男女共同参画 女性リーダーの更なる増加へ社会的・制度的な成熟必要 (2016/10/31 筑波大学新聞)
この夏、政治の世界で2人の女性リーダー、小池百合子・東京都知事、蓮舫・民進党代表が誕生した。とりわけ前者は、女性初の都知事として言動のみならず装いにも注目が集まった。他にも日本公認会計士協会では女性会長が初選出され、サッカー日本女子代表に女性監督が就任した。
これらの出来事は、男女共同参画の視点に立てば、政策・方針決定過程において「指導的地位」を占める女性の出現には、社会的・制度的な成熟が欠かせないことを示唆する。
日本社会では、リーダーの養成には、男女問わず長い時間を要すると考えられている。それぞれの領域に参入して、活躍実績を上げた上で、指導力を養い信頼関係を築いていかねばならない。男女雇用機会均等法の施行から約30年を経た2015年、企業の女性役員数が目立って増加したと言われるが、この事実は、そうした時間的費用をよく示している。
意思決定への参加は、門戸の開放にとどまるものではない。職務遂行の技能に熟練していく機会や、組織の中で役割と責任を分担する機会が提供されることで、ようやく可能になる。
これに加えて優れたリーダーの確保には、子育てを支援する諸制度が不可欠であることは言うまでもない。
政治に限れば、1946年に完全普通選挙が実施され、60年代に第一世代の女性議員から大臣が生まれた。門戸の開放は早い。しかし継続的に複数の大臣が任命されるようになったのは90年代半ば以降である。都道府県レベルでは、2000年以降になって初の女性知事が選出された。政党では土井たか子氏が1986年からおよそ5年、日本社会党委員長に就いているのみである。
政治の世界では、女性リーダーが出現する社会的・制度的な成熟の遅れが際立ち、男性によって形成された組織運営の原理や政治秩序がなお支配的である。それは、国際的なジェンダー関連指数に如実に表れる。日本における2015年のジェンダー・ギャップ指数は0.670で145カ国中101位、政治参画の分野では0.1030、104位であった。スコアは資源や機会の配分における格差を表し、日本の政治参画は男女格差が大きい。
機会の格差が少ない高スコア諸国では、政党、選挙、地方自治の仕組みを変えるべくポジティブ・アクションを導入してきた。例えば、候補者の一定割合を女性に割り当てるクオータ制がよく知られている。
女性リーダーを生み出す社会的・制度的な成熟を促すには、門戸を開放する以上の工夫が欠かせない。
(筑波大学人社系准教授 樽川典子)
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