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再び注目 職場での「飲みニケーション」 その効果とは? (2016/12/13 JIJICO

関連ワード : 労働・雇用 

職場において「人」を取り巻くトラブルが増加傾向に

各都道府県労働局や労働基準監督署等に寄せられる総合労働相談件数ですが、いじめ・嫌がらせや不当解雇など、「人」を取り巻く相談が寄せられており、その数は8年連続で年間100万件を超えています。(厚生労働省「平成27年度個別労働紛争解決制度の施行状況」)相談件数増加の原因は様々ですが、職場におけるトラブルを解決するその方法は?と訊ねられたとき、みなさんはどのように考えられるでしょうか。社内意識を変える啓蒙活動や社内研修、ルール作りをすることも大きなポイントです。しかし、それだけで解決するほど制度は万能ではありません。

その根底にある大切な要素を忘れてはなりません。それが「良好な人間関係を築く」ということ。言われてみれば「なんだそんなこと」と感じられるかもしれませんが、目に見えないこの「人間関係」が意外と大きな影響を及ぼします。それでは、良好な人間関係を築くためにはどうすればよいでしょうか。実は最近、この人間関係づくりに役立ちそうな「飲みニケーション」が復活の兆しを見せているのです。

ビール

昔は多かった飲みニケーション 今はどうか?

飲みニケーションとは、「飲む」と「コミュニケーション」の造語。仕事とは離れた場所・空間で、共にお酒を飲むことによりコミュニケーションを図るというもの。「昔は、よく飲みに行っていたけどね、今は少ないなぁ」そう語る諸先輩方はたくさんいらっしゃいます。先輩が「飲みに行くぞ」と言えばそれに従う。そんな価値観が主流だった一昔前。

しかし、徐々に「職場」と「プライベート」の区別をはっきりさせたいという考えが出てきて、先輩から誘われても「私、用事があるので」と断ることが増えてきたと聞きます。果たして、「飲んでいる席」でのコミュニケーションは有効なのでしょうか。

飲み会でしか知り得ない同僚の情報が貴重になることも

営業部にいるAさん(男性・35歳)。普段からよく単純なミスをするのですが、今日はいつもに増して集中力がありません。携帯電話を眺めてフーッとため息をついたり……。さて、もしあなたにこんな後輩がいたらどのように感じますか?「もっと集中して仕事しろ」と思う方もいらっしゃるでしょうね。なぜAさんが集中力を切らして携帯電話を眺めていたのか。実は先ほど、出産予定日が近づいていた奥さんから「陣痛が始まった」とメールが来たのです。もしその事情を知っていたとしたら、上司は「病院に行っていいよ」と言うかもしれません。しかし、社内で誰も知らなかったとしたら……。「仕事に集中していないAさん」として認識されるかもしれませんね。

このように、普段職場において顔を合わせていても、意外と知らないことがたくさんあります。家族構成は?誕生日は?学生時代のクラブ活動は?何に興味があるの?等々…。そんないわば「仕事に関係の無いたわいもない話」を、急に職場で話し始めるのは少し勇気がいります。そのきっかけを上手に生むのが、「飲み会」や「食事会」の時間ではないでしょうか。

飲みニケーションを成功させるために注意したいたった1つのこと

飲みニケーションをうまく機能させるコツがあります。それは「気負わない」こと。時間、頻度、参加の意思、スタイル…「こうあるべき」ということに捉われず、「楽しい場を作ろう」と考えることが一番です。例えばスタイル。1次会では食事をして2次会ではスナックに行って…という定番コースがあるかもしれませんが、それは「ある特定の人」が楽しいコースかもしれません。しかし、人によっては、1次会は参加したいが家庭の事情等で2次会には参加したくない人もいます。そのような時に無理強いをしてはいけません。その時の雰囲気で2次会に全員で行くのか、希望者で行くのかなど変えればよいのです。

また、開催時間も工夫出来ます。例えば、夜の飲み会ばかりではなく、たまにはランチ会にしてみると、主婦のパートタイマーの方も参加しやすい会になりますよね。これぞ「食べニケーション」です。人は勝手なものです。「楽しい場」にはつい行きたくなってしまうのです。そんな「楽しい場」「行きたくなる場」を気負わず作ってみることで、参加するメンバーも気軽に参加することができます。

時代と共に形を変えながら存続する飲みニケーション

飲みニケーションは何のために実施するの?と言えば、「仲良くなりたい」「楽しみたい(幸せになりたい)」という人間本来の欲求を満たすため、そして社内の結(ゆい)を育むためではないでしょうか。「プライベート優先だと言って飲み会が全く開催されない」のも「毎日のように遅い時間まで引きずり回される(す)」のも、どちらも偏りすぎているなと感じます。時代と共に形を変えながら、人の心にフィットする頻度・時間・内容を考えてみてはいかがでしょうか。

ベテラン社員から声をかけることもあれば、入社2~3年目の社員数名が協力して声を上げるのもいいかもしれませんね。最近頻度が多いなと感じれば、自然と回数は減るでしょうし、最近開催されていないなと感じれば、自然と声が上がるはずです。なぜなら、「仲良くなりたい」「楽しみたい(幸せになりたい)」と言う気持ちは人間本来の欲求なのですから。その心の声に素直に行動すればよいのです。

提供:JIJICO

著者プロフィール
神野 沙樹/社会保険労務士

神野 沙樹/社会保険労務士
株式会社Niesul(KES社労士事務所併設)
1982年生まれ。大阪府出身。 2004年立命館大学 法学部法学科卒業後、機械メーカーに入社。株主総会関連書類や有価証券報告書の作成、各種契約書のチェックなどの法務関連業務に従事。 社会保険労務士事務所勤務を経て2010年開業。 社労士の受験指導をする中で、受講生の「分かった!」というひらめきの顔を見ることに喜びを見出し、研修講師に目覚める。楽しい研修とその分かりやすさには定評がある。

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