあるかもしれません。「食からすべてが変わる」と語るのは、株式会社結わえる代表取締役の荻野芳隆さん。

荻野さんは経営コンサルタントを経て、2009年に創業。世の中の食生活を変えることを目標とし、古来の日本食をベースに新しい玄米を取り入れた無理のないライフスタイルを提案しています。

なぜ食を変えるのに、玄米という手段を選んだのか。食が人々、そして社会にどんな影響を及ぼすのか。荻野さんにお話を伺ってきました。

まずいものは続かない。「おいしい玄米」にこだわる理由

荻野芳隆さん3

――結わえるではどんなことに取り組んでいるのでしょうか。

目的は、“世の中の食生活を変える”ことです。戦後、どの国も効率重視の同じようなライフスタイルに変わりましたよね。伝統的な文化や食生活、工芸も衰退してしまいました。その根本は何かと考えたとき、食生活の変化が非常に大きいのではと思いました。“食生活を変える”のをミッションにすることで、流れが変わっていくんじゃないかと考えています。

――そこだけ聞くと、なんだか難しそうな…。

我々の提案しているライフスタイルは、「おいしくないものを無理して食べる」とか「何かを我慢しなきゃいけない」とかいうものではありません。ふだんは玄米とお味噌汁と季節の野菜を食べて、飲み食いするときは楽しくやろうと。それこそ焼肉でもいいし、スイーツ食べ放題でもいいし、こってりラーメンでもいい。我慢ではなく、日常の土台をしっかり作った上で時々楽しむんです。メリハリのあるスタイルで、治療というよりは予防です。

――白米ではなく玄米を採り入れるのは?

はい。玄米ご飯は栄養価が高く、その栄養を削ったものが白米です。ビタミン・ミネラル・食物繊維を削っているのに、あんまり野菜を摂れないから不健康になっていく。そんな悪循環なので、玄米を食べるだけでかなり効率よく栄養がとれるようになります。すごく有益ですが、一方で玄米はとにかく固くてパサパサ。いくらいいものでも、まずいと続けられません。そこで開発したのが「寝かせ玄米」。圧力鍋でモチモチに炊き上げ、3~4日熟成させることで甘味やうま味が増すんです。

株式会社結わえる4

――寝かせ玄米があれば「食生活を無理なく変える」が実現できる、という考えなんですね。

はい、この食生活を続けていくために、店舗事業とEC事業があります。藏前にある「結わえる本店」では、昼は定食屋、夜は居酒屋をしています。国産・無添加のいいものを売ろうと、生活雑貨や工芸品も置いています。これを凝縮してカジュアルに展開した店舗が「いろは」。おむすびや弁当定食、カレーなどが食べられて、物販コーナーもあります。EC事業でも、国産・無添加のいいものを販売しています。その中でも主力商品は寝かせ玄米のレトルトパック。これは自社工場で製造していまして、月に10万食以上売れるヒット商品です。EC事業の大きな柱ですね。

――「続ける」ということがひとつのキーワードなんですね。

健康的なライフスタイルで何が一番大事かというと、継続できるかどうかなんですよ。よく言うんですが、正しいことを伝えることが正しいわけじゃない。できることを伝えることが正しいと思うんです。100点満点じゃなくて、70点80点でいい。一時的にダイエットしてやせても意味がなくて、一生太らず健康を継続できるかどうかなんです。あまり細かいことを気にするなと言いたいですね。

みんな、情報を取り入れすぎなんですよ。何百年もの間、日本人の食事の6~7割はごはん、あとはお味噌汁に漬物や季節の野菜料理があって、たまにとれる魚や肉がある。これで十分なのに、今は炭水化物カットだのグルテンフリーだのと言って、食生活が根本からズレているんです。

「売るための情報」にコントロールされない生き方を

――以前は荻野さんも食生活が乱れていたそうですが、そこから変わることに苦労はなかったのでしょうか。

肉もラーメンも好き、お酒も毎日飲む……そういう人ができるのは何かと考えてたどり着いた方法ですから、あんまり苦とは感じないですね。さすがに365日3食フルで好きに食べて健康というのは無理なので、締めるところは締める感じです。「夜にこれを食べるからお昼はこれくらいにしておこう」とか、「朝まで飲んだから朝・昼ごはんは抜いておこう」とか、そういうことで体が軽くなるんですよ。気持ちも楽ですね。

――単に健康だけではなく、セルフコントロールの喜びもありそうですね。

それはありますね。今、2キロやせるのにみんなどれだけ苦労しているのかなと思います。でもメカニズムを理解していれば、増やすことも減らすこともできますし、一生続ければ体重は変わらないんです。もちろん年を取ると筋力が落ちたり、体重が増えたりもあると思いますけど、コントロールすることはできるんです。

荻野芳隆さん4

それとイコールで、健康をコントロールすることもできると思います。風邪をひきにくくなるとか、寝起きが良くなるとか、そういったこともイコールで起きています。肌の調子なんかもコントロールできるわけで、美容の観点から見ても主体的に生きられる。それって安心できる生き方じゃないかなと思うんですよね。

――自信もつきそうです。

「なんで太ったかわからない」「なんで風邪ひいたかわからない」ではなく、「こうして太ったから、こうしたら痩せられる」「こうだったからよくない、次はこうしよう」と考えられれば、意外と治せるんですよ。だから風邪をひいても、薬を飲まずに治せると思います。病院に行くものだ、薬を飲むものだと、売るための情報にコントロールされがちですが、冷静に考えるといらないものだらけなんですよね。

――文化的な面でも、食生活による変化は大きいと思います。

食は生活そのものであり文化ですので、ちゃんとした食生活をしようとすると、ちゃんとした食材と調味料を選ぼう、という感覚になってきます。いい料理を作ったらいいお皿を使おうと思いますし。いいお茶碗を使うと、いい汁椀やいい箸がほしくなりますよね。いいものだと大事に使うので、モノを大切にする考えも身につきます。3000円かかったって割らなければ100年くらい持ちますし、割っちゃったらしょうがないですが、それはそれで金継ぎを楽しんだりもできますし。100均の器だったら金継ぎしようとは思わないですよね。

――はい。

そうなると、ライフスタイルもちゃんとしようと考えるようになります。いい器がそろったのに机がプラスチックの安物だったら合わないから、木のテーブルを買ったりとか、壁も漆喰にしたりとか。そうして、日本の文化を取り上げようとか、ちゃんとしたものが揃うと気持ちいいなと広がってくると、おもしろいと思います。タオルや歯磨きでも、いいものをセレクトしようと考えるんですよね。

株式会社結わえる6

――だから、「食からすべてが始まる」のですね。

そうですね。食から入れば、非常にそういった階段を上りやすい。例えば、食生活の話が全くないのに「3000円のお茶碗買いましょう」と言われても、買えないですよね。いきなり10万円で無垢の木の机を買ったりはしないんです。やっぱりいい食材を使うからこそですし、食は一番身近なので、入りやすいと思います。

日本が「大嫌い」から「いいな」へ。一生をかけて実現したいビジョンができるまで

――そのような考えに至るには、どんな道のりが?

中高生のとき、日本が大嫌いでアメリカに憧れていました。高校2年生のときに1か月アメリカを旅して、そこからいろんな国を見たくなって世界中を回ったんですね。でも帰ってきたとき、「日本っていいな」って思ったんですよ。飯はうまいし、安全で自然も食材も豊か。そして今度は日本中を見て回ったんですが、地方のほうがいいものがあって優れているのに、貧乏で自信もない。何も生み出していない東京が儲かっていて、羨ましがられている……これって違うな、と。

――まさに今社会課題として言われているテーマですね。

この状況をなんとかしたいと思い、新卒で経営コンサルとして就職しました。仕事の中で食についていろいろ知り、食事療法の先生にも出会いました。ガンや高血圧、アトピーなんかが食事を変えると治ったりするんですよ。東洋医学や食事療法も勉強して、今がいかにまずい状況かがわかりました。また、なぜ病気になるのか、どうすれば治るのかということも理解できました。ただ、食事療法はかなりストイックなので、果たして一般の人にそこまで必要なのかと。

株式会社結わえる

そこで考えて考えて行き着いたのが「寝かせ玄米」と、食事によって体をコントロールできる「メリハリ玄米生活」というライフスタイル。この2つを確立させれば世の中を変えられると思い、起業しました。

――軌道に乗るまでに不安はなかったんですか?

現代の食生活は本当にひどいもので、健康問題も伝統継承の問題もあります。創業時は、そういう危機意識を持っている人はそんなに多くなく、むしろ玄米というだけで特殊な考え方だと思われていました。しかし確信があったので、不安というよりは「時間がかかるな」という感じでしたね。前職のとき、セミナーなどで「玄米食べたことありますか?」と聞くと、3割くらいが手を挙げて、日常的に食べる人はゼロでした。でも今同じ質問をすると、9割くらいは食べたことがあって、日常的に食べる人も1~2割いるんですね。かなり世の中が変わったんです。

――ビジョンに対する確信も変わらないですか?

創業のときから変わっていないです。世の食生活を変えないと未来がない、逆に変えていけばいろんな問題が解決するだろうと。生涯かけてやろうという想いは今もあります。ただ、やっぱりお金は厳しかったです。最初は蔵前の小さい飲食店とネット通販しかなかったんですよ。今でこそ蔵前はおしゃれな街ですが、昔はフラッとくるお客さんなんていなかったです。人件費も貯金を崩して払っていましたね。「これがあと2~3か月続いたらやばい」みたいな状況は何度かありました。改善を重ねつつギリギリなんとかなってきた感じですね。

ホンモノを選ぶ人が増えてきた。食をきっかけに広がる未来

――世の中に変化が起きているのは、どんな要因があると思いますか?

特にひとつコレ、というのはないと思いますが、30代から健康問題を意識せざるを得ないくらい世の中がひどい状況になっている。今、35歳くらいでお腹が出ていない人を探す方が難しいですよね。10年前くらいは「太ることと病気って関係あるの?」なんてレベルでしたが、だんだん正しい知識が広まってきています。美容分野でも、腸の健康は肌にいいとか言われるようになっています。いろんなジャンルで、食とのつながりが当たり前になってきているんです。

株式会社結わえる5

――確かに、世の中の情報を見てもただ「痩せる」というだけではなくて、そこに正しい知識がつき始めている感覚はあります。

この根本は健康問題だと思います。10年前と比べて健康番組は増えましたし、サプリや健康食品の売り上げも伸び、雑誌やテレビの特集も増えている。雪だるまと同じで、最初は大変ですが転がり始めたらすごく簡単になると思うんです。今はまさに転がり始めているころで、規模も加速度的に大きくなっていきます。まだカオスな部分もありますが、もう山は越えて次の時代に入り始めていると思いますね。“ホンモノ”を嗜好する人は増えているので、大きなうねりになってもうひと押ししてくれると考えています。

――この先、どんな展開を目指しているのでしょうか。

基本の食事から快楽食、お酒でも、日本の伝統製法でできたいいものを集めています。そこにプラス、テーブルウェアや生活雑貨、器や茶碗も増やしていますし、テーブルやいすにも広がっていくでしょう。僕は靴やジーパン、シャツも意識的に日本製を使っているんですが、「日本のいいものを衣食住全体に」というコンセプトで、扱うものを増やしていきたいです。

――それも店舗とネット両方で?

そうですね。「いろは」は首都圏で20店舗くらい、全国の主要都市に1か所ずつ。あとはパリ、ロサンゼルス、ニューヨーク。アジアでは台湾かシンガポール、上海で1か所と、場所を増やしていきたいです。ECはECで、取り扱うものを広げたいですし。

株式会社結わえる3

――具体的にはどのような目標があるんですか?

外食チェーンみたいに100店舗を目指すとかではなく、今から5~10年の間で40店舗くらいを完成させていこうと考えています。「いろは」は年に3~4店舗増えているので、5年くらいで首都圏と全国に広がりますし、海外も含めて全部で40店舗くらいだと思うんですよね。ここまでが店舗事業とEC事業のファーストステージです。

――適切な規模とはいいつつ、十分広く行きわたる規模ですね。その次は?

セカンドステージとしては、直接健康にアプローチできるよう、企業向けのヘルスケアソリューションサービスを考えています。健康問題は、もう経営の課題になっているんですよね。このトータルソリューションは難しいので、なかなかできるところがないんです。今あるサービスでは「健康指導します」「会社で雑穀米出します」「アプリ導入します」とか、その程度ですね。管理・指導ができてノウハウも提供できて、実際に結果を出すために食も提供できなきゃいけない、そんなトータルなことが必要です。

――トータルソリューションというのは、実際にどんなことを?

考えているのは、お昼ご飯に寝かせ玄米のレトルトパックやお弁当、「いろは」で提供しているおむすびを出したり、メリハリ玄米生活を社員に研修して導入したり、というところです。あとはアプリで主体的に健康管理ができるようにして、ECサイトで少し安く買えるようになったり、役員クラスにはうちの管理栄養士がマンツーマンで指導したりとか。食・健康のWebメディアを通勤途中に見てもらえたら、情報提供もできます。会員が10万人、20万人になったら健康診断結果をビッグデータで解析して、そこから予防分野・商品開発と、国の基準にすら影響を及ぼすものをやる。数年後にこのステージを実現しようと、準備をしているところです。

株式会社結わえる2

あとはテーマパークの「結わえるヴィレッジ」ですね。伊豆あたりでやる予定ですが、ここに何十年かけて毎年何かができてくるようにしたい。例えば日本の伝統建築で建物を建てて、伝統製法で食べものを作って、そこにいろんな人が遊びに来て、住む人もいて……というように。本当の次世代のライフスタイルが体感できて、日本中・世界中から人が来るような場所を作るのがサードステージですね。

――とても楽しみなビジョンですね。

僕も楽しみです。この100年でたくさん失ってきたと思うんですが、次はそれを取り戻す100年にしたいです。社名にも、「昔に戻ろう」ではなく「今に合う形で」という考えがあるんですよ。戻るのではなく、昔のいいものを今に結びつける。今のいいものは、それはそれで残す。昔と今のいいものを融合して新しいライフスタイルを構築するのは、今しかないと思います。

荻野芳隆さん2

◇        ◇

街にはファーストフード店やコンビニが立ち並びますが、どこかで私たちは安さ・速さ重視の食生活に限界を感じ始めているのかもしれません。とは言え、過去を捨てて明日から新しく生まれ変わろうというのも非現実的な話。

だからこそ、昔のいいものを今に結びつけ、無理なく続けられるライフスタイルをつくりあげる。一人一人が暮らしを見つめなおし、新しい価値観を築くことで、より豊かな生活が叶うのかもしれません。

提供:70seeds

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