伝統を次世代へ。水戸で生まれた「すずも提灯」が世界に賞賛されるワケ (2016/1/25 ジモトのココロ)
日本の伝統産業のひとつである提灯づくり。一般的に「提灯」と聞いて、思い浮かぶのは、お祭りで見られる丸い形や、ラーメン店の店先にある細長い形をした提灯でしょうか。私たちの生活の身近なところにありながらも、現代では自宅に提灯があるという家庭は珍しいかもしれませんね。
伝統産業といっても、誰かが受け継ぎ、守り、そして時代に合わせて変化していかなければ、その価値ある技術は失われてしまうことも。そのような状況を受け、次世代に提灯の「技と魅力」を伝えていきたいと茨城県水戸市にある鈴木茂兵衛商店が現代の生活にマッチする提灯を生み出しました。
提灯の三大産地の一つとして
八女、岐阜と並ぶ提灯の三大産地として栄えてきた茨城県水戸地域。江戸時代に下級武士が生活を支えるために励んだ「水府提灯」の発祥の地と言われています。
鈴木茂兵衛商店は、ここ水戸市で慶応元年(1865)に四代目の鈴木茂兵衛が提灯づくりを始めたことから始まり、1世紀半に渡り、水府提灯をはじめ祭事や行事などで使われる提灯の製造・販売に取り組んできました。
そんな同社が次世代を見据え、伝統産業という言葉に甘んじることなく「今の暮らしに対応できる提灯」づくりに励み、「灯りのやさしさ」、「形の美しさ」など、提灯ならではの魅力を追求してきた結果、生まれたのが「すずも提灯」です。
最新技術を取り入れた提灯
すずも提灯は、伝統的な製法と現在の最新技術を融合して作り出す、まったく新しい提灯。ペット樹脂、ペットボトルから再生したヒゴとCAD、コンピュータを利用して設計された型を利用することでユニークな形状を実現。光源はローソクのゆらぎを再現したLEDを使用しており、音感センサー、特許を取得した独自のスタンド構造と、起き上がりこぼし機能などもついています。
男爵頭像、婦人頭像といった彫刻のような提灯や、松、梅、雲、木など自然をモチーフにした提灯、そして、とり、きのこ、しずくと身近な自然を題材にした提灯までさまざまなビジュアルは見ているだけでワクワクします。
世界からも注目される照明器具に
すずも提灯がはじめてお披露目されたのは2009年、水戸市にて。その後、東京の百貨店やパリのインテリアショップにも出展し、多くの注目を集めてきました。
3つあるすずも提灯シリーズの中でも、ビジュアルアーティスト、ミック・イタヤ氏が手掛けるMICシリーズ2種と、酒瓶をリアルに再現した瓶型提灯は「人種や国籍を超えた普遍性がある希望の光をデザインしている」との評価からグッドデザイン賞を受賞するなど、伝統工芸の枠を超えて、世界に大きく羽ばたいています。
最新技術を取り入れながらも、従来の提灯が持つ、小さく畳めて持ち運びや収納もしやすい、そして和紙から透ける明かりのやさしさや暖かさを大切にしたすずも提灯。ユニークでかわいい形と、ほのかな明かりに癒される方も多いのでは。
1月29日(金)から2月2日(火)にかけて、京都市内で「すずも提灯展」も開催されます。お近くの方はぜひ独創的かつ革新的な提灯を直にご覧ください。
鈴木茂兵衛商店
公式サイト: http://www.suzumo.com/
すずも提灯展
会場: 空・鍵屋(SPACE KAGIYA)
住所: 京都府京都市東山区祇園町南側花町570-107
会期: 2016年1月29日(金)~2月2日(火)
時間: 10時~18時(最終日は16時まで)
サイト: http://www.kagizen.co.jp/store/