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地方空港の国際線着陸料3年間無料 期待される効果は? (2016/9/3 JIJICO

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地方空港の国際線着陸料3年間無料 その意図とは

国土交通省は、地方空港におけるインバウンド拡大に向けて、訪日客誘致に積極的な地方空港の国際線の着陸料を最大3年間無料にする方針を明らかにしました。「では、その分は税金が投入されるの?」「それ以外の各空港会社の経営努力は、無になるのでは?」との意見も当然あります。

政府は、外国人旅行者を誘致することによって景気をよくしたい、税金を投入してでもそれを梃にして外国人旅行者を日本に誘致したい、という思惑があるのではないかと推測します。景気が良くなってきたと言われていますが、都心部の一部の業界、特定の業界の人達は感じていても、多くの業界や地方で働いている人達には、実感できない、と思います。

空港

2020年に外国人旅行者4,000万人という目標を掲げているのも、多くの業界や、そこで働く人たちの懐を潤し景気を更によくしていきたいという意図がうかがえます。

そのためには、

  • 新規の外国人旅行者を増やしたい
  • リピートの外国人旅行者を増やしたい
  • 中国、韓国、台湾の旅行者を増やしながらも、北米、南米、ASEAN諸国、欧州、オセアニア諸国からの旅行者をもっと増やしたい
  • 旅行中は、黄金ルート以外の観光地も巡ってほしい(北海道、東北、中部、瀬戸内、四国、九州に広域観光周遊ルートを形成)
  • 快適で、不自由のない旅行をしてほしい
  • 特定の業種だけではなく、多くの業種に波及させたい

これらを達成するための政策を立案して、実行をしていくのだと思います。

インバウンド拡大に向けての官民の取組み

民間でもインバウンド拡大に向けていろいろな取り組みがされています。政府や都道府県庁、市区町村の支援もあると思いますが、次のような取り組みが既に始まっているようです。

  • サンシャインプリンスホテルで、指紋認証によって、チェックインできる実証実験を開始(クレジットカードの指紋認証での決済の実験も)
  • 富士山の登山口で、多言語音声翻訳システムを活用した外国人旅行者向けの多言語観光案内を開始
  • 空港からホテル、ホテルから行く先々のホテルへの宅配便の送り状の自動作成をすることによって、外国人旅行者の手ぶら観光を実現するための実験の開始
  • 東京都内のいくつかのホテルで、多言語音声翻訳システムを活用した外国人旅行者向けの多言語観光案内
  • 東京都内で水上タクシーの運航(災害避難時の船着き場を、平時も開放)開始

ホテルなどの宿泊施設、飲食業、免税店のように観光客周りの業界だけではなく、他の業界でもインバウンド拡大をフックにビジネスチャンスを作る、ということでしょう。

又、役所関係でも次のような取り組みが開始されています。

  • 経済産業省では、外国人旅行者向けの飲食業などのサービス業にも対応できる「おもてなし機関認証」の開始
  • 法務省入国管理局では、台湾と韓国の両国・地域の間で日本を訪れる外国人の入国審査をあらかじめ出発地で行う「プレクリアランス(事前入国審査)」制度を導入するための交渉を開始

着陸料無料化はインバウンド拡大につながるか

このように官民揃ってインバウンド拡大に力を入れていますが、このような態勢を整えても、そもそも、外国人旅行者を日本に連れてきてくれる航空会社の運航が少なければ、外国人旅行者は増えません。したがって、地方空港の着陸料の最大3年間の無料化をすることによって、航空会社の誘致を図る政策が出てきたのでしょう。(又、航空会社の運航が増えてくれば、市街地へアクセスする交通インフラも必要になり、その結果、市街地の賑わいが取り戻せるかも、と考えているのかもしれません)。

今回の発表までは、インバウンド拡大のための地方空港の取組みとして「地方空港におけるインバウンド拡大に向けた着陸料軽減」というものがありました。これは地方空港への国際線就航を促進することで地方イン・地方アウトの流れを作ることが大きな目的になります。地域が実施する国際線誘致等の取組と協調して、国管理空港の国際線の着陸料を軽減し、これにより地方部における国際線ネットワークの充実を図る、ということが趣旨のようです。

具体的には新潟、広島など25の国管理空港のうち現在11空港で利用されていて、国際線を新たに就航したり増便したりした場合に国と地元自治体が半分ずつ負担し、1年間無料になる仕組みになります。今度の制度によりそれが3年間に延長されるということのようです。訪日外国人旅行者の誘致に積極的な地方空港を対象、とのことなので、どこの地方空港になるか?は、今後の検討課題になるのでしょう。

空港会社は、航空会社からの着陸料や施設のテナント料の2つが大きな収入になっていて、各空港会社の経営努力もしていると思います。それを、国際線を新たに就航したり増便したりした場合とはいえ無料にするとなると、経営の独立性を侵すことになるだろうし、空港を作りすぎて利用者が少なくて赤字となり、税金を投入したということも過去にはあるので、諸手を挙げて賛成、といかないと思います。

でも、空港を作ってしまった以上、有効に活用する方法を考えたとき税金を投じてでも全体の売り上げを上げる、という発想になったのでしょう。そこでは当然お金も動くでしょう。良いことばかりではないでしょうが、地域の事業所やそこで働いている人達、地域に住む人達が、手を携え知恵を絞り工夫して、実行していくことになるのだろうな、と思います。

提供:JIJICO

著者プロフィール
折本 徹/行政書士折本 徹/行政書士
折本 徹 行政書士事務所
1964年、東京都出身。日本大学法学部卒業後、当時、信用金庫で預金量1位の城南信用金庫に入社。主に、渉外業務を担当。 同庫退社後、1995年12月に行政書士開業しました。 1998年から、外国人関係業務に取り組み始めています。 早く業務に詳しくなろうと考え、当初は電話での無料相談を受けまくりました。 しかし、相談も依頼も、最初の頃は悪戦苦闘、冷や汗の連続でした。 「ローマは一日にてならず」の言葉どおり、少しずつではありますが、知識、経験を身につけました。 最近の主な実績 平成24年3月 専門学校より紹介される。在学中の韓国人男性が、調理と商業実務の知識を活かし、焼肉チェーン店の経営管理業務に内定。留学から人文知識・国際業務の在留資格変更申請を受託。申請日から7日で許可になる。 日本人男性(40代)と中国人女性(30代)夫婦の在留資格認定証明書交付申請を受託。
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