「無関心は敵」政治は生活に直結していることに気づいてほしい (2016/6/30 Patriots)
千葉県松戸市議会議員として活動するDELI氏。アーティストとしてヒップホップ界で活躍する中で、東日本大震災の原発事故をきっかけに脱原発デモなどに参加するようになり、「政治や社会に対する無関心が最大の敵」と意識が大きく変化し、出馬を決意。活躍の舞台を松戸市議会に移しました。そんなDELIさんに、政治と生活の関係性や日本の政治について伺いました。
政治や世の中を変えるチャンスは、すべて自分たちの中にある
――政治に関心を持つきっかけとなった出来事や想いを教えてください。
東日本大震災で、「大人たちに任せすぎていた」「過信していた」ということに日本中が気づきました。誰もが、お上である行政はもっとまともだと思っていたんですよね。もっとちゃんとやってくれているだろう、舵取りしてくれているだろう、と。でも、全然そうじゃなかったし、思った以上に酷いことがわかった。
もともと自分は運動家でもなく、社会に対する問題意識はあっても活動したことはなかったんですね。それが、原発問題を真剣に考えるようになり、活動に参加する中で、少しずつ「政治家の文句を言ったり、悪を外につくり悪者にして、すべてが解決するのか?」。そうじゃない、敵は無関心だ。自分の中や、身の回りにある無関心をなくさないといけない。
誰かを倒す革命じゃなく、各々が内から起こす意識革命じゃないと、どんなスーパーマンが登場しても絶対に変わらないんですよ。政治家の成熟度は、イコール国民の成熟度。つまり、政治や世の中を変えるチャンスは、すべて自分たちの中にあります。
ヒップホップを通して知った「政治は生活に直結している」
――ヒップホップは本来、黒人の社会問題を歌ったものが多いですが、意識はありましたか?
自分の世代だと90年代で、まだヒップホップがポップスとして認識されていない時代です。パブリックエナミーは自分達を「ブラックCNN」だと叫び、CNNが伝えてくれない社会のさまざまな問題を音楽に乗せてレポートしだしました。そういうものに感化されましたし、アメリカに友人知人も多かったので自然とその意識はありました。
若い世代は背景を知らずに楽しんでいる。それはそれでいいけれど、ヒップホップの成り立ちを理解していくと、社会と密接で、実は政治とも近いことがわかるんですね。
60年代からマルコムXやマーティンルーサーキングなどが活躍して公民権運動が盛り上がった今より酷い人種差別が存在した時代。彼らは思い半ばで亡くなってしまいます。その時代を経て、アフリカ・バンバータというニューヨーク州ブロンクス区出身の黒人アーティストが登場し、黒人の創造性文化を「ヒップホップ」と名付け、カルチャーとして市民権を得ることに成功しました。「ヒップホップ」という文化の根底にはそういう精神性が引き継がれていったと思います。
差別により社会に入っていけない人たちが争い殺しあい混沌としていた世界に、ダンスバトルなどを提唱し、「自分たちのファッション性や音楽性をエンターテインメントとして確立しようじゃないか。憎しみから社会を攻撃するんじゃなく、自分たちのアイデンティティを肯定することで社会にクロスオーバーしていこう」と。ものすごくポジティブ・バイブレーションですよね。
――政治団体「プラネット・ロック」もヒップホップに関係している名前ですか?
「プラネット・ロック」の団体名はアフリカ・バンバータの曲です。自分のやりたいことを考えたとき、どうしても彼のこの曲のタイトルを使いたかった。本人に使用許可依頼の手紙を書き、返事をもらって、スカイプで直接ディスカッションして想いも伝えています。
日本とアメリカを比べたとき、昔も今もアメリカのラッパーは、黒人同士で政治や政治家に対しての意見を話しあっているんですね。「あの政策はダメだ」とか「うちの母親はこういうことを話していたよ」とか。若い世代もみんなそんな感じで、誰もが本質的に「政治は自分の生活に直結している」ことに気づいているんです。
日本で同じことをやろうとしても、平和だからやっぱりリアリティは感じないし、土壌が違う。でも、「政治は自分の生活に直結している」ということは、世界共通なんですよ。そろそろ日本もそれに気づかないといけない。
――アーティストとしての経験が今、活きていると感じることはどんなところですか?
自分は音楽も独学です。「アーティストになる」と話したとき、周囲は「絶対無理だ」としか言わなかったほど。それでも「挑戦したい」という想いが強く、チャレンジをして、メジャーデビューまでできて、税金も払えて社会の一員になれた。
この成功体験が、選挙活動や議員になってからもベースになっています。政治家の秘書などの経験もないし、選挙活動の手伝いをしたこともなかった。それでも「もう無関心じゃダメだ」と。
自分が市議会に入ることで、政治や政治家のハードルを下げ、「政治は生活に直結していることだから、みんなで考えよう」ということを周知したい。そのためには、市民感覚のままコミットしていかないと意味がない。それをブレない信念にしています。
選挙は、自分の未来を選択し、自分の主張を確認するもの
――日本は政治家を「先生」などと呼ぶ人が多いですが、それに対してどう感じていますか?
日本は政治家を高く見積もりすぎなんですよね。政治家は、投票で選ばれて「街のルールを決める人」です。つまり、2、3年後の自分の生活に直結している。毎日忙しいし、街や国のことに取り組めないから、税金を払うことで議員を雇っている。そういう感覚でいいんです。お願いはしているけれど、「先生!」なんて感覚はやめたほうがいい。そんなに上に見ることはないんですよ。
24時間365日、自分の未来をどうしたいか考えることはむずかしい。でも、選挙のときくらい、「この街でどう暮らしていきたいか」「自分は未来をどうしたいか」と真剣に向き合って、選挙に行ってほしいですね。
――「みんなが参加することで政治が変わる」ということですね。
みんなで取り組まないと変えられないですよね。たとえば、東電に5兆円もの予算がつぎ込まれ、あげくボーナスは満額支給。こんなのありえないですよね。一般の人たちにとって「そうするべきじゃない」という方向にばかり舵が切られている。なぜかというと、投票率が低いからです。
とかく議員は次の選挙のことばかり考えがちです。組織票だけで議員が続けられるので、献金団体などを再優先にしてしまう。だから、政治家が変わることや、街のヒーローを待つのではなく、特に若い世代が投票に行くだけでも変わります。「今までのやり方が通用しなくなる」から。
投票は、自分の未来を考えるきっかけにしないといけません。人を選ぶということは、自分の未来を選択するということ。自分の主張を確認する機会にしてほしいんですね。それをみんながやりだしたとき、「そうするべきじゃない」という方向にばかり舵を切る人間は淘汰され、しっかりとした方向に向き、ちゃんとしてくれる人が自然と選ばれていきますよ。
――最後に、どんな人に政界を目指してほしいかを教えてください。
「こういう人がなるべき」というのはないんです。それより、今の仕組みだと一般の社会人などが立候補するためにはハードルだらけ。供託金は高いし、会社など所属先を辞めないといけない。今は限られた人しか立候補できない状況なので、どんな人でも立候補できる制度に変えていかないといけない。それが、多様性がある議会にする方法です。
提供:Patriots
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