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住民票 半分の筑波大生移さず、市政に対して当事者意識を (2016/10/31 筑波大学新聞

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 つくば市では11月、18歳選挙初となる市議会・市長のダブル選挙が行われる。だが、この選挙で投票権を持つ筑波大学生は少ない。住民票をつくば市に移しておらず、つくば市での投票権を持たない学生が多いからだ。住民票を移していないこれらの学生は、つくば市に住民票を移すべきだ。生活拠点がつくば市にあり、市の行政サービスを受けているのなら“市民”として責任を持って投票権を行使すべきだと思うからだ。

役所の窓口

役所の窓口(※写真はイメージです)

 本紙は今年5~6月に全新入生と2年生以上の一部学生を対象にアンケート調査(有効回答数1088人)を実施した。その結果、大学入学を機につくば市外から市内へ越してきた学生は全体の約78%だが、うち住民票を移していない学生が約63%に上ることが分かった。

 筑波大の学生数は約1万6000人。それを基に概算すると、このうち約8000人もの学生が、市内に居住していながら投票権を持たないことになる。この数字は、つくば市の全有権者(約17万7000人)の約5%だ。住民票を移さない理由には「手続きが面倒」などの声が聞かれるが、これほど多くの“市民”の民意が投票という形で市政に反映されない状況は異様だ。

 よく考えてほしい。例えば昨年8月、つくば市で「総合運動公園」建設の是非を問う住民投票があった。もしあなたが住民票を移していない場合、どんなに建設を望んだとしても、投票権がないため、その声を結果に反映させられないのだ。

 住民基本台帳法では、一部例外を除いて住民票を今の居住地に移すことが定められている。住民票を移動する場合、原則的には前住所の役所で転出届を提出。引っ越し日から14日以内に転居先の役所へ転出証明書を添えて転入届を提出する。手続きをしない場合、過料5万円以下の罰則が科される。

 住民票を移さない場合、実家でも投票ができなくなる恐れもある。全国の道府県庁所在地と政令市、東京23区の計74自治体を対象にした毎日新聞の調査では、青森、松山、高知、長崎、大分、宮崎、鹿児島の7市が、住民票を移さず市外に下宿する学生の不在者投票を「原則認めない」とした。今夏の参院選では、1年以上居住歴がないとして、実際に不在者投票が認められなかった事例もあった。

 今後、筑波大は住民票の移行案内を入学案内の書類に同封するなどし、住民票を移さない学生に積極的に移動を呼びかけていく必要があるのではないか。また住民票の移行について、筑波大でもフレッシュマンセミナーで学生に情報を与えれば、市の行政に目を向けるきっかけともなる。

 イギリスの政治学者ブライスは「地方自治は民主主義の学校」という言葉を残した。住民は地域の政治に参加し、地域の問題を考えることで、民主主義に必要な素養を身につけられるという意味だ。

 住民票を移すことは、市政への当事者意識を持つことにつながる。若者の政治離れが叫ばれて久しいが、まずは自分たちが住む街の出来事に関心を持つことから始めたい。

(筑波大学新聞副編集長・社会学類3年 大西美雨)

提供:筑波大学新聞 第331号 2016.10.31発行

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