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300年企業の中川政七と工芸産地が開く「大日本市博覧会」 (2016/11/4 nezas)

関連ワード : 地域活性化 歴史 

「日本市プロジェクト」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

これは、創業300年の伝統を誇る奈良晒(ならざらし)の老舗企業、中川政七商店の13代目社長である中川淳氏が取り組んでいるプロジェクトです。地元の工芸品メーカーと土産物店を結び、全国の工芸品を元気にするという試みです。伝統の奈良晒業の枠だけには留まらない中川政七商店の挑戦には、日本のモノづくりが再興する大きなヒントが潜んでいるといえそうです。

紙風船

※写真はイメージです

創業300年の老舗ベンチャー

中川政七商店は1716年(享保元年)、奈良で創業した老舗企業です。以来、伝統工芸である奈良晒の製法による麻織物を扱い、現在では和雑貨「遊 中川」、「粋更」、伝統工芸品をセレクトした「中川政七商店」などのブランドを保有し、高い支持を集めています。

また近年は、SPA業態(製造小売)を確立し、全国に直営店を展開しています。伝統を尊び革新を続ける老舗ベンチャーとして、活動の場を多方面に広げているのです。

奈良晒とは

奈良晒とは、江戸初期、奈良県月ヶ瀬地方に産出した天日晒しの高級麻布のことです。隆盛期だった江戸中期には徳川幕府の御用達品となったこともあり、裃や夏の一衣ものとして広く武家や町民の贅沢品に用いられました。最盛期には奈良町人の約9割が奈良晒に関わっていたといわれるほど主要な産業になっていましたが、明治以降は麻織物・絹・木織物に押され徐々に衰退していきます。ついには伝統工芸の分野としてごく小規模に生産・販売されるまでに縮小してしまいました。

300年前に奈良の地に生まれた中川政七商店は、奈良晒の分野で豊富な実績と伝統を誇る老舗企業です。ただ伝統に甘んじることなく、奈良晒ならではの気品や優雅さを現代に活かすべく、さまざまなテキスタイルや生活雑貨などの製造や流通革新などに挑戦している、伝統あるベンチャー企業です。

魅力のブランドたち

中川政七商店のブランドコンセプトは、「日本の布」です。伝統工芸である奈良晒の製法を守り、古くから伝わる素材・意匠を現代感覚に合わせることで、年代問わず多くの和雑貨ファンたちを魅了しています。創業以来続けてきた麻織物や、奈良の特産品である蚊帳生地を生かし現代の暮らしに合わせて布巾に仕立てた「花ふきん」は、1995年7月の発売以来ロングセラーとなり、2008年度「グッドデザイン金賞」を受賞しました。

さらにセレクトブランドとして靴下ブランド「2&9」や、奈良吉野の「嘉兵衛番茶」、堀内農園の「ドライフルーツ」など、多くの奈良県産の食品や美術工芸品をブランド化し、奈良ものづくり総覧とも呼べる多彩な展開をしています。

日本を元気にする「日本市プロジェクト」

「日本市プロジェクト」とは、工芸の生産と小売をつなぐ新たなビジネスモデルです。「日本の工芸を元気にする!」という新しいビジョンのもと、地元の小規模工芸メーカーと土産物店の間に入り、「工芸品の地産地消」を実現しようとする試みです。どのような試みかというと、小規模工芸メーカーには商品企画とデザインを提供し、製造ロットの買取を保証します。土産物店には消費者のニーズや嗜好に合った地元の工芸品を供給し、店舗運営のアドバイスを行います。

「日本市プロジェクト」の一環として、全国の産地と中川政七商店が手を組み、2016年に大日本市博覧会プロジェクトもスタートしました。同プロジェクトは全国5地域を巡る博覧会で、会場では各々の土地での工芸との出会い(工房見学、新商品のお披露目等)、各界・各地で活躍するゲストのトークイベント、ワークショップなどを開催しています。地域の工芸を知り、学び、魅力を再発見するイベントとして人気を呼んでいます。

伝統に革新を呼び込むには不断の挑戦が不可欠

日本古来の伝統は、その技術、品質などを見ればたしかに素晴らしいものがあります。しかし、ビジネスとして成立しなければどんな優れた商品でもいつしか消え失せてしまいます。常に消費者から支持され愛されるためには、企画・生産・流通・小売のすべての段階で、絶えざる革新が不可欠なのです。その意味で中川政七商店の多方面にわたる挑戦は、大きな一歩を踏み出したといえるのではないでしょうか。

各地域の工芸品を集めて広める「大日本市博覧会プロジェクト」は、まだ始まったばかりです。「日本の工芸を元気にする!」という最終目標を目指して、中川政七商店の挑戦は続きます。

提供:nezas

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