経済対策20兆円規模でこれからの日本はどうなっていくか? (2016/8/1 JIJICO)
20兆円経済対策に対する株式市場の反応
東京株式市場では、「政府が事業規模20兆円超の大型経済対策に踏み切る」と伝えられたことがきっかけとなり、建設業を中心とした銘柄に人気が集まり株価が上昇しています。この経済対策は、9月に召集される予定の臨時国会に提出される第2次補正予算に盛り込まれる見通しであり、具体的な中身はまだ決定されていません。財政支出が増加して公共事業が増えるので建設業界が潤うというのは単純な見方であり、従来10兆円程度とみられていた事業規模が倍増するという材料に株式市場が素直に反応しただけなのです。
20兆円経済対策の柱は財政投融資
財政投融資とは、(1)租税負担に拠ることなく、独立採算で(2)財投債(国債)の発行などにより調達した資金を財源として、(3)政策的な必要性があるものの、民間では対応が困難な長期・固定・低利の資金供給や大規模・超長期プロジェクトの実施を可能とするための投融資活動(資金の融資、出資)です。
政府は今回の20兆円経済対策は、国が低利で民間事業に長期融資などを行う財政投融資が最大6兆円程度、国の補助を受けて民間企業が行う事業が6兆円程度、財政投融資とは別に政府系金融機関が手がける融資が5兆円程度、残りは国・地方の追加の財政支出3兆円を充てる予定と伝えられています。つまり大部分が財政投融資となっています。これは、財政赤字が社会問題となっている中、これ以上租税負担を増やしてはいけないという配慮が強く働いているものと思います。
財政投融資が増税とならない理由
なぜ、財政投融資は租税負担を伴わない政策手段といえるのでしょうか。それは、財政融資は財投債の発行等によって国の信用に基づき低利で調達した資金を用いているものであり、その償還・利払いは財政融資の貸付先からの償還・利払いによって賄われるからなのです。財政投融資は特別会計予算に基づいて実施されるものであり元利の返済義務があるので、有償資金といわれています。
今回の経済対策は、金額だけで判断してはいけない
今回の20兆円経済政策における追加の財政支出3兆円は、インフラ整備が主体となり訪日客拡大に向けた地方の港湾整備や農産物の輸出拠点設置などを行う予定と伝えられています。この3兆円は「真水」と呼ばれる返済義務のない一般会計予算に基づく資金拠出ですから、即効性があるといえます。
しかし、財政投融資及び政府系金融機関が手がける融資の合計17兆円は、リニア中央新幹線の延長や整備新幹線の建設に充てる予定であり、これらは特別会計予算に基づく有償資金ですから、融資を受けた事業者は返済義務があります。つまり、いわゆるバラマキではなく景気を刺激するものの租税負担を増加させないようになっているわけです。
日本は、2020年度までにプライマリー・バランスの黒字を達成することを目標としています。そのためには簡単に租税負担を伴う財政支出を増やすことはできません。今回の経済対策規模が10兆円から20兆円に拡大したといっても、財政支出そのものが倍増したわけではありません。
財政投融資のモニタリングの必要性
今回の20兆円経済政策の実施にあたり、国民はそれがどのように活用されるかについて第2次補正予算の中身をしっかりと確認することが必要です。そのためには、民主党政権時代に行われていた行政刷新会議(事業仕分け)のような仕組みを復活させていただき、国民への透明性を確保しながら、予算執行の現場の実態を踏まえて事業の必要性を吟味することが必要ではないでしょうか。
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