法制審議会が性犯罪厳罰化へ答申 強姦罪は告訴不要など (2016/9/27 JIJICO)
法制審議会が性犯罪厳罰化へ答申 その内容とは?
法制審議会(法相の諮問機関)は、性犯罪の罰則を強化するなどを含む刑法改正要綱骨子を答申しました。来年にも刑法改正案の通常国会への提出が予定されています。
強姦罪の根本的な見直しは、1907年(明治40年)以来初めてとなります。答申によれば、(1)非親告罪化(2)法定刑の下限の引き上げ(3)親などによる性的虐待を厳罰化(4)「強姦」の考え方を見直すなどの点があげられます。
1.非親告罪化
単独犯の強姦罪などは、親告罪、つまり被害者の刑事告訴があった場合に、起訴できることとされています。被害者のプライバシーに配慮する目的で設けられたものですが、犯罪者を処罰するかどうかの判断が被害者にゆだねられているため、心理的負担が重いと指摘されていました。非親告罪化されると、被害者による刑事告訴がなくても、立件できるようになります。
2.法定刑の下限の引き上げ
現在の強姦罪、強姦致死傷罪の下限は、それぞれ3年以上、5年以上です。「魂の殺人」とも呼ばれ、人の尊厳を踏みにじる強姦罪が、強盗罪より軽いのは不当だという指摘もあります。今回の答申で、それぞれ5年以上、6年以上に引き上げられると、刑法の中で最も重い罪の一つに位置づけられることになります。
3.親などから子への性的虐待を厳罰化
現在の刑法の強制わいせつ罪・強姦罪は、「暴行又は脅迫」など手段が限定されています。そのため、親など(生活を支える)監護者が、その影響力を悪用し、子に対する性犯罪に及んだ場合でも、(被害者は抵抗しなかったとして)児童福祉法などの適用による軽い罪で処罰されるだけです。そこで、このような場合も強制わいせつ罪等が適用され厳罰に問えるように、刑法に規定が新設される予定です。
4.「強姦」の考え方を見直す
現在の刑法の「強姦罪」では、対象行為を一般的な「性交」に限定しているため、「男性が加害者、女性が被害者」と固定されています。答申では、性交に類する行為も含む「性交等」とすることとされ、性の区別なく、悪質性の高い一定の行為を「強姦罪」(名称変更も検討されています)で罰することになります。
非親告罪化・厳罰化だけでは問題解決にはならない
非親告罪化して、被害者の告訴が不要になると被害者が希望していないケースでも事件化されてしまうことを懸念する声もあります。だからこそ、被害者の不安を軽減するため、より一層被害者支援対策を充実させることが必要です。
厳罰化によって服役期間が長くなるだけでは、性犯罪はなくなりません。刑務所で受けるプログラムの充実や医療面でのサポートなど、再犯を防ぐ対策も必要とされるでしょう。
- 著者プロフィール
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中村 伸子/弁護士
あおぞら法律事務所
1995年、福岡で弁護士登録。以来、子育てをしながら、数多くの離婚や成年後見、遺産分割などの問題に携わる。弁護士業務の傍ら、2011年からは家庭裁判所の家事調停官(パートタイム裁判官と)して週1回執務。高い専門性を持って、多くの家族に関わる事件を担当している。
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