「学生も市政に関心持って」大学周辺投票率2割以下で最低―五十嵐つくば市長インタビュー (2016/12/5 筑波大学新聞)
つくば市長選(投開票・11月13日)で初当選した筑波大学出身で元つくば市議の五十嵐立青氏(年齢38)=平成13年度国際総合学類卒=が、本紙の単独取材に応じた。筑波大出身者として初の市長となる五十嵐氏は「今後のつくば市政にとって筑波大は欠かせない存在」と明言。筑波大生を市の臨時職員として雇用するなど「筑波大生の声を積極的に市政に反映させる」と話した。また住民票をつくば市に移さない筑波大生の多さにも言及。新入生が入居する際、宿舎に住民登録のための出張窓口を作る考えを示した。
五十嵐氏はまず、今後の市政運営について「世界中で進む少子高齢化の対策に取り組み、つくば市を『世界の明日が見えるまち』にする」と発言。子育て支援などを進めるほか、市内各所に「地域担当部局」を新設し、市民の声を市政に反映させる考えを示した。
また「筑波大は市政のパートナー」とも強調。「筑波大の教員が日常的に市に専門的な意見が言えるようにしたい」と話し、筑波大の教員らと市政のあらゆる分野で連携を強化する方針を示した。筑波大生についても、希望者を市の臨時職員として雇用し、その専門分野に合わせた仕事を行ってもらうほか、「市の(各種)会議への積極的な参加を促したい」とした。
一方で、五十嵐氏は筑波大生の投票率の低さと、住民票をつくば市に移さない学生の多さにも言及。学生宿舎での住民登録のための出張窓口設置の考えを示した。またつくばエクスプレス(TX)に働きかけ、学生割引や、学生が就職活動の時期に使える定期導入を実現したい意向も明かした。
五十嵐氏はつくば市出身。筑波大大学院の人文社会科学研究科に在学中の2004年、つくば市議会議員選挙に初出馬し当選。市内の公道でロボットの走行実験などができる「ロボット特区」の導入などに取り組んできた。2012年の市長選に続き2度目の出馬となった今回の市長選では、昨年8月の住民投票で白紙撤回された、つくば市の総合運動公園計画の問題の解決を最大の公約に掲げていた。
筑波大学の卒業生として、初めてつくば市長に当選した五十嵐立青氏への一問一答は次の通り。
――在学中に取り組んだことは?
学類時代、国際政治や外交、安全保障に興味があり、英国にも留学し「政治に携わりたい」と思うようになった。大学院(人文社会科学研究科)の時には、つくば市の街灯設置問題などを学生が考える団体「つくばガバナンスプロジェクト」を作った。
――市長選に立候補した際、筑波大の反応はどうでしたか。
残念ながら、母校からの応援の声はほぼなかった。筑波大周辺の学生街でも遊説したが、夜に回ったこともあり、ある筑波大生からは「筑波大の出身なら静かに研究させてくれ」とのメールも来た。選挙を通じ筑波大生の反応は薄かった印象だ。
――本紙の調査では、筑波大生は政治、特に地方自治への関心が低いというデータがあります。
(市長選の)投票率は約53%だったが、筑波大生のアパートが多い天久保地区と筑波大がある天王台地区の投票所では約17%で、唯一2割を切っている。筑波大生の市政への関心の低さを実感している。
――筑波大生に市政への関心を持ってもらうための方策をお考えですか? 筑波大生の多くは出身地から住民票をつくば市に移していません。
筑波大生の投票率向上のためには「自分たちがもっと政治に関わる」という意識が必要だ。市政に筑波大生が参画する取り組みを進めるなどし、関心を持って頂ければと考える。筑波大生が住民票を移さないことも問題。原因の一つは、住民票を移せば出身地の成人式の案内が届かなくなる場合が多いからだろう。住民票を移しても、出身地の自治体から成人式の案内が届く仕組みを整えるなどの取り組みが必要だ。
――筑波大生にメッセージをお願いします。
自分が住む街の問題を考え、行動することが政治を考える第一歩。筑波大生はつくば市の大切なパートナー。さまざまな場面でお互いに協力して行きたいと思う。
(筑波大学新聞副編集長・社会学類3年 大西美雨)
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