介護施設などでの高齢者虐待は大幅増、施設長などへの研修や職員のストレス対策を―厚労省 (2017/3/24 メディ・ウォッチ)
高齢者の虐待は依然として増加傾向にあり、とくに介護施設・養護施設の従事者による高齢者虐待が大幅に増加している。高齢者虐待を防止するために、▼虐待の実態把握のさらなる強化▼関係者への研修などによる対応力強化▼高齢者権利擁護等推進事業の活用―に取り組んでほしい―。
厚生労働省は23日に、通知「平成27年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査』の結果及び養介護施設従事者等による高齢者虐待の状況等を踏まえた対応の強化について」を発出し、このように都道府県知事に要請しました。
介護施設などでの高齢者虐待、2015年度は前年度より36%も増加
厚労省が行った2015年度の「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査」から、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)や介護老人保健施設、介護療養型医療施設などにおいて、従事者による高齢者虐待が408件認められ、前年度に比べて108件・36.0%も増加していることなどが明らかになりました。一方、高齢者の世話をしている家族や親族、同居人などによる虐待は、2015年度には1万5976件認められ、前年度に比べて237件・1.5%増加しています。
入所系施設における虐待の内容と、高齢者の認知症の状況や要介護度を見ると、▼重度者では身体的虐待▼自立・軽度者では心理的虐待―が多くなっています。
さらに認知症の程度が重くなるほど、虐待の深刻度も高くなることも分かっています。
潜在している虐待を早期発見するとともに、研修などによる対応力強化を
このように、介護施設・養護施設の従事者による高齢者虐待が大幅に増加している点について、厚労省は「極めて遺憾な事態」と指摘。高齢者虐待の防止に向けて、次のような取り組みを行うよう、都道府県知事に要請しています。
(1)高齢者虐待の実態把握のさらなる強化
(2)関係者等への研修等による対応力の強化
(3)高齢者権利擁護等推進事業の活用
まず(1)は、「潜在している高齢者虐待」の早期発見に取り組むことが求められます。介護施設や自宅などでは、虐待が露見しにくく、また高齢者自身が虐待の事実を訴えにくい状況にあります(認知症高齢者では自身で訴えることが極めて困難であり、そうでなくとも『お世話してもらっている』との意識がある)。
そこで厚労省は、▼市町村や都道府県のホームページや広報誌、暮らしのガイドブックなどを活用した「通報窓口の周知徹底」▼介護施設・養護施設などへの外部の目(地域住民、地域支援事業の介護相談員など)の積極的な導入―を行うよう改めて要請しました。
(2)の対応力の強化に向けては、次のような取り組みを行うよう求めています。
▼介護施設・養護施設の施設長などへ「身体拘束、虐待に関する研修」を行い、施設内で適切な研修の実施、職員へのストレス対策などを促すことで、発生要因の軽減を図る
▼市町村職員へ研修を行い、効果的な事例を横展開するとともに、意見交換の場を設けることで、対応力の底上げを図る
▼介護保険サービスの適切な利用を促進し、家族等への支援を行うとともに、地域住民向けのシンポジウムなどを開催し、理解を深めてもらうことで近隣住民からの通報促進を図る
▼民生委員や地域包括支援センターとの「早期発見・見守りネットワーク」、医療機関、介護施設などとの「保健医療福祉サービス介入支援ネットワーク」、弁護士会や社会福祉士会などとの「関係専門機関介入支援ネットワーク」を構築する(都道府県がアドバイザーを派遣してネットワーク構築を支援することなども有効)
さらに(3)の「高齢者権利擁護等推進事業」については、2017年度からメニューを再構築する(介護事業者向け、市町村職員向け、地域住民向けに柱建てを行うなどし、活用しやすくする)ことを説明。事業のメニューについても、▼施設長など向け研修の「権利擁護推進員研修」に職員のストレス対策など等の項目を追加し拡充▼「市町村職員研修」「ネットワーク構築支援」「リーフレット等の作成」を追加―といった見直しが行われており、厚労省は積極的な活用を期待しています。
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